82話 安倍晴明探検隊『はじまりの山に木霊する遠吠えの主を追え!!』
月明りを頼りにして、恐ろしいまでに静かな山道を歩いて行く。『王都 アルヒド』から『パプリコ村』に向かう街道でもそうだったが、まるで生物の気配がなかった。
しかし、この山には確実に何かがいることを俺達は確信している。
「……晴明、このプレッシャーはクイーンビーベアいじょうかもしれないのじゃ」
「ああ、俺もそう思っていたところだ」
後ろを歩くモミジに、周囲を警戒しつ答える。さすが同じ死線を潜り抜けてきた式神だ。考えていることは同じらしい。
子系子の提案によって、アルヒド王国軍へと救援を頼みにいく家康くんチームと、『はじまりの山』の調査にいく晴明くんチームに分かれた俺達。
我々晴明くんチームは、先頭が引率の先生である俺。その後ろにモミジ、ミカエル嬢、そしてリアンちゃんが続く……一見すれば、幼稚園の遠足みたいなパーティーだ。
しかし、ほのぼのしたそのパーティーとは不釣り合いなほど、いまは危険に満ち溢れた『はじまりの山』へと調査にきているのだった。見た目は遠足でも、気分は川●浩探検隊。
謎の遠吠えが響くという『はじまりの山』の奥地には、一体何があるのか?
その謎を解明するため、我々調査隊は『はじまりの山』の奥地へと向かった――。
「ゲーム、イベント戦、みたいデス」
俺が特別狙撃隊SW●Tの『反逆のテ●マ』を脳内再生していると、ミカエル嬢がポツリと呟いた。ほう、なかなかに面白い視点だ。
たしかに、ゲームでよくある『イベント戦でボスと出会うまで雑魚モンスターが出てこない』というシチュエーションに似ているかもしれない。
「ポチ……ぜったいみつけるの……!」
その後ろで足を震わせながらも、握り拳を作って必死に俺達の後を付いてくるリアンちゃん。
ただでさえ高レベルモンスターの巣である『はじまりの山』という、とても危険な場所に来ているというのに、その上でこの強大なプレッシャーだ。この山の危険さを本能で感じ取っているはずだが、それでも前へと進むことをやめないリアンちゃんがとても眩しく見えた。
「リアンちゃんは、俺達が絶対に守るからな」
「うむ、安心するのじゃ」
「まかせるデス」
「ありがとう、おにいちゃん、モミジちゃん。それにミカエルちゃん」
俺達の励ましの言葉を聞き、少しだけ顔をほころばせるリアンちゃん。NPCであるリアンちゃんは、死んでしまえば生き返ることもない。これはリアンちゃんを元気づけるだけではなく、俺達の決意表明でもあるのだ。
それにしても、リアンちゃんはよく俺達に懐いているよな。俺達に向ける表情は、本当の家族に向けるような親愛のこもったものだ。
よくよく考えてみると、まだ出会って1日も経っていないんだよね……。
【ロリコン……年齢設定『ロリータ』の異性キャラクター5人以上との親密度が一定以上かつ、年齢設定『ロリータ』以外の異性キャラクターとの親密度が一定以下で取得。この称号を保持している場合、年齢設定『ロリータ』の異性キャラクターとの会話に補正小】
こんな称号を持っていたことを思い出す。称号にセットする必要はなく、保持しているだけでロリータとの会話に補正がかかるという神称号だ。
もしかして、リアンちゃんがすぐに仲良くなったのは、この称号があるからなんだろうか。俺達がこのクエストに選ばれたのは、この称号があるからなんだろうか。
このAFOは現実に近いとはいえ、ゲームだということは理解している。リアンちゃんもそのゲームに登場するキャラクターのひとりだ。
つまり、ゲームのシステムが適用されるということになる。この称号の影響も受けるだろう。それはゲームなんだから、とても自然なことのはず。
……自然なはずだけれど、俺はなんだか、ちょっぴりと寂しい気持ちになった。
「晴明」
そんなどうしようもないことを考えながら歩いていると、いつのまにか横に並んでいたモミジが、ふいに俺の手を握って名前を呼んだ。
「晴明。わらわたちは、晴明がすきだから、すきなのじゃ」
もう一度名前を呼び、曇りのないルビーのような瞳で真っすぐと見つめながらそう言って、モミジは繋いでいる手をニギニギとしてくる。
モミジの『すき』という言葉に、俺は心の内側からほぐされていくような、そんな心地よい感覚を覚えた。今回は独り言も出ていなかったはずなのに、どうして考えていることが分かったんだろう。
珍しく声に出さなかった証拠に、ミカエル嬢とリアンちゃんは訳が分からずに首を傾げている。双子のようにシンクロする姿は、それまた微笑ましく、つい頬が緩んでしまった。
「『カミからのつかい』じゃなくても、わらわたちは、晴明のことをすきになっていたのじゃ」
柔らかく包みこむようでありつつ、しっかりと芯の通った言葉で、まっすぐと俺に言葉を投げかけてくるモミジ。こんなに真正面から言われてしまうと、相手が幼女とは言え、さすがに照れてしまう。
「なんだか、俺が子供みたいだな」
「晴明はまだまだおこちゃまなのじゃ」
そう言って笑うモミジは、見た目こそ変わっていないものの、初めて会った時よりもなんだか大人びて見えた。式神もやはり成長していくのだろうか。
「すぐにバインバインになるのじゃ!」
「それは楽しみだ」
そういう意味じゃなかったんだけどな。もちろん、モミジも分かっていて冗談を言ったのだろう。こうやって空気を読んで気を遣うところなんかも、本当に成長している。
俺も……少しは成長できているんだろうか。
「……ありがとな、モミジ。これからもよろしく頼むぜパートナー!」
「もちろんなのじゃ! うむ、いいかおになったのじゃ!」
お返しとばかりに綺麗な黒髪を撫でてやると、モミジは猫のように目を細めて、俺の手を受け入れている。こんな仕草は相も変わらず、年相応でかわいらしいんだよな。そして相変わらず、撫で心地のいい髪だ……ふわふわ……。
そうして俺とモミジがイチャイチャしていた時――。
「ニャハハハハハハハ!」
どこからか犬でも狼でもない遠吠え……でもなく、謎の高笑いが聞こえてきた。距離があるため正確には分からないが、おそらくは女性の声だろう。甲高い笑い声が、断続的に『はじまりの山』に木霊している。
「……遠吠えの主か?」
「わからぬが、ほかにアテもないのじゃ」
遠吠えではないし、ユニークモンスターにしては、どうにもアホらしい高笑いだが……モミジが言うように他に当てもない。とりあえず、この高笑いの主を探ってみるしかないか。
「あっちからきこえるの!」
やまびこで方向感覚が狂っていたが、リアンちゃんは耳がいいのか方向が分かったらしい。迷いのない表情で、まっすぐと山頂の方を指さしている。
「もしかしたらモンスターが集まっているかもしれない……慎重に行くぞ」
「わかったのじゃ!」
「うん!」
俺のかけ声に反応し、大きく手を挙げて返事をするモミジとリアンちゃん。ミカエル嬢は相変わらず無言だが、どこか真面目な表情で、コクリと頷いているのが見えた。安倍晴明探検隊もなかなかまとまりが出てきた気がする。
真実を突き止めるためには、例え地の果てまでも追いかける。それが、探検隊に課せられた使命だ。
「今までの登山は序章に過ぎない。ここからが本当の闘いの始まりだ。ユニークモンスターの事前情報は何一つない。しかし、1パーセントでも可能性がある限り、我々は決して諦めない!」
「おにいちゃん、なにをいってるの?」
「いつものビョーキだから、きにしなくてよいのじゃ」
探検隊は、闇夜を切り裂き驀進する!
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次回は土曜日に投稿予定です(`・ω・´)




