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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第三弾:ドアマット悪役令嬢、ドン底からのハッピーエンドの物語

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18:神と読みます?

 人間界で結婚、となると、挙式からの披露宴、からの舞踏会で、まさに一日がかかり。王族の結婚となると、各国の代表も来賓となるのだから、結婚式がある一週間は、何かと忙しいと思う。その一方で魔族の文化では結婚式はなく、お披露目を兼ねた昼食会、夜に舞踏会があるぐらいだった。


(ウェディングドレスという概念もないのよね。ただセルジュの瞳と同じ、シャンパンゴールドのドレスを着せてもらった。でもそれは未来の王妃という意味で着用する特別な衣装であり、花嫁衣裳というわけではなかったのよね)


 生贄として魔の国に捧げられたと思ったら、実は花嫁として迎えられていた。そしてお祝いの席=昼食会が設けられたが……。私はまさかの魔族の食文化に衝撃を受けて失神、その後、アグネス様の手作りパンで復活。自分が前世でも今生でも初となる“結婚”という大イベントの真っ只中にいるものの、その実感はなかったが……。


 婚姻の書にサインを行うことになった。


「人間との協定で、不可侵条約が結ばれています。魔族が人間のいる国で暮らす、ルミナリア王国に人間が暮らす、そのためには特別な許可が必要です。その許可の一つがまさに婚姻。形式的なものになりますが、こちらにサインいただいてもよいでしょうか……?」


 セルジュはその整った顔に真摯な表情を浮かべて私に問うが「ノー」の選択肢などなかった。私は生贄としてようは人間たちから切り捨てられたのだ。帰る場所なんてない。何よりあのヒロインは悪役令嬢の不幸こそが正解と考えているのだから、のこのこと戻ったら、何をされるかわからない。


「もちろん、サインします。……その、公務も手伝います。それぐらいしか私、お役に立てなさそうですし。これでも王族の婚約者をしていたので、妃教育を受けています。文化や慣習は違いますが、少しぐらいは役立てるかと」


 私の言葉を聞いた魔王は実に悲しそうな表情でこちらを見る。


「いろいろと辛い想いをされたのですね。なぜあなたがここへ送られることになったのか……後ほどよかったらお聞かせください。思い出したくないというなら、無理強いはしません。話すことで気持ちが楽になるのなら、お手伝いさせてください」


 セルジュからすると当たり前の気遣いだったのかもしれない。

 でもドアマット悪役令嬢として虐げられてきた私からすると、温かく心に沁みる言葉だった。


「ありがとうございます。考えていると、まだお互いのことを全然知りませんよね。ゆっくり話せたら嬉しいです!」

「ええ、そうしましょう。そして公務もサポートいただけるのは助かります。これからよろしくお願いします」


 こうして実に円満に私は婚姻の書へサインをすることになった。

 それが終わると、セルジュは貴族たちからの挨拶を受けることになり、私も同席しようとしたが……。


「見知らぬ相手と沢山会って話す。それは精神的にとても疲れるものです。貴族たちの紹介はいつでもできることですし、王太子妃の同席が必須ではありません。よって侍女たちに宮殿の案内でもしてもらい、夕方までのんびりお過ごしください。夕食は家族のみですが、舞踏会ではまた大勢に囲まれることになり、どうせ気疲れすることになります。今は羽を伸ばしていただいて大丈夫ですよ」


 これにはもう「次期魔王と書いて神と読みます?」と、問いたくなってしまう。完璧な気遣いにより、私はのんびり宮殿内を案内してもらうことができた。


 そうやって見て回ると、本当に人間界で見た宮殿と変わらない。変わらない……レーガン王国より豪華絢爛だと思う。


「ここは私が暮らしていたレーガン王国と変わらないわ」


 ネモフィラが満開の庭園を眺め、そう呟くと、スティは……。


「お嬢様を迎えるにあたり、殿下は何度も人間界に足を運ばれました。アグネス様が人間界で気に入っていた物を取り寄せていたこともあり、殿下は人間たちの文化にも慣れています。そしてアグネス様が『今となってはこの国の文化に慣れたけれど、最初はいろいろ戸惑いました。もし見慣れたものがあれば、安心できるでしょうね』と言っていたことを踏まえ、こちらに咲いている花の種を手に入れ、絵画なども人間が見ても違和感がないものに変更されたのですよ」

「そういえば、宮殿内の花瓶に生けられた花も人間界のものにしたと言っていたわ……」

「その通りです! ルミナリア王国で咲いている花は……人間界では食虫植物と呼ばれる類のものや、毒を持つものが多く……。見た目もきっとアマレットお嬢様がビックリするようなものだと思います。よって植え替えたんですよ!」


 これにはわざわざそこまでしてくれたのね、と感動しかない。


(それでいて食べ物のところまで気が回らなかったのは……きっとやることがあまりにも多過ぎたのね)


 完璧過ぎると近寄り難いが、どこか抜けているところには母性本能がくすぐられてしまう。


 そんなことを思いながらの散策を続けていると、あっという間に夕食の時間になる。


 クリーム色のドレスに着替え、部屋まで迎えに来てくれたセルジュのエスコートでダイニングルームへ向かう。


「夕食は、昼食のように素材の元の姿がわかるような状態では登場しません。原型がわからないものにしました。……召し上がることができるといいのですが……」

「お気遣い、ありがとうございます! 見た目で食べられなかった部分は大きいので、助かりますわ!」


 セルジュが懸命に頑張ってくれているとわかるので、私も励ますようにそう言っていた。それにアグネス様だって、そもそもは人間界に暮らし、魔の国に嫁いだ。そしてちゃんと適応している。


(大丈夫! やってやれないことはないわ!)


 そう心から誓うことになった。


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