白鳥さんは想像以上のポンコツだった⑦
「い、一体、何を……? 私のこの、オナラ体質が、魅力的?」
「そうだ」
白鳥さんは、信じられないようなモノを見るような目で俺を見た。
俺的にはそこまで変なことを言ったつもりはないのだが、自分の体質を嫌っている彼女からすれば信じられないのも無理はないだろう。
「う、嘘です! 信じられません!」
「信じられないのも無理はないが、本当に嘘じゃない。女性にとっては辛い体質だと思うが、オナラ自体は生理現象だし、お漏らしや脱糞と比べたら可愛いものだろう」
「……確かに、それに比べれば大したことないかもしれませんが、可愛くはないですよ。だってオナラですよ? その、臭うんですよ?」
「いや、可愛いい」
断言する。
白鳥さんはまた少し混乱状態に陥った。
「そ、それは、あの、主様が、私と似たような体質で、親近感を持っているから、とかですか?」
「それも少しはあるかもしれないが、決定的な理由ではない。具体的な理由を一言で表すなら、ギャップ萌えだ」
「っ!?」
ギャップ萌えとは、意外性萌えとも言われるもので、語感からもわかる通り、普通に考えたらあり得ない意外性から発生する萌えである。
萌えに関してはふわっとした概念なので説明しにくいが、要は愛情とか好感のようなものである。
例えば、文部両道で美人の生徒会長が実はドジっ子だったりとか、イケイケのギャルが実は純情で優しかったりといったギャップがわかりやすいだろう。
「白鳥さんのような清楚な美人でスタイルも抜群の完璧超人が、実はオナラっ娘とか、最高と言わざるを得ない」
それに加え、忍者の末裔という設定まで存在する。
キャラ萌え要素の塊だ。
「で、でもでも、オナラですよ!? 臭ったりしたら、寧ろ幻滅するのでは!?」
「そういう人もいるだろうが、俺は違う。可愛い子が信じられないくらい臭いオナラをしたら、そのギャップで萌え萌えだ」
そこに、更に恥じらいが加われば完璧である。
「あ、悪趣味ですよ! ていうか、私のオナラ、そんなに臭かったですか!?」
「悪趣味なのは認める。それと、白鳥さんのオナラは、残念ながらそこまで臭わなかった」
「残念!?」
というか、一度目のときは自分の屁の臭いでよくわからなかったし、二度目のときはベッドの下だったのでほとんど臭わなかったのだ。
それを正確に嗅ぎとった柴咲さんは、やはり凄まじい嗅覚を持っていると言えるだろう。
「どうだ? こんな変態野郎、寧ろ白鳥さんの方が幻滅したんじゃないか?」