白鳥さんは想像以上のポンコツだった⑤
「そんなワケでして、私はまだ忍者としての生き方を諦めたワケではないのです」
白鳥さんの忍者道に対する情熱は理解した。
しかし、まだ色々わからないことがある。
「質問なんだが、忍者とはどんな職業で、何をすれば忍者と認められるんだ?」
「……忍者は結構マルチな仕事です。潜入捜査、追跡、監視、暗殺、あとは護衛なんかもしたりします」
ある程度は想像通りだが、暗殺もあるのか……
今どき、殺しを生業にする職業があるという事実に衝撃を覚える。
やはり裏の稼業というのは恐ろしいな。
「白鳥さんも忍者の仕事をしたことがあるのか?」
「いえ……、研修はありましたが、私は実際の仕事をしたことはありません。……資格が、ありませんので」
「資格が必要なのか……」
裏の稼業とはいえ、試験のようなものはあるらしい。
だとしたら、ポンコツの白鳥さんがそれに合格するのは難しいだろう。
「表立って認められてはいませんが、一応国家資格のようなものでして、全国忍者連盟における一般課題を全て合格した者のみが忍者と認められます」
なんと、そこまで大規模なものだったのか……
となると、裏で国の上層部が関わっている可能性もありそうだ。
国家資格というのも、あながち間違っていないのかもしれない。いや、きっとそうだ。その方が夢がある。
「資格試験は18歳まで受験可能ですが、それ以降は受験資格を失います。私は、最後まで合格することができませんでした……」
まあ、それは言われずともわかっていた。
もし彼女が合格できるのなら、世の中にはもっと大量の忍者が存在していただろう。
「それじゃあ、どんなに頑張っても、もう忍者にはなれないんじゃないのか?」
「……正規の忍者としては、認められません。ですが、世の中には私のように資格を得られなかったはぐれ者が沢山いるんです。私も、そんな彼らと同じように、非正規の忍者として生きていきたいと思っています」
それで俺を主として仰ぎ、忠誠を誓った、と。
……言い方は少し悪いかもしれないが、要は趣味で忍者をやりたいということだ。
世の中にはプロ以外のスポーツ選手だって沢山いるし、別に悪いことではないだろう。
ただ、白鳥さんの意図はそれだけではない、と柴咲さんは言っていた。
正直俺は半信半疑だが、それを引き出し、男女として向き合うために柴咲さんと別れたのである。
ここは一歩踏み込ませてもらおう。
「白鳥さん、一つ確認したい。俺のことはどう思ってる?」