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121話 幸せの雪だるま【完結】

 

 ◇◇◇



 ドロテアはヴィンスとプシュ、ディアナとラビンに、アガーシャとデズモンド、そしてハリウェルにナッツやルナなどの面々と、屋敷の中庭にいた。


 中庭の一面には、昨夜降った真っ白でふかふかの雪が積もっている。

 今日の青空から覗く太陽の光のせいか、表面は少しキラキラとしていてとても美しい。


 いつもは朝一番に使用人たちが積もった雪を中庭の端にまとめるのだが、昨日の夜にディアナが雪はそのままにするよう伝えてあったようだ。


『レビオル』で皆で過す最終日に、思い出を作りたかったらしい。

 ここ数日屋敷は慌ただしく、観光や娯楽はおろか皆で集まって食事をとることもできなかったため、ディアナの提案を断る者は一人はいなかった。


 そして、現在に至る。


「ふふっ、ラビンそーれっ!」


 ディアナが投げた柔らかな雪玉が顔面に当たったラビンは、地面にガクリと崩れ落ちた。


「姫様ありがとうございます……! 姫様が人生で初めて作った雪玉を感じられて、私は本当に幸せです!」

「もう! ラビンったら!」


 恋人になったからか、前とは違って好きという思いを弾けさせるラビンに、ディアナは幸せそうに笑っている。


(良かったですね。ディアナ様……!)


 そんな二人に、ドロテアもつい頬が綻ぶ。

 ヴィンスはラビンの発言に「あれが将来義弟になると思うとゾッとするな……」と言いつつも、その表情は柔らかかった。


「貴方、ここはもう少し厚みを作りましょう」

「ああ」


 ディアナたちの傍でかまくらを作っているのは、アガーシャとデズモンドだ。

 二人は仕事さながらの真剣な表情で雪に触れ合っているが、時折手が触れ合って頬を染め合っている。


(可愛すぎないかしら?)


 その周りには、森に帰らずに済んだプシュが興奮した様子で走り回っている。その後ろには、ハリウェルとナッツとルナの姿だ。

 ディアナの作った雪だるまやアガーシャたちが作るかまくらをプシュが壊さないよう、追いかけているのだろう。


「ふふ、皆楽しそうですね」

「ああ、本当だな。……で、ドロテアは何を作ってるんだ?」

「私は……」


 ドロテアは尻を地面に付けないようしゃがみこんだまま、大きさの違う雪の塊を二つ作る。

 大きい雪の塊の上に小さい雪の塊を乗せてから、積もった雪を三角の形に整えていく。


「うまいな。雪だるまか?」


 隣にしゃがみ込み問いかけてくるヴィンスに、ドロテアはふふっと笑った。


「雪だるまですが、ただの雪だるまではないのです! これを見てください」


 三角形に整えた雪を二つ作り終えたドロテアは、それを雪だるまの頭にちょこんとつける。

 そして、先に集めておいた木の枝を胴体につけて手を作り、背後にも一本枝をつければ──。


「できましたわ! ヴィンス様をモチーフにした雪だるまです!」


 雪で耳を、木の枝で尻尾を表したドロテアの力作である。


「ほう。……なかなか上手いな。それに可愛らしい」

「本当ですか!? 嬉しいです! ……けれど、やはり木の枝ではヴィンス様のもふもふの尻尾を表現できていませんね……。どうにか別の方法はないものか、もう少し考えてみます」

「ははっ、お前は遊ぶことにも一生懸命なんだな」


 それからヴィンスは「俺も作ってみよう」と言って、雪だるまの制作を始める。


 どちらが上手に尻尾を上手く表現できるか競っていると、ヴィンスは一瞬ディアナやデズモンドたちに視線を移して感慨深そうに囁いた。


「──楽しいな、ドロテア」


 ドロテアも視線を上げ、楽しげに笑う皆の姿を視界に捉える。


「ええ……。とっても」

「ドロテアがいなければ、こんなふうに皆で遊ぶなんてできなかっただろう」

「それは言い過ぎでは……?」

「足りないくらいだ。……お前のおかげだ。ありがとう、ドロテア」


 ヴィンスはドロテアを見つめながら、そっと彼女の手を包み込む。

 その瞳から、繋がれた手から、感謝の気持も、愛おしいという思いも、溢れんばかりに伝わってきて──。


「だ、だって私は、ヴィンス様の婚約者ですもの……!」


 照れながら言い切ったドロテアに、ヴィンスは幸せそうにくしゃりと笑ってみせた。



 〜完〜

最後までお付き合いくださりありがとうございます!

この話で本編は最終話となります。皆様の応援のあかげで、ここまで書き切ることができました!

しかし、ドロテアとヴィンスの結婚式、夫婦となった二人のその後、ディアナとラビンについても書きたいことがたくさんあります!また時間ができましたら後日譚などの形で皆様に読んでいただけたらと思いますので、ブクマはそのままでお願いいたします!

完結まで応援してくださった皆様、ぜひご祝儀のお星さま(評価)をいただけますと幸いです(´;ω;`)♡


本日7/1に黒狼陛下書籍3巻も無事発売されました……!

なろう版にはないラビン→ディアナへの告白の様子、書籍版でしか読めない番外編も収録されております!

絶対に楽しんでもらえると思うので、是非そちらもよろしくです\(^o^)/♡


そして新連載もスタート(下にリンクあります)しましたので、そちらも良ければ(´;ω;`)♡


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました……!

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