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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第三弾:ドアマット悪役令嬢、ドン底からのハッピーエンドの物語

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17:大して変わらない……?

 魔族が暮らすルミナリア王国は、人間の世界と変わらぬ城壁、街並み、建物が広がり、魔族の皆様は美男美女揃いだった。バジリスクやガーゴイルを見かけたが、それ以外の魔獣と出会うこともないまま食事の席につき、そして悟る。


 人間の世界と大して変わらない――そう思ったが、そんなことはない。


 食が、食が、食文化がまったく違っていたのだ!


 ということで気絶した私は部屋に運ばれ、あの綺麗に整えられたベッドで目覚めることになる。


「「「! アマレットお嬢様が目覚められました!」」」


 グラマラス美女三姉妹の声に、セルジュが心配そうな表情でベッドの方へとやって来る。


「大丈夫ですか、アマレット嬢! 母上から聞きました。今日の……昼食の料理はどれも人間界にはないものばかり。アマレット嬢はビックリされたのではないかと。母上自身も、もう随分前のことなので忘れていたそうですが、ルミナリア王国に来て、最初に出された料理を見て絶叫したそうです。怪魚と呼ばれる巨大魚の姿蒸しだったのですが……」


 それを聞いて私はハッとすることになる。


「……殿下のお母様は人間、なのですね」

「はい。百年前に魔族と人間の平和のために嫁いできたと聞いています」


 そうだった。

 百年前、ルミナリア王国に人間界から向かった女性は、生贄だったわけではないのだ。魔王に嫁いだのだから、セルジュの母親が人間というのは……少し考えればすぐに分かることだった。


(そしてどう見ても同い年に見えたが、アグネス様は御年は百歳以上……なのだわ!)


 前世では美魔女なんて言葉が流行したが、美魔女どころではなかった。


「アマレット嬢、配慮が足りず、申し訳ありませんでした」


 そこでセルジュが美貌の顔を曇らせ、頭を下げるので「そんな、頭をあげてください」とお願いすることになる。なんとか頭を上げてくれたセルジュはこんなことを告げる。


「今日に備え、人間界から日持ちしそうな食材は、いくつか調達してあります。そして母上は元々パン屋の娘だったそうで……アマレット嬢のために、先程焼き上げたこちらをお持ちしました」


 そこでセルジュが合図を送ると、スティがワゴンを押し、ベッドのそばにやって来る。

 同時に香ばしい匂いに胃袋が「ぐるるる」と反応してしまう。


(な……! 生贄にされたけれど、公爵令嬢なのに! 私ったら……!)


 赤面する私にセルジュは優しく諭す。


「アマレット嬢。お腹が減れば体が合図を送って当然です。どうぞ、こちらを召し上がってください」


 そこでサイドテーブルに置かれたトレイには、焼き立てのフォカッチャのようなパン、ガラスの器に山盛りの木苺がのせられていた。


「ありがとうございます! いただいても……?」

「どうぞ、お召し上がりください」


 ここはもうこれ以上お腹を鳴らすわけにはいかないし、「いただきます!」で出来立てのフォカッチャを口に運ぶ。


「……! ほんのり塩味で美味しいです……!」

「よかったです。……夜は他の食材も使い、品数を増やします。今は急ごしらえでこれだけですが、大丈夫ですか?」

「はい! 木苺もありますし、大丈夫です」

「アマレットお嬢様、バフォメットのミルクです。こちらなら……召し上がることはできますか? アンツの蜜もいれたので、とても甘いですよ」


 そこでエリーが差し出したマグカップには、白い湯気の立つ飲み物。どう見てもミルクにしか見えないし、甘い香りもする。


「……飲んでみてもいいですか?」

「お飲みください。お口に合わなければ無理して飲む必要はありません!」


 セルジュのフォローを受け、一口飲んで見ると……。


(ハニーミルクだわ! 甘くて美味しい!)


「これなら飲めます! ほんのり甘みがあり、温かく、気に入りました!」


 私の言葉にセルジュとグラマラス美女三姉妹の侍女が、安堵の表情になる。


(ここはみんな安心させるために、元気よく食べる姿を見せるのが一番ね!)


 そう思い、しばらくはパクパクとフォカッチャと木苺を食べていたが……。


 私は気づいてしまう。


「あ、あの、王太子殿下」

「はい、何でしょうか? お水をお持ちしますか?」

「! お水もいただきたいです!」


 セルジュが目配せをすると、メディが部屋を出て行く。


「殿下のお母様は、嫁ぐためにこの国に来られた。そして私もそうだと思っていた――ということは、先程、ダイニングルームにいた魔族の皆様は……殿下と私の婚姻を祝うために集まっていたのでは? お料理もご馳走が用意されていたのですよね……?」


 セルジュは美貌の顔に少し困った表情を浮かべ、こう答える。


「……その通りです。わたしたちの国では、婚姻は皆で祝います。先程のように大広間に全員が集まり、お祝いを兼ねた食事をします。そして新郎新婦は婚姻の書にサインをして、それを皆に見せる。広間にいた全員が証人となり、婚姻が成立するのです」

「なるほど……。お祝いのお料理だったのに、失神してしまい……ごめんなさい」


 そこでベッドで上半身を起こした姿勢で頭を下げると、セルジュは優しく私の上腕を掴み「アマレット嬢が悪いわけではないです。ご自分を責めないでください」と言ってくれる。


 そこで顔をあげた私はさらに尋ねる。


「……その、大広間で皆がお祝いしてくれた。……私と殿下は……」

「アマレット嬢と私は婚姻を行った……ということに表向きではなっています。ですがわたしはあなたにその務めを負わせるつもりはないですし、父上と母上も状況を理解してくれました。よって王太子の妻だ、妃だと、気負う必要はありません。客人として気ままにお過ごしください」

「……それで本当にいいのですか?」

「ええ、大丈夫ですよ」


 セルジュはあくまでにこやかなのだけど……。

 人間界では王族であれば、世継ぎは必須で、王妃には公務もある。


(それらを一切免除……されるの? 本当に?)


 そこは気になるが、もし「よければ世継ぎ作りには、協力いただけませんか?」と言われても心の準備が……。よってここは「わかりました」と頷き、フォカッチャの残りを平らげることになった。


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