83話 変ニャ般ニャおんニャ
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普通に寝坊して9時更新に間に合わなかった(ヽ''ω`)
すみませぬ(ヽ''ω`)
明日も投稿予定です(`・ω・´)
「ニャハハハハハハハ! 上手くいったのニャ!」
木や茂みに隠れながら山を登ること数分。まさに山のてっぺんと言える場所に、奇妙な二人組が立っているのを視認した。
片方は全身を黒いローブで覆っており、フードから覗く顔には道化師の様な仮面をつけている。身長は2メートルに近く、ガッチリとした体つきをしていることから、おそらく男だろう。
もう片方は江戸時代の町娘のような雰囲気だ。躑躅色で質素な和服を着ており、顔には般若のお面を被っている。体型はいわゆるボンキュッボンというヤツで、こっちは見るからに女性だろう。この女性の方が、さっきから聞こえる謎の高笑いをしているらしい。
「あの女は声がデカいな。ひとまず、ここで様子を見よう」
俺の言葉に無言で頷くロリーズ。道中で「緊急以外では喋らないように」と言いつけたことを、律儀に守ってくれているようだ。リアンちゃんなんか、両手で口を塞いでいる。かわいい。
そうして耳を澄ませていると……。
「首尾はどうだ?」
「ウチのスキル『誘寄の遠吠え』で、ここら一帯の魔物は集めてやったのニャ! まだまだどんどん集めてやるニャ!」
「魔物を集めるのが目的ではない。分かっているのか?」
微かにだが、連中の会話を聞くことができた。スキル『誘寄の遠吠え』……完全にあのニャンニャンうるさい般若女が原因じゃないか。聞いてもいないのにボロボロ喋ってくれてありがたいが、なんだか拍子抜けな気分だ。
しかし、こいつらはモンスターを集めて何をするつもりなんだ?
「ニャハハハハハ! もちろん分かってるのニャ!」
山中に響き渡るくらいの大声で笑った般若女は、そんな俺の疑問に答えるかのように、一泊の間を置いてから言葉を続けた。
「あの『パプリコ村』とかいう村を潰せばいいんニャろ?」
先ほどまでのバカ笑いが嘘だったかのように、無感情な声で淡々と喋る般若女。
俺は殺気の混じったその声を聞き、あまりの恐ろしさに声が漏れそうになったのを、手で口を抑えて無理矢理に止めた。後ろを振り返ると、ロリーズも俺と同じように手で口を抑えている。どうにかみんなも声を出さずに済んだようだ。
アホっぽい雰囲気で忘れていたが、今ので完全に確信した。アイツこそ『はじまりの山』に入ってから感じていた強いプレッシャーの原因。
クイーンビーベア以上の存在だ。
「忘れていなければそれでいい。――の種子が芽吹く前に、全て刈り取らなければならない。――様が――る前に、我々で――しなければ」
「分かってるのニャ」
闇に溶けていくように姿を消していく黒いローブの男。最後に何かを言っていたが、この距離では虫食いのように、ところどころ聞くことができなかった。重要そうなことを言っていただけに、かなり悔しい。
「まったく……ウチが新参者だからってエラぶりやがって、ムカつくのニャ!」
男が消えた虚空に向かって悪態をつき、「シュッ!シュッ!」と言いながらシャドーボクシングしている般若女。どうやらさっきの男とは仲が良くないらしい。
ヤツらがどういうグループなのか分からないが、どこでも新参と古参の争いってのはあるんだな。関係ないが、何とも言えない三下感だ。実は強いのはローブの男の方だった可能性が微粒子レベルで存在している?
「明日の作戦を成功させて、ニャフンと言わせてやるのニャ!」
明日の作戦……さっきの話から推測するに、モンスターの集団で『パプリコ村』を襲わせるというものだろう。しかし、これでヤツらの目的は分かった。家康たちにさっきの話を連携すれば、おそらくアルヒド王国軍も動いてくれるはずだ。
あと問題なのは……。
「ポチがいないの……」
小声でボソリと呟いて、肩を落とすリアンちゃん。般若女の護衛なのか、山頂の方にはモンスター達の姿がチラホラと確認できた。何匹かワオルフも見えたが、探しているポチの姿はないらしい。
般若女が他のモンスターをどこに集めているのか分からないため、山頂にいなければひとまず探すことは難しいだろう。あの般若女に見つかってしまえば、さすがに現状プレイヤーで最高レベルの俺であっても苦戦は必至だ。ってか、たぶん死ぬよね。
「あの般若女と一緒にいるとは限らないしな。ひとまず、調査は打ち切って村に戻ろう」
ここにいれば、ヤツにいつ見つかるとも知れない。せっかく証拠を見つけたのに、ここで死んでは元も子もないのだ。
リアンちゃんの手を引いてモミジとミカエル嬢に視線を飛ばす。二人もよく状況を理解できているようで、何も言わずに首を縦に振ってくれた。
そうしてソロリソロリと退散しようとした瞬間――。
――俺達の行く手を遮るように、巨大な異形の怪物が立ちはだかった。
「な、なんだコイツ!?」
「晴明、こやつはマズイのじゃ! きっと、こやつもクイーンビーベアより……ッ!」
その異形の怪物は、ワオルフの顔と胴体にサーベルベアの手足を付け、背中には身体よりも大きな鳥の翼を生やしている。さらに3股に分かれた尻尾は凶悪な大蛇になっており、それぞれが鎌首をもたげてこちらを威嚇していた。
ファンタジーゲームでは定番とも言える、さまざまな生物の融合体……それは……。
「ニャハハハハハハハ! どうニャ、ウチが作った『ビーストキメラ』は? かっこいいニャろ!?」
いつのまにか俺達の近くまで移動していた般若女が、楽しそうに声を弾ませながら問いかけてきた。どういうシステムか分からないが、付けている般若のお面も顔を歪めて不気味に笑っている。
しかし、ここまで近づかれているのに気配を感じなかったぞ。さっきまではギリギリ見えるくらいの位置にいたというのに。アホっぽい雰囲気とは裏腹に、やはり相当の手練れじゃないか!?
咄嗟のことで俺達が反応できずにいると、不快そうに般若女は言葉をつづけた。
「ウチが気づいていないとでも思ったかニャ? あの鈍感性悪下級悪魔は気づいてなかったっぽいけど、ウチは獣なのニャ」
そう言いながら般若女が右手を横に突き出すと、光の粒子が手の周囲に集まっていき、やがて白い三味線を形作った。その白い三味線の棹を両手で掴み、大きく振り上げて……。
「ウマそうな人間の匂いが、ずっ――とプンプンしてたのニャ!」
まるでハンマーでも扱うかのように、胴の部分を思い切り叩きつけてきた。
「――っぶねぇ!?」
立ち尽くすリアンちゃんを咄嗟に抱きかかえ、俺は横っ飛びに緊急回避する。華奢な姿からは想像できないほどに力強く、その動きは素早い。地面にできた小型のクレーターを見て、体がガクガクと震えた。まるで最初に美女モミジと対峙した時の様な感覚だ。
モミジもミカエル嬢を担いで回避できたようで、離れたところで『幼刀 くまてつ』を構えているのが見えた。俺はミカエル嬢まで気を回せなかったが、やっぱ頼りになるパートナーだね。
「意外にすばしっこいニャ。めんどくさいニャ」
そんな俺達の様子を見て、三味線を気だるげに肩に担ぎ、ハァと大きな溜息を吐く般若女。どこからどう見ても隙だらけだが、その身体から発しているプレッシャーは変わっていない。俺達が気を抜けば、すぐに身体が地面とオトモダチになるだろう。
「さっきからニャンニャンうるせえ! お前は何者だ、変な般若女!」
「ニャニャ!? 変ニャ般ニャおんニャ!?」
ガビーンと自分で言いながら大袈裟に驚く般若女。どうにもコミカルで気が抜ける。なんだよ「変ニャ般ニャおんニャ」って。早口言葉かな?
しばらくショックで石化していた般若女だったが、フルフルと首を振って石化を解除。それから両手を腰に当てて意外に豊満な胸を大きく張り、無駄に偉ぶった態度と声で高笑いをしながら、大声で名乗りを上げた。
「ニャハハハハハハハ! ウチは魔王軍アドイルシオン東部攻略部隊の魔獣将軍、ネコガミの『オオジン』様なのニャ! 」
まさかの魔王軍の将軍だった!?
「ニャハ! ニャハハハ! ニャハハハハハオエッ! ゲホッ! ゲホッ!」
高笑いのし過ぎで咳き込み始めた魔獣将軍オオジン。どこからどうみても家康とどっこいどっこいのバカにしか見えないが、放つプレッシャーは後ろのビーストキメラ以上だ。伊達に将軍と名乗っているわけではないらしい。
「……メインストーリーをガン無視してるってのに、こんなところでボス戦かよ」
「ビーストキメラだけでもマズイのに、ぶがわるいのじゃ」
俺達の退路を塞ぐように、依然として山の下り道にはビーストキメラが待ち構えている。今のところ俺達に襲い掛かる雰囲気は感じないが、逃げようとすればすぐにペロリだろう。
前門の変な般若女、後門のビーストキメラ。
字面はシュールだが、まさに絶体絶命である。これでは家康たちに連絡している暇もない。
「ビーストキメラ! こいつらを皆殺しニャ!」
どうしようかと迷っていると、オオジンがビーストキメラに指示を出し、それを聞いたビーストキメラが俺達に向けて威嚇を始めた。
ワオルフの牙、サーベルベアの爪、尻尾の大蛇……どれを食らっても大ダメージは確実だろう。とくに普通の村人であるリアンちゃんなんか、どんな攻撃でも致命傷になる。
「どうにかして、リアンちゃんだけでも逃がさないと――ってリアンちゃん!?」
なぜか俺の腕の中から抜け出し、ビーストキメラに近づいていこうとするリアンちゃん。俺が声をかけたことにも気付いていないようで、どこかいつもと様子が違う。そういえば、さっきからリアンちゃんの目はビーストキメラに釘付けだった。
「リアンちゃん! 危ないから近づいちゃダメだ!」
俺が手を引いて戻るように促すも、強い力で振り払おうとしてくるリアンちゃん。
「……チなの」
「え……?」
ビーストキメラを凝視していたリアンちゃんだが、手を離さない俺に苛立ったのか、何かを呟きながら俺の方へと振り向いた。その目には、大粒の涙がたまっている。
ダムが決壊するかのように、たまっていた涙が一斉に頬を伝っていき、そして今まで聞いたことがない大声でリアンちゃんは叫んだ。
「――あのこ、ポチなの!」




