コミカライズ2巻発売記念SS
◤聖女の妹の尻拭いを仰せつかった、ただの侍女でございます②~謝罪先の獣人国で何故か黒狼陛下に求愛されました!?~◢
本日05/09日、コミック第2巻 の発売日を迎えました!ウハー!ありがとうございます٩(♡ε♡ )۶
作画は日野原先生
キャラ原案は氷堂れん先生
です!最高に可愛くてキュンキュンするコミカライズ第2巻となっております!
↓書影とリンクを貼ってありますので、気になった方はぜひチェックしてみてくださいね!引き続き黒狼陛下をよろしくお願いします٩(♡ε♡ )۶
しとしとと雨が降る日のこと。
ドロテアはいつもの庭園ではなく、ディアナの部屋で彼女のお茶会にお呼ばれしていた。
ピンクを基調とした可愛らしい内装の部屋。茶の香りを邪魔しない程度の部屋に飾られた花々。テーブルの上には王城のシェフが作った見た目も可愛いお菓子たち。
そして……目の前には絶景の美女ことディアナ。
(ああ、いつ見ても眼福だわ……)
可愛い物好きのドロテアにとって、ディアナとのお茶会はこの上ない至福の時間だった。
今日も今日とてそれは変わらず、ドロテアはディアナが話すたびに「ええ、ええ」とニヤニヤしてしまいそうなのを必死に堪えて相槌を打つ。ディアナが声まで可愛いのだから仕方がないだろう。
「そういえばお義姉様、聞きましたわ」
「な、何をでしょう?」
ドロテアはできる限り平静を装ったが、内心は心臓がバクバクだった。
(まさかディアナ様とのお茶会の前は必ず、ナッツを見たりぬいぐるみを抱っこして可愛いものに耐性を作ってから挑んでいることがバレてしまったのかしら……!?)
いや、これがバレたからといってディアナは笑うだけだろう。
だが、一応将来は彼女の義姉となる身。
(冷静に……冷静に……)
作り笑いを浮かべるドロテアの気持ちなどつゆ知らず、ディアナはさらりとこう言ってのけた。
「お兄様から言われているのでしょう? お兄様以外の者の耳や尻尾に触れてはいけないって!」
「え? ああ、そのことですか」
「そのこと? ほかに何かありましたか?」
「い、いえ! 何もありません。それと、ディアナ様が仰ったことは、その……事実です」
ホッと安堵したドロテアが事実を認めると、ディアナは黒い耳をぴょこぴょこさせてから眉をキッとつり上げた。
「やっぱりそうでしたのね!? 酷いですわ、お兄様ったら! お義姉様は、私たち獣人の耳や尻尾が大好きですのに!」
「はい、その通り……って、え!? 私、そのことディアナ様にお伝えしましたか?」
確か、獣人の耳や尻尾をたまらなく好きであることは、ヴィンスにはすぐに見破られた。彼からの求婚をすぐさま頷いたのも、そのせいだ。
(けれど、あの時は囁き声だったはず……あ)
しかしそこで、ドロテアははたと気が付いた。
「求婚の時にヴィンス様が仰ったこと、もしや皆様に聞こえていたんじゃあ……?」
「はい。厳密に言うと謁見の間にいた者たちのみですが、その場に私はいたのではっきりと。うふふ!」
「〜〜っ、な、なんてこと……!」
「大丈夫ですわ、お義姉様! 別にあの時に聞こえていなくとも、普段のお義姉様を見ていれば分かりますから!」
励ましているつもりなのだろう。
尻尾をブンブンさせながらディアナの爽やかな笑顔を見せるディアナに、ドロテアは「うっ」と声が声もれた。
(普段の姿でバレていたなんてなんのフォローにもなっていない気がするけれとま、そんなこともはやどうでもいいわ!ディアナ様が……か、可愛い……!)
いえ、いつも可愛いけれど。彼女が可愛くない時なんてないけれど。
ドロテアは一人でそう考え、うんうんと頷く。
対してディアナは、満面の笑みを浮かべながら「で〜す〜か〜ら〜」と跳ねた声色で話を続けた。
「ぜひ私のお耳や尻尾も触ってください!」
「えっ」
「お兄様のものしか触れないなんて、お義姉様にはなかなか我慢の連続でしょう? 大丈夫です、内緒にすればバレませんから! ね? 私は絶対に言いませんし、今お兄様はお仕事中です! 侍女たちは事前に下がらせておきましたから、安心ですわ!」
確かに、この現状はディアナ様黙ってくれれば明らかになることはない。
(ディアナ様のお耳と尻尾を、もふもふできる……?)
ヴィンスとの約束を違えてしまうのは心苦しい。
だが、目の前にこれ以上ない誘惑。
「内緒……バレない……もふもふ……バレない……うふふ……」
ドロテアはそう呟くと、スッと立ち上がってディアナのそばまで歩いた。
そして、見るもの全てを虜にするような可憐な笑みを浮かべたディアナに「お好きにどうぞ!」と言われ、もはやドロテアに断るという選択肢はなかった。
「し、失礼いたします……!」
我慢できず、ぴゅんっと素早い動きでドロテアの右手はディアナの耳へ、左手はディアナの尻尾へと伸びていく。
(もう少しで、もふもふ天国が……!)
そう、思っていたというのに。
「どうやら相当仕置きをされたいようだな? ドロテア」
「!? ヴィ、ヴィンス様……」
「どうしてお兄様がここに!?」
目にも留まら速さで現れてディアナに伸びるドロテアの手首を掴んだのは、厳しい約束を課したヴィンスだった。
仕置きという言葉に対してぶわりと顔を赤くしたドロテアに対して、ヴィンスはフッと口角を上げた。
「嫌な予感がしてきてみればこうだ。まさかドロテアが俺との約束を違えようとするとはな」
「そ、それは……その」
目を逸らし口籠るドロテアにヴィンスはククッと小さく笑うと、彼女をひょいっと抱き上げる。
「きゃあっ」
「さて、早速俺の部屋にいくか。俺の仕置きにどこまで耐えられるか……見ものだなぁ? ドロテア」
「お兄様、お待ち下さい! これは違いますの! 私がお姉様を焚き付けて……! ですからお仕置きはやめてあげてくださいませ!」
ドロテアを庇うため必死になるディアナを見てから、ヴィンスはドロテアにスッと視線を移した。
「……だ、そうだぞ、ドロテア。お前は俺の仕置きがあまり嫌いじゃないはずなんだが?」
「……っ」
「え? お仕置きなんて皆嫌では……?」
「そうだな。お前が思うような仕置きなら、な」
「うう、ヴィンス様それ以上はおやめください……!」
純粋なディアナにあまり聞かせることではない。
ヴィンスの言う仕置きが、甘い甘い意地悪であることなんて。
(それを、私が嫌いじゃないことなんて──)
目をぎゅっと瞑っていっぱいいっぱいになっているドロテアを見るやいなや、ヴィンスは鋭い歯がみえるほどに笑みを浮かべると、スタスタと出口の方に歩いていく。
そしてくるりと振り返ると、ディアナにこう言い残した。
「ディアナ、お前も覚悟しておけよ。今日からしばらくの間ラビンのやつをこき使う。お前はあいつとゆっくり話す時間をしばらく取れないだろうな」
「っ、お兄様は鬼ですわー!」
ディアナの叫び声を最後に、パタンと扉が閉まる。
「ドロテア、お前にはどんな仕置きをしようか?」
「っ、まだ未遂でしたのに……」
ついポロリと溢れたドロテアの言い訳に、ヴィンスはニヤリと笑う。
「少しイジメるだけにしようかと思っていたが、やめるか」
そして、挑発的な目をしながらこう言い放った。
「今回の仕置きは、ディアナとの茶会の前にドロテアがしていることを話すのも良いかもしれないな」
「!? どうかそれはご勘弁を……! もうヴィンス様以外の方は触りませんから……!」
「ククッ、ならいい」
いつまで経ってもヴィンスに勝てる気がしない。
そう思わされた、とある雨の日の出来事であった。
お読みいただきありがとうございます!
コミック2巻、よろしくお願いいたします(•ө•)♡