45話 視察に行きましょう
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次の日の朝のこと。
朝食を食べ終えたドロテアは、相変わらず動く度にフリフリと揺れるナッツの尻尾に癒やされてから、城の正面入口へと向かった。
そこには既にハリウェルの姿があり、ドロテアが姿を見せれば、彼の耳はピクッと反応し、尻尾はぶりんっと激しく動いた。
「ドロテア様、おはようございます! 既に馬車の準備は出来ておりますので、いつでも出発できます!」
「おはようございます、ハリウェル様。それと朝から諸々の準備をありがとうございます」
「いえ! ドロテア様のお役に立てたならば光栄でございます!!」
ぶんぶんぶん!! まるで褒めてと言わんばかりに揺れるハリウェルの尻尾は、つい頬が緩んでしまうくらい可愛らしい。
以前、夜に廊下で会ったときには、ハリウェルに対して何故か少しだけ警戒心を持ってしまったわけだが、ここ数日のハリウェルの愚直で、真面目で、献身的な態度に、ドロテアは彼を信頼していた。
因みに、何度かハリウェルを含めた騎士たちの訓練を目にしたが、流石『名誉騎士』の称号を持つハリウェルの剣の腕は周りとは桁違いであり、それもまたドロテアの中で彼への信頼を高めた。
「さて、それでは行きましょうか、ハリウェル様。今日は一日護衛をよろしくお願いしますね」
「もちろんです! 参りましょう!! このハリウェル、命に替えてもドロテア様をお守りします!!」
「……守っては頂きたいのですが、出来れば命はかけないでくださいね……」
それからドロテアは、ハリウェルに手を取ってもらい馬車に乗り込んだ。
ナッツや他の使用人たちに見送られ、城外に出たところで、今日の一日の計画を脳内で反芻する。
(まずは領主様にご挨拶をして、その後は早速フウゼン染めの工房に向かって職人さんから直にお話を伺って……と。色々下調べはしたけれど、役に立つかしら……)
自身の元々の知識と、昨日から今日にかけてフウゼン染めについて細かく調べた知識。
それらが役に立てばと思いつつ、ドロテアは馬車の小窓から景色に視線を移して内心で思った。
(ヴィンス様、私、頑張って参りますね)
朝から多忙な中、朝食の前に顔を出して「頼りにしている」と声をかけてくれた婚約者──ヴィンスのことを思い浮かべながら。
◇◇◇
『セゼナ』の街に到着してからドロテアは、ハリウェルと数名の騎士と共に、まずは領主であるユリーカのもとへ向かった。
ユリーカはコアラの獣人で、大きな耳が特徴の、穏やかそうな女性である。獣人国では女性でも爵位を継げるため、女性領主は珍しくなかった。
「ようこそ『セゼナ』においでくださいました、ドロテア・ランビリス様。フウゼン染めの職人の工房までは私が案内いたしますね」
「ユリーカ様ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
(コアラの獣人さん……! お耳がなんて素敵なんでしょう……可愛い……)
視察なので顔には出さないよう気をつけたが、ドロテアはユリーカの可愛さに感無量だった。
それはさておき、事前にヴィンスが話を通してくれていたので、視察はスムーズな始まりとなった。
今現在、ドロテアたちがいるのは街の入口辺りだ。
そこから少し歩いた所にフウゼン染めの工房があるらしく、ユリーカの先導のもと徒歩で向かうことになった、のだけれど。
「あのですねドロテア様、こんなことを私が言うのはなんですが、フウゼン染め職人のレーベさんは中々気難しい性格でして……」
「といいますと?」
「こう、昔ながらの頑固ジジィと言いますか……」
「な、なるほど」
職人には頑固だったり拘り強い人が多い気がする。それはドロテアも感じたことがあった。
しかし、ユリーカの言い方からして、おそらく相当なのだろう。
(フウゼン染め職人のレーベさん。確かヒョウの獣人さんのはず。……気難しいお方なら言動には気を付けて探らないと……)
──と、つい先程まで、ドロテアはそう思っていたというのに。
「ドロテアちゃんドロテアちゃん! ほら、これを見てみろ! これが染料となるフウゼンの葉を細かくしたものだ! 触っても良いぞ!」
「まあっ! 本物をこの目で見られるだけで感動ですのに、触っても良いのですか!? では、失礼しますね……!」
ドロテアたちが工房についてものの数分後。
まさかこんなに直ぐにレーベと打ち解けることになるなんて、ドロテアも思ってもみなかった。
(けれど……嫌われるよりは良いかしら……?)
牙が見えるほど大口を開けた笑みで、「ドロテアちゃんドロテアちゃん」とぶんぶん尻尾を振るヒョウの獣人──レーベ。
工房の端で、そんなレーベを信じらないといったような顔付きで見ているユリーカと、「流石ドロテア様!」と凄まじい速さで拍手しているハリウェル。
──何故レーベがこんなふうにドロテアに心を許しているかというと、話は少し前に遡る。
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