白鳥さんは想像以上のポンコツだった⑪
「ウチの会社は比較的無害だったんじゃなかったのか?」
「他の会社に比べれば、ウチの男性社員は無害な人多いですよ。それでも、そういう目で見てくる人はいますが……」
「たとえば誰だ?」
「えっと、田原さんとか、斎藤さんとかですかね……」
斎藤はあまり関りがないが、田原は同期だ。
あの野郎、許せんな。
「あ、でも今は平気です。詩緒ちゃんや主様と一緒にいるときは、近づいてこないので」
俺はともかく、柴咲さんと一緒にいるときに声をかけないというのは、お調子者の田原からは考えにくい。
さては、柴咲さんに何かされたな?
流石柴咲さん、グッジョブである。
「もし、他に何かあれば俺も頼ってくれ。可能な限り対処しよう」
「ありがとうございます。でも、私は主様の忍びですので、頼るワケにはいきません」
「じゃあ、主命令だ。頼れ」
「そ、そんなぁ……」
クールに断った白鳥さんだったが、俺の強引な命令にヘニョヘニョになる。
つくづくシリアスが似合わない人だ。
「まとめよう。白鳥さんは俺のことが好き。そして柴咲さんのことも好き。だから二人に幸せになって欲しい。そして自分は忍者として仕えることで自分の気持ちを誤魔化す、ということでいいか」
「ち、違いますよ~! 誤魔化しとかじゃなく、忍者として仕えたい気持ちも本当ですから! 将来的には、主様とその奥方様に仕えられたらいいなぁって思ってます!」
成程。それで俺と柴咲さんが結婚すればwinwinということか。
これは、もしかしたら柴咲さんの考え過ぎだったのかもしれない。
白鳥さんは俺のことが好きは好きなのだろうが、忍者として仕えたい気持ちも強いということだ。
自分の気持ちを誤魔化すために忍者プレイに徹していたのでないのであれば、わざわざ男女として向き合う必要もなかっただろう。
柴咲さんと別れたのは失敗だったか?
……いや、柴咲さんの能力は本物だ。
結論を出すのはまだ早い。もう少し探ってみよう。
「でも、白鳥さんは俺のことが好きなのだろう? 俺と一緒になりたくはないのか?」
「そ、それは、その、あの……」
そして再びオナラが鳴り響き、白鳥さんの顔が真っ赤に染まる。
しかし、今度は先程のように遠慮はしない。
「白鳥さんの気持ちは、そんなものなのか?」
正座している白鳥さんに近づき、逃がさないよう肩に手を置く。
さらに顔を近づけ目力で攻める。
しかし、グルグル目なので視線は合わない。
「きゅう」
白鳥さんは白目を剥いて気絶した。