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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第三弾:ドアマット悪役令嬢、ドン底からのハッピーエンドの物語

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13:捨てる神あれば拾う神あり

 ルルシャの策略で、魔王への生贄にされ、完全に詰んだと思っていた。だが蓋を開けたら、迎えに来たのは魔王でなく、王太子。しかも彼は大変紳士的。


 さらには生贄ではなく、花嫁……だったはずだが、彼は私の気持ちを尊重し、ただ魔の国……ルミナリア王国に暮らせばいいと言ってくれたのだ。


(客人として迎えると約束してくれたのよ!)


 悪役令嬢の末路は、絶対にバンドエンド!派のルルシャにより、私は諦めモードだったが……。


(そんなことはなかったわ。捨てる神あれば拾う神あり!)


 王太子であるセルジュの親切心に感謝していると、遂にお城に到着。エントランスに着くと、そこにはローマ兵のような装いの、兜を被り、胸当ての軽装備の兵がズラリと並んでいる。


「では先にわたしが降ります」


 そう言ってセルジュは馬から降り、馬丁が駆け寄る。そこで彼は被っていた兜を外したのだけど――。


 私は刮目することになる。


(な、なんて美青年なの……!)


 魔族=長寿=王太子Butお爺さんのイメージだった。声は若々しかったが、私と変わらぬ年齢の外見とは想定外。魔族なのだから、牙が生えていたり、目が吊り上がっていたり、額に小さな角の一つが生えていてもおかしくないと思ったが……。


 光沢のあるサラサラの黒髪、額にはインド人女性のビンディみたいな★があり、瞳は金色で睫毛は長く、鼻筋が通っていた。眉はキリッとして、顔のラインはシャープで、唇は薔薇色。肌は健康的な色合いで、ピンと張りがある。甲冑姿なのでわからないが、首の様子から察するに、体は鍛え抜かれ、贅肉はゼロ。引き締まった体躯であることは間違いなし。


「……降りるのが怖いですか?」


 つい動きを止め、見惚れてしまい、セルジュに心配されてしまった。


「い、いえ。怖くないです」

「では」


 そう言って私が降りるのを手伝ってくれた瞬間。


 ふわりと甘いムスクが香る。


(魔族も香水をつけるんだ!)


 そんなふうに感動していたが。

 続々とエントランスに到着した騎士たちが兜を外すと――。


 驚いた。


 セルジュだけではなく、魔族の騎士たちはみんな揃いも揃ってハンサム! 皆、銀髪に白金色の瞳で、整った顔立ちをしている。しかも姿勢も大変美しい。


(こんなにイケメン揃いだと、前世のホストクラブみたいだわ! 行ったことはないけど。イメージで!)


 そこで思い出す。


 魔は美しく、人を惑わすと。

 この見た目の美麗さにうっかり騙され、魂を喰われる……。


「アマレット嬢、何か問題がありますか?」


 つい周囲に目がいってしまい、セルジュが手を差し出しているのに無視してしまった。


「あ、すみません! 初めての場所なのでいろいろ目がいってしまい……」

「そうですよね。あとで宮殿内は侍女にしっかり案内させます」

「ありがとうございます!」


 あまりにも魔族の皆様が美しくて、その美しさの影に恐怖が潜む……なんて考えてしまったが、セルジュは上品に私をエスコートして歩き出し、その手は……温かい。


 しかも……。


「近々、アマレット嬢がいらっしゃるとわかったので、宮殿内の花は人間界の花に変えました。植物の中にも魔力を持つものもあり、初めて目にしたら、驚かせると思いまして……こちらはチューリップという花です。ご存知ですか?」

「はい! 知っています! ピンク、レッド、イエロー、ホワイト。カラフルで可愛いですよね」

「喜んでいただけたのですね……! 良かったです」


 はにかむような笑顔になるセルジュはズキューン案件だと思う。何というかとてもピュアに感じる。天使の顔をした悪魔……なんてことはないと思えた。天使の顔と心の魔族の王太子セルジュ、が正解。


「こちらがアマレット嬢のために用意したお部屋です。家具や調度品、衣類や宝飾品など、すべて人間の方のお店で手に入れたのですが……大丈夫でしょうか。お気に召していただけるといいのですが……ぜひ確認してください」


 そう言ってセルジュに案内された部屋は、公爵邸の自室より広々として、天井も高く、シャンデリアは宮殿にありそうなゴージャスさで、飾られている絵も美術館にありそうだ。


 絨毯もふかふかで、家具は綺麗に磨きあげられ、見るからに高級そう。ドレッサー、文机、チェスト……高級木材が使われていることはその光沢からも明らかだった。


「とても素敵なお部屋です。ファブリックも落ち着いた深みのあるパープルに金糸があしらわれ、とても洗練されています。私、自分の瞳と同じパープルが好きなので、とても嬉しいです!」

「寝室はラベンダー色とパープルのグラデーションで整えています!」


 その言葉に寝室の扉を開けると……。


「……!」


 天蓋には、透け感のある繊細な刺繍で編まれたラベンダー色のレースのカーテンが使われ、枕元には白いふわふわのうさぎの大きなぬいぐるみも置かれていた。スズランの形のランプスタンド、椅子の背もたれはハート型になっている。


 あまりにもラブリーで女子の夢が詰まったようなベッドルームに「わぁ~」と歓声を上げてしまう。


「気に入っていただけたでしょうか……?」

「はい! こんな可愛いお部屋、憧れでした!」

「……良かったです。魔族の女性は何と言うかこのような部屋とは真逆というか……こういう可愛らしいものは人間の皆さんのお店にしかなく……。わたしが選び、部屋に運ばせたのですが……皆から、これで喜ばれるのかと散々心配されていました」

「! 先程もおっしゃっていましたが、わざわざ王太子殿下自ら出向いて整えてくださったなんて……。ありがとうございます」


 そこでカーテシーをすると、セルジュは「そんなにかしこまらないでください!」と私の上腕に優しく手をそえる。


 親切過ぎるセルジュを前に私は思う。


(生贄となり、命が果てると思っていた。でも間違いない。私、公爵邸にいた時よりも。ルルシャの姉だった時よりも。レイールの婚約者だった時よりも。絶対に幸せになれる気がする……!)


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