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婚約破棄?上等ですわ。

作者: 浅村鈴

私はキリシア伯爵家に生まれた、エミリア・キリシア。

商売の女神と言われたセシリア・モーランドはお祖母様。モーランドはお祖母様の結婚前の名前。結婚後もこの名前の方が有名だった。(ちなみにアランお祖父様も商売上手で名が知られている。商談の悪魔の通り名があるとか…)

ちなみに我が家は皆、商魂逞しく、お金が大好きで、幼い時から商売のイロハを教えられ、私自身も自ら商会運営もしていた。

そんな私にも貴族なので婚約者は居た。

格上の公爵家の嫡男でマルス・オルドス。前公爵たっての願いで婚約になった。両親から打診された際、浮気、一方的な婚約破棄、暴力、暴言、商売上の邪魔をした場合は我が家に対して慰謝料の支払いをする事。それなりの責任を取る事。の契約書まで作った。

普通なら格下の者が言う事など聞き流せば良いのだけど、前公爵は昔からお祖母様の大ファンで公爵家にお祖母様の血筋を入れたかったのだった。だから契約書にサインをしてでも婚約を成立させたかった。


婚約して10年、シャレード公爵家の舞踏会で事件は起こった。





「お前とは婚約破棄だ!」


婚約者だけど、エスコートされず、別々に出席していた舞踏会で私は婚約破棄を告げられた。皆様の前で。



「俺はお前とは格が違うんだ!お祖父様が勝手に決めた婚約など、お前と結婚など絶対しない!俺が愛しているのはレネットだけだ!」


この世間知らずの馬鹿男は私の婚約者。


「そうよ!貴方なんかマルスには相応しくないわ!マルスはオルドス公爵家の時期当主なのよ!それに私のお腹にはマルスの子がいるんだから!」


私はもう処女じゃ有りませんと高らかに宣言したのはフォードリン公爵家の頭が弱い御令嬢。


会場内はざわついていた。

婚約者が居るのに他の女を孕ませた挙句、こんな場で婚約破棄を告げる公爵の跡取りと、結婚まで生娘が当たり前の貴族の娘が結婚前に婚約者が居る男性と閨を共にし既に子供を宿している醜聞に。


それなのに、本人達はまったく気がついていないようで、2人共愛に酔っている姿。


両公爵家はどんな子育て、教育をしたのかと……。



「では婚約破棄と言う事で良いですか?

私は構いませんが」


エミリアは冷静に答えた。

その姿は凛としていて、会場の人達に好印象を持たれていた。さすがセシリアの孫だと。

そんな雰囲気を汲み取る事も出来ず、マルスは声を上げた。


「勿論だ!皆さんが証人だ!」


「マルス様が皆様が証人だと仰っていますが、皆様よろしいでしょうか?」


エミリアが聞くと会場からは拍手が上がった。


「私の勝ちね!

たかだか伯爵家に生まれたのに、いつも貴方が皆にちやほやされて。

商売が上手くいってるのだって体を使ったり汚いやり方で儲けてるのでしょう?

じゃなかったら、公爵家の我が家より裕福な訳ありませんわ!」



拍手をなぜか祝福と勘違いしたレネットはまたもや頭の弱さを露見した……。



「はぁ?何、甘い事言ってらっしゃるの?

お金に綺麗も汚いも有りませんわ。お金が無ければ飢えて死ぬのですよ。

キャサリン様は1リルでもご自分で稼いだ事はありますか?」



先程まで笑顔で対応していた、エミリアはお金の事を言われて憤慨していた。キリシア家では商売を侮辱されては黙っている者はいない。



「あ、あるわけないじゃない!貴族の娘がする事じゃないわ!」


「では、ご実家が借金まみれになって、明日食べる物も無くなったらどうなさるの?」


「わ、我が家は公爵家よ!そんな事ある訳ないじゃない!」


「明日何があるかは誰にも分からないですわよ。それとも現実にしてみましょうか?明日の食べ物の心配をする事を……」



「伯爵家の貴方にそんな事できる訳ないじゃない!やれるものならやってみたら良いわ!」


「では遠慮なく。トーマス」


「はっ!」


エミリアの護衛の1人が一瞬で消えた。


会場内の騒ぎを聞きつけ、主催者のシャレード公爵夫妻と長男、次男、長女が急いで入場してきた。


「我が家の舞踏会での騒ぎはどういう事だ!?」


シャレード公爵はマルスに詰め寄った。


「そ、それは…。騒ぎになって申し訳無かったですが、俺はもう我慢できなかったんです!!」


「そうよ!マルスは悪くないわ!」



「エミリア?大丈夫?」


シャレード公爵令嬢のキュニィはエミリアの級友だったので、心配していた。


「大丈夫よ。キュニィ」


エミリアはキュニィに微笑んだ



「エミリア、黒い笑顔に見えるが……。辛い事ではないんだな?」


「ブルー?黒い笑顔だなんて……。失礼ね。でも辛くはないわ。これから幸せとお金が舞い込むのだから。ふふっ」


「そうか。なら安心だな」


ブルーはシャレード公爵家の次男だ。



「私達を無視して何笑ってるのよ!?」



「マルス!」


「レネット!」



オルドス公爵とフォードリン公爵が真っ青な顔で子の名前を呼んだ。


「一体何があったんだ!?何をやってるんだ!?」


「俺達は愛し合ってるんです!こんな格下が婚約者だなんて、お祖父様が決めたからと言って俺は納得できません!」


「そうですわ!私はマルスを愛しています!お腹にはマルスの子もいます!私はマルスと結婚します!」



「……だそうです。この場で私達の婚約破棄は決まりました。契約に従って慰謝料を後日請求致します」


「はぁ?慰謝料だと?

何故そんな物を支払わなければならない?」


「契約書がありますから」


「契約書?」


「そんな事も知らないなんて……」



「エミリア嬢、愚息が申し訳ない。記載以上の慰謝料は後日必ずお支払いする」



「おじ様!そんなお金支払う必要などありませんわ!私はその悪女に嫌な思いばかりさせられたんですよ!」


「そうだ!悪女に慰謝料を払う必要などありません!」



「黙れ!!」



公爵の声に声を出す者は居なかった。

静まり帰った会場内に真っ青になった執事が公爵に耳打ちした途端、フォードリン公爵が静けさを破った。



「な!?商人や領民が我が領土から移動している?なぜだ!?」


「あー、それは我が商会がフォードリン公爵領での商売を一切しないと通達したからでしょうね」


「エミリア嬢?な、何故そんな事を…?」



「レネット様が私に喧嘩を売られたんですもの。潰せるものなら潰してみろと…。あ、お宅に借金がある事もご存知無かった様ですわね。知らぬが仏とはこの事かしら?」





「キリシア伯爵、ど、どうにかしてくれ!」


フォードリン公爵は父に縋り付いた。


「それは無理ですな。

我が家に、それも母が溺愛しているエミリアに喧嘩を売ったなら、しっかり買うしかないですからな。ハハハ!」



「お父様ったら豪快に笑って。でもお気持ち分かりますわ。ふふふっ」



「フォードリン公爵家は終わりだな…」


誰かが呟くとレネットはマルスの腕にしがみついた。


「マルス様、おじ様、助けてください」


「それは出来ない…」


マルスはそう言ってレネットがしがみつく腕を振り払った。


「マルス、お前は我が家から籍を抜く。もう親でも子でもない」


「ち、父上!?」


「我が家からは席を抜くがレネットはお前の子を宿しているんだ。お前自身が責任を取れ。妻の実家に家と畑を用意してやる。そこで働いてレネットと子供を育てろ」


「レネットも我が家からは席を抜く」


「お父様!?私は嫌です!私は公爵家の娘です!」


「お前たちはもう公爵家の息子でも娘でも無い。お前たちの力だけで生きていくんだ。2人を連れて行け…」


オルドス公爵は騎士に命令を出した。

連れて行かれる2人は暴れて、叫び続けていた。


「シャレード公爵、この度は申し訳なかった。この詫びは後日必ず。勿論エミリア嬢にも、キリシア家にも」



シャレード公爵はオルドス公爵の肩をポンっと叩いた。

お疲れ様と言う様に……



「エミリア!俺と結婚してくれ!!」


会場内が落ち着いた気配になった頃、声を上げた青年が居た。


「ブルー?」


「俺はエミリアが好きなんだ!君に婚約者が居ない今しかチャンスはない!今を逃せば直ぐに誰かと婚約するだろうから。だから今言う!俺は次男だから家を継がなくても良いし、君の隣に居るために勉強もしたから、頭も良いし、君を守る為に剣も強くなった。何よりブルーミング商会は俺が作ったから、俺は金持ちだ!結婚してくれ!!」



「お受けいたします」



「やったぁー!」


ブルーはエミリアを抱きしめた。

幼い時からエミリアに恋焦がれ、エミリアに魅力的に映る様に、剣技も商売も勿論お金儲けも頑張っていた。その頑張りが報われた瞬間だった。



「まぁ、めでたい席に帰れて良かったわ。エミリアのウエディングドレスを作らなきゃね」


「お祖母様!?」

「お母様!?」

「セシリア様!?」


そこにはセシリアと前王妃のカナリア、そしてセシリアの夫アランと前国王のキルフォードが立っていた。4人は外遊していたが、たまたまカナリアの実家に寄った所だった。


「孫の代で私達は家族になるのね。セシリア様と家族になれるなんて、私嬉しいわ。

ブルー、良くやりました!」


喜ぶ前王妃


「僕は本当なら僕たちの孫の誰かに嫁いで欲しかったんだけど……。僕もセシリア様と家族になりたい……」


しょぼくれる前国王


「その件も近々叶いそうですよ」


慰めるアラン


「え?え?そうなの?現実になったら嬉しいなぁ」


アランの言葉に前国王は目尻を下げていた。



マルスとレネットは貴族席を失いながら、お腹の子の事もあり、オルドス公爵が言った様に、妻の実家の領地で慎ましく暮らした。

キリシア伯爵家には莫大な慰謝料が支払われ、シャレード公爵家には迷惑料が支払われた。

その為、オルドス公爵家は大半の財産を失う事になった。

フォードリン公爵家とは新たに契約書が交わされ、領土の半分を前借金としてキリシア家に渡し、残りの半分で新たに再建の借金をさせて貰った。

キリシア家も鬼では無い、取れる物があれば幾らでもお金は貸す。返せなければ取り立てれば良いだけだから…。






この作品を読んでくださってありがとうございます!

自分の作品を読んで貰えるのは本当に嬉しいし、感謝でいっぱいです!

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― 新着の感想 ―
[一言] 考えなしのうつけが因果応報に逢うのは、気持ちいいですね。短編ゆえに安心して読めました。 何回校正してもあるのが誤字。そんなところに!?とか、それはそうなの?とか、此処彼処に隠れています。時に…
[気になる点] 短編だからこそ尚更誤字が悪目立ちする
[一言] >お前は我が家から席を抜く 籍の間違いでは?
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