白鳥さんは想像以上のポンコツだった⑥
「ど、どどど、どうとは?」
「俺のことを、男としてどう思ってるかだ」
俺がハッキリそう言うと、白鳥さんは目をグルグルと泳がせて挙動不審になる。
どうにも白鳥さんは、動揺すると目がグルグルになるらしい。
増々漫画のような存在だ。
「わ、私は、主様のことを、その、素敵な男性だと思っていますよ?」
「好きか嫌いかでは?」
「ひぃ~~~!」
白鳥さんは混乱している。変な悲鳴を上げ始めた。
しかし俺は遠慮なく攻撃を続ける。
「白鳥さん、どうなんだ? 好きか、嫌いか」
グラグラ揺れている白鳥さんの頭を両手で固定し、真正面から見据えて再度問う。
白鳥さんはさらに顔を真っ赤にし、汗がダラダラと垂れてきた。
そして――
ぷぅ♪
と可愛いオナラが鳴り響く。
……白鳥さんは泣き始めてしまった。
「その、すまなかった。強引過ぎたと反省している」
「いいんです……。悪いのは、私の体質なんで……」
泣いて少し落ち着きを取り戻したのか、まともに返答が返ってくる。
今なら先程回答も返ってくるかもしれないが、同じことを繰り返す可能性もあるので焦らないことにした。
「たとえ自分のことでも、体質や人の特徴を悪く言うのは良くない」
「……でも、プープーオナラをするなんて、忍者どころか女として……いえ、人として失格ですよ」
「言い過ぎだ。白鳥さんは、仮に自分と同じ体質の人間がいたとして、同じことを言うのか?」
「……言いません。すみません、この体質が嫌過ぎて、深く考えず口走りました」
意固地になって意見を変えない可能性もあったが、白鳥さんは理性的だった。
これは想像でしかないが、白鳥さんは自分の体質が原因で辛い思いをしてきたのだと思う。
そういう人生を送ってきた人は、卑屈に成長することもあるが、他人を思いやれる良い人に成長することもある。
彼女は後者なのだろう。
「……俺も白鳥さんほどではないかもしれないが、人生の中で放屁で悩んだことがある。具体的には、我慢弱いんだ」
幼少の頃の俺のあだ名は、屁こき太郎だ。
そして今でも、一部の同僚の間ではそう呼ばれている。
「俺が研修のときに盛大に放屁したのも、それが原因だ。だから、少しは白鳥さんの気持ちも理解できると思っている」
男である俺は最終的にあまり気にしなくなってしまったが、子どもの頃は流石に少しは悩みもした。
「そのうえで言わせてもらうが、白鳥さんのその体質は、とても魅力的だと思う」
「っ!? 魅力……的……?」
勿論嘘じゃないぞ。