コミカライズ1巻発売記念SS
◤聖女の妹の尻拭いを仰せつかった、ただの侍女でございます①~謝罪先の獣人国で何故か黒狼陛下に求愛されました!?~◢
本日11/12日、コミック第1巻 の発売日を迎えました!ウハー!ありがとうございます٩(♡ε♡ )۶
作画は日野原先生
キャラ原案は氷堂れん先生
です!最高に可愛くてキュンキュンするコミカライズ第1巻となっております!
↓に販売サイトのリンクや特典についてもまとめておりますので、気になった方はぜひチェックしてみてくださいね!引き続き黒狼陛下をよろしくお願いします٩(♡ε♡ )۶
その日は、雲一つない晴天だった。
風もほとんどなく、過ごしやすい陽気だったので、ドロテアは仕事の休憩中、中庭に出て散歩をしていた。
「ん〜良い気持ち!」
柔らかな風に乗った花の香りに癒される。
知識を得られ、やり甲斐もある仕事をするのは大好きだったが、こういう日はお昼寝なんかも良いかもしれない。
「あら?」
ドロテアがそんなことを思っていた時だった。
庭園の一角。青々しい芝生が生い茂るそこに、横たわる人物を見つけた。
「ヴィンス様……?」
ここからでは顔を伺うことはできないが、背格好や服装、そしてあの漆黒のもふもふとした尻尾からして、あれは間違いなくヴィンスだ。
(あんなところで何をしているのだろう?)
動く様子がないことから、疲労で倒れている可能性もある。それなら一大事だ。
ドロテアは急いでヴィンスのもとに駆け寄り、そして彼の表情を確認した直後、ホッと胸を撫で下ろした。
「良かった……眠っているだけみたい」
ヴィンスも休憩がてら中庭に出て、この陽気に眠気を促されたのだろうか。
「ふふ、寝顔、初めて見るなぁ」
ヴィンスはいくら疲れていようと、執務室で眠ることはない。まだ夫婦ではないため、夜を共に過ごしたこともなく、ドロテアは彼の寝顔を見るのは初めてだった。
「眠っていると、少しあどけないのね……。なんだか可愛い……」
人の寝顔をジロジロと見る趣味はないが、いかんせん相手はヴィンスだ。婚約者で、普段は隙のない男。
こんなふうに無防備に眠っている姿を見られるのはそうない機会だろう。ドロテアは内心でヴィンスに謝罪してから、膝を芝生に下ろし、彼の顔をじっと見つめる。
「本当に整ったお顔……。あ、お耳の中の毛はこんな色をしていたのね……。それに、少し細くて柔らかそう……」
こうもじっくり観察する機会などないため、ドロテアはのめり込んで見つめてしまう。どころか、彼のきめ細やかな肌や、僅かにカサついた唇、柔らかそうな真っ黒の耳を触りたくなってしまう。
(いつもヴィンス様の手のひらの上で転がされているから、今日ばかりは構わないかしら……)
──神よ……いえ、ヴィンス様お許しください……。
脳内で懺悔したドロテアは、ヴィンスに向かってゆっくりと手を伸ばした。
「寝込みを襲う気か? ドロテア」
「えっ」
しかし、目をパチっと開け、楽しげに口角を上げたヴィンスにその手は捕らわれてしまった。
ヴィンスの様子から察するに、今起きたばかり……というわけではなさそうだ。
「お、起きていらしたんですか……!?」
「いや? そもそも眠っていなかったんだが、ドロテアが近付いてくるのが分かったから寝たふりをしていただけだ。俺の寝顔は、そんなに可愛かったのか?」
「……っ」
触ろうとしていたことはもちろん、発言も全て聞かれていたらしい。
ドロテアがあまりの恥ずかしさに顔を真っ赤に染めると、ヴィンスは捕らえたままの彼女の手を自身の方に引いた。
寝転がる自分の胸辺りにドロテアの頭を乗せると、彼女の頭を優しく撫でながら、時折耳をカリッと手で引っかいた。
「んっ……」
「ふ、いい声だ」
「っ、ヴィンス様……! 確かに勝手に触ろうとした私はいけませんが、ご容赦ください! ……その、こういうことは、ぜひお部屋で……」
「ほう……?」
ヴィンスは片目を細めるようにして笑うと、ドロテアの拘束を解いた。
そして、自分も起き上がり、ドロテアと見つめ合う。
「つまり、部屋なら存分にお前を鳴かせても良いというわけか? それは良いことを聞いた」
「ち、ちがっ、そういうことでは」
「それとドロテア、お前に一ついいことを教えてやろう」
ヴィンスはおもむろに立ち上がると、ドロテアに手を差し出し、彼女も立ち上がらせる。
ずいと距離を詰め、ドロテアの耳元に唇を寄せれば、彼女の体はピクリと震えた。
「俺は寝込みを襲われるより、襲うほうが好きだ」
「……!?」
「結婚したら覚悟しておけよ」
「〜〜っ」
やっぱり、どうしたってヴィンス様の手のひらの上なのだ。
穏やかな陽気に包まれながら、真っ赤な顔をしたドロテアはそう思わずにはいられなかった。
読了ありがとうございました٩(♡ε♡ )۶
ぜひ、コミカライズ、書籍版もよろしくお願いします(*^^*)