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聖女と呼ばれるまで  作者: 名無しの詩人
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00.プロローグ

豊かな自然と広大な土地に恵まれたアストリア王国

稀代の王アストリア7世によって、隣国との間柄も良好に、万民のための政策を用いた確かな治世が行われていた。

そんな王国の南に位置する森で、この物語は始まる。


小鳥のさえずりに、木々や花々の優しい香りに包まれた豊かな森の中で、彼女が一人歩いている。

森に棲む獣が居ないとも限らないのに、彼女の服装はあまりにも無防備である。


「…ここは…どこ…ですか?」


気づけば森の中に立っていた彼女-アストリア-は自分が何故森の中に一人でいるのか、そもそも今まで何をしていたのか、無理に記憶を探ろうとすると、激しい頭痛に見舞われた。


「…っ!!」

(名前だけは、わかるます。でも、その他のこと、何もわからないです。)


頭を押さえながら、アストリアは自身の置かれた状況を把握したかったが、思い出そうとすると酷い頭痛があるので諦めるほかなかった。改めて今の状況を見直してみる。まず、森の中に一人でいること。身元が分かるものがないかと、小さな肩掛けの鞄を探ってみると中には鍵のような形状の金属が入っているくらいだった。身体を見てみると無数の痕が残っていたのが気がかりだから、考えてもわからないのだから仕方がない。


一人考え事をしながら森の中を歩いていると、ようやく森の中を抜けたようで爽やかな風が吹き抜ける自然豊かな景色が広がった。


「やはり、どこだかわからないです。」


森を抜ければ見知った場所に出て、記憶が戻るのではないかと期待していたアストリアにとっては淡い期待も無駄に終わり途方に暮れていると、アストリアはふと視界の端に人らしき姿を見つけた。


(私の事、知ってるかもです。話しかけて、みましょう。)


舗装された道の端にある木の木陰で休む二人に声かけてみることにした。

近づいていくと、木陰で休んでいた二人が近づく気配に気づき、警戒した面構えで顔を上げた。


二人の老夫婦は目の前にいる少女が人間とは思えなかった。このような場所に少女が一人でいるとは思えなかったからである。


「お嬢さん、こんな所で何故一人でいるのかな?」


年老いてはいるが、若かりし頃は端正な顔立ちだっただろうと推測できる老人は尋ねた。


「…あ、私、わからないです、ここも、自分も、なにも…」


アストリアは吃りながらも答えた。


「そうか…思い出せないのかな?」


アストリアの汚れた服装が所々破れていたりしている事、身体中に傷痕が残っていることを確認して、奴隷が逃げ出したのだと思ったが、首には枷もなければ、手首の痕もない。彼女の状態を見て考え事をしていた時、少女が話し始めた。


「私、なにも思い出せないです。思い出そうとする、頭痛くなります…。」


戸惑っている少女が、何やら虐待を受けたか、それとも奴隷で逃げ出したかはともかく。記憶を失って、目の前にいることは確かだと老夫は思えた。


「こんな子が一人なんて可哀想だわ。私たちの家に連れて行ってはどうかしら?」

「そんな…大丈夫だろうか…」


老いた婦人の提案に驚いた老夫ではあったが、確かに放っておくことはできないと思ったのだ。


「お嬢さんさえよければ、私たちの家に来てみるかい?」


アストリアにとって右も左も分からない状況では、何事にも変えがたいほど、ありがたい言葉だった。


「迷惑、かけるます…が…良いの、ですか」

「ははは!大丈夫だよっ。安心しなさい。」


木陰でピクニックをしていたという老夫婦は笑って歓迎し、アストリアを馬車へと導いた。


「ありがとう、ござうます…」


戸惑っていたアストリアは、馬車のゆっくりとした揺れと、老夫婦の和かな笑顔に安心したのか、うとうとと眠気を覚えはじめる。


「眠いのかい?ゆっくり眠るといい。着いたら起こしてあげるからね。」

「ありが、とう…ござ…い…」


アストリアは感謝の言葉も言い終わらぬまま、意識を手放した。


物語が始まりました!慣れないことばかりですが、温かい目で見守ってくだされば!

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