白鳥さんは想像以上のポンコツだった④
「はぁ……、はぁ……」
肩や首、背中などを入念にマッサージしたところ、白鳥さんは文字通りヘニョヘニョになった。
マッサージの経験など、過去に親にしたくらいなので完全に素人なのだが、そんな俺の手腕でもこの有様だ。
本人が言うように、相当敏感なのだろう。
つい悪戯心が湧いて、うつ伏せでダウンしている白鳥さんの首筋をつついてみる。
「ひゃん!?」
ピーンと海老反りになる白鳥さん。
成程、これは大した感度だ。
三千倍とまではいかないが、一般人と比べて数倍くらいはあるかもしれない。
普通の精神力では、恐らく耐えられないのではないだろうか。
「ひ、酷いです、主様……」
「ああ、すまない。反応が良いのでつい興が乗ってしまった」
自分が原因なので介抱してやりたいところだが、今の白鳥さんに触れるのは逆効果だろう。
仕方ないので白鳥さんを放置し、お茶を入れなおして落ち着くのを待つとする。
「ふぅ……、お見苦しいところをお見せしました」
「いや、眼福だった」
俺がそう返すと、白鳥さんは真っ赤になって恨めしそうな目で見てくる。
しかし申し訳ないが、可愛いなとしか思えない。
「……ご、ご覧いただいた通り、私の体はこんな感じでして、忍者としての適性は全くありませんでした」
「実際見たからこそ理解できた。確かに、それでは忍者の仕事は難しそうだ」
本当は見るまでもなくわかっていたが、自分の行動に正当性があったことを強調するためにそう言っておく。
「子どもの頃は良かったんです。私は身体能力も高かったし、女の技は必要なかったので……。でも、中学生に上がったくらいで私の欠点が浮き彫りになり、里からは徐々に見放されるようになりました」
緊張するとオナラが出てしまうという欠点も、子どもの頃は笑って許されていたらしい。
しかし、年齢が上がっても治らないことから、体質的なものであることがわかり、問題視されるようになったのだそうだ。
「それでも、私は忍者として生きる道を諦めきれませんでした。だから、里を離れた今も、修業は欠かさずしています」
「普段仕事をしながら忍者の修行もとなると、かなり大変なんじゃないか?」
「いえ、隠密術や体術なんかは、仕事をしながらでもできることはありますから。それに、女の技についてはネットで色々勉強できますので……」
成程。時折気配が消えたり、見失ったりするのは修行の一環だったのか。
しかし、女の技も……?
想像すると、少し興奮してしまった。