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21話 星月祭りの前に

 

 ついに迎えた星月祭り当日。ディアナは無事ラビンを誘うことができ、ラビンもまた仕事を終わらせて祭りに行くことが叶うらしい。


 ……と、どこか祭りに対して他人事だったドロテアだったが、現在進行系でドロテアも祭りに向かう準備をしていた。昨日の夜、ヴィンスに一緒に行こうと誘われたからである。


「ドロテア様! 今日はこちらの衣装を着ていただけますか? 星月祭りには、皆このような衣装を着るのですが」

「ええ、もちろん。……って、え? これ?」


 星月祭りとは、年に一度獣人国で行われる催しのことである。


 文字通り星や月を眺めようというもので、この日は子供も少し夜更かしをして夜空を眺めるのだとか。

 街の大通りには個性的な露店が沢山立ち並び、皆そこで買ったものを食べ歩きして楽しむのも一興らしい。


 おそらく一部の大人にとっては、食べ歩きしながらお酒を楽しむ祭りであり、酔いが回りすぎて夜空を眺める風情など残されていないだろうけれど。

 それもまあ、祭りの醍醐味である。因みに、ナッツもドロテアの支度が済み次第祭りに繰り出すようなのだが、専ら夜空ではなく食べ物を楽しむ派なのだとか。


 と、星月祭りの概要は事前に知っていたドロテアだったが、まさか祭りのときに着る衣装がこのような形状だとは思っていなかった。

 星や月の邪魔をしないように真っ黒の衣装を身にまとうというところまでは知っていたが、それにしたって。


 ドロテアは、衣装を手に持っているナッツに対して気まずそうな表情を浮かべた。


「この衣装では、脚が出てしまうんじゃないかしら……?」


 肩周りにフリルが着いた黒のシンプルなワンピース。それ自体はとても可愛いのだが、問題はその丈だった。


「そうですね……膝の下は見えてしまうかもしれません。過去に、真っ黒な衣装で脚まで隠しては流石に可愛くないという意見が女性から複数上がったようで……今はこの長さが定番なのですが……」

「そ、そうなのね……?」


 確かに獣人国に住む女性は、サフィール王国の女性と比べると多少露出は多い。

 文化の差なので何とも思っていなかったが、それを自分が着るとなるとまた話は別であった。


「ほっ、他のお召し物にしましょうか!? 別にこの衣装じゃないと祭りに参加できない訳ではありませんし!! ただ、ドロテア様と同じ衣装を着られることが楽しみだったので……残念……ですが……」

「何が何でも着るわナッツ。準備してちょうだい」

「本当ですか!? かしこまりました〜!!」


(ハッ! つい!! 落ち込むナッツを見てたら、つい!!)


 ナッツのくるんとした大きな尻尾が床につくほどに下がり、同じように眉尻を下げられたら、反射的に言ってしまったのである。


(けれど、まあ良いわよね。暗いからそんなに脚なんて見えないだろうし。周りの皆も同じ格好なのだし。ナッツも喜んでくれたし。うん、大丈夫──)


 そう、思っていたのだけれど。

 ドロテアはすっかり忘れていたのである。自身の身長が、一般的な女性よりも高いことを。



「こ、これは……!! 着替えないとまずくないかしら!?」


 ドロテアの支度が済み、ナッツが城内にある自分の部屋に戻ってからのこと。部屋まで迎えに来てくれるというヴィンスを待っていたドロテアは、姿見の前で頭を抱えていた。

 というのも、実際に衣装を着てみたら、思いの外丈が短かったからである。


「ひ、膝が半分見えているわ……!! こんな姿をヴィンス様にお見せするのは流石に……」


 ナッツからは綺麗なお膝です〜! なんて褒められたが、もはやそんなことはどうでも良い。綺麗だろうがなかろうが、見えているという事実が問題なのだ。


「違う服に着替える? けれどナッツが悲しんでしまう……けどこんな姿をヴィンス様にお見せするのは……」


 悩む時間がほしい。しかし都合良く時間が止まってくれるなんてことはなく、ノックの音にドロテアの肩は大袈裟にビクンと跳ねた。


「ドロテア入るぞ」

「一分! 一分お待ち下さいヴィンス様……!!」


 そう言ってドロテアは、部屋中の明かりを全て消して、三日月や瞬く星の光も入らないよう、カーテンをしっかりと閉める。

 部屋が真っ暗になったことを確認してからヴィンスに「どうぞ」と伝えると、彼が部屋に入ってきた足音を確認してから、ベッドの脇から姿を見せた。


「どうして真っ暗なんだ」

「少し……お見せするのに覚悟がいりまして……」

「……覚悟。まあ良い。ならその覚悟とやらが出来るまで、少し話があるんだが良いか?」

「はい、それはもちろん」


 声が聞こえなければヴィンスがどこにいるか分からないほどの暗闇で、ドロテアは家具にぶつからないように腕を前に出しながら歩いて行く。

 すると、片手をはするりとヴィンスに捕らえられたと思ったら、もう片方の手で腰を引き寄せられ、密着する形となった。


「捕まえた。……それで話なんだが」

「えっ? この体勢で話すのですか?」

「明かりをつけるのとどちらが良い? 選べ」

「このままで良いです……」


 多少密着しているとはいえ、顔は見えないから恥ずかしさは半減だ。それにまだ覚悟が出来ていないので、生足を見られるよりは余っ程良い。


(あれ? そういえばさっき、まるで目が見えてるみたいに腕を掴まれたような……?)


 そんな疑問を持ったドロテアだったが、「話というのは──」とヴィンスが話し出したので、一旦疑問を他所へ追いやると。


「今度、サフィール王国で建国祭が開かれることは知っているだろう?」

「はい」

「俺にも招待状が来ている。ドロテアにも婚約者として共に来てほしいと思っているんだが、どうだ」

読了ありがとうございました! 


◆お願い◆


楽しかった、面白かった、続きが読みたい!!! 

と思っていただけたら、読了のしるしに

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なにとぞよろしくお願いします……!


↓に完結済み作品がありますので、そちらもよろしくお願い致します!

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