白鳥さんは想像以上のポンコツだった⑩
「白鳥さんが柴咲さんに多大な恩を感じているのは理解した。確かに、彼女だからこそ白鳥さんの状態を正確に把握し、助けることができたのだと思う。恩に感じるのも当然だろうな。……それで、俺と柴咲さんをくっつけようとしていたのは、その恩返しという意味があったということか?」
「……それだけではありません。私は、詩緒ちゃんにも主様にも、幸せになって欲しいんです。大好きな二人の幸せは、私にとっても幸せですから」
……俺は柴咲さんのような能力はないが、白鳥さんの言葉に嘘がないことくらいはわかる。
というか、今サラリと大好きと言ったのだが、本人は気づいているのだろうか。
「……はっ!?」
と思ったら、白鳥さんの顔が真っ赤になる。
どうやら、無意識の告白だったらしい。
「い、今のは、なしでお願いします!」
「駄目だ」
「そんな!?」
最初から好きだとわかっているのに、今更撤回しても無意味である。
しかし、大好きとまで言われると流石に少し気恥ずかしい。
「正直、俺のような変態のどこを好きになったのか謎なんだが、参考までに教えてくれないか?」
「そ、そんなの言えませんよ~」
「そこをなんとか」
目をグルグル回している白鳥さんの手を掴み、ちょっと真剣そうな顔を作ってお願いする。
すると白鳥さんは、あうあう言いながらもなんとか返答しようとしてくれる。
改めてわかったことだが、彼女は押しに凄く弱い。
これでは男関係でトラブルになりやすかったのも当然と言えるだろう。
もし柴咲さんと出会っていなければ、下手をすれば今頃風呂にでも沈められていたかもしれない(業界用語)。
「だ、だって、主様はその、私のことを初めて守ってくれた男性で! 今まで、本当にそんな人っていなくて! だから、まるで王子様みたいで!」
初めてって、そんなこと本当にあるのか? と思い色々聞きだしたところ、どうやら本当であるらしい。
まず、忍者というのはそもそも守られる存在ではないため、里では守られるということがほぼなかったのだという。
異性で自分のことを少しでも守ろうとしてくれたのは、実の父だけだったそうだ。
その父親も里の中では立場が弱く、正直頼りなかったのだとか……
「上京してからは、先程説明した通りで、皆その、私の体が目当てとか、そんな人ばかりで……」
会社に入ってからもそれは同じだったようで、柴咲さん曰く、近づいてくる男はほぼ例外なく体が目当てだったそうだ。
一体誰だそんなヤツは……