79話 お母さんはユニークモンスター!?
「まったくこの子は! 急にいなくなるんだから!」
「あいたっ! ご、ごめんなさい……」
恰幅のいい女性――リアンちゃんの母親らしい――にゲンコツを落とされ、涙目になるリアンちゃん。リアン母の言葉から察するに、どうやら何も言わずにアルヒドまで行っていたようだ。そりゃ心配して当然だよね。
「ポチはモンスターじゃからのぅ」
「なるほど、探しに行くとは言えないか」
実物を見ていないが、おそらくポチはワオルフという狼型の魔物だろう。リアンちゃんの話を聞く限り害は無そうだが、魔物を村の中で飼えるはずもない。だからこそ、何も言わずに一人でアルヒドまで行ったのだろう。
「ポチ……? アンタ、まだあの魔物を!」
「ポチいいこだもん!」
俺達の声が聞こえてしまったようで、ポチという名前を聞いたリアン母がヒートアップしてしまった。ううん、これではまるで話が進まないな。
「ちょっといいか?」
「なんだい、アンタ達は?」
俺が声をかけると、リアン母は不審者をみるような目つきで睨んできた。5歳くらいの娘と一緒にいる鎧姿の怪しい男……現実世界なら即座に警察を呼ばれる事案かもしれない。まったく世知辛い世の中だぜ。
「リアンちゃんの友達だ」
「なのじゃ!」
「……」
「友達、ねぇ……」
犯罪者を見る目付きにグレードアップして俺を睨んだあと、元気よく答えたモミジを見て表情を柔らかく変え、さらに俺の後ろで隠れているミカエル嬢を見てまた怪訝な顔つきになるリアン母。
しばらく腕を組んで俺達を眺めていたが、やがてウンウンと大きく頷き、少しだけ嬉しそうにリアンちゃんの頭を撫でた。
「まったく、もう勝手に出ていくんじゃないよ」
「……うん!」
この『パプリコ村』は人口が50人くらいの、とても小さな村らしい。このリアン母の反応をみるに、もしかしたらリアンちゃんは友達がいなかったのかもしれない。俺はなんだか目頭が熱くなった。
あまりにも友達ができないと、友達なんて生き物は都市伝説だと考え始め、「友達よりツチノコの方がまだ見つけられるんじゃね?」みたいな思考になってツチノコ探索したりするよな。分かる、分かるよリアンちゃん。
「この男は何をブツブツ言ってるんだい?」
「ビョーキみたいなものだから、きにしなくていいのじゃ」
誰が病気やねん。何度も言うが、健康診断ではオールAを出し続ける、鉄の体と精神を持つ男だぞ!
「そんなことより、最近この村で変わったことはないか?」
「なんだい藪から棒に。変わったことって言われてもねぇ」
変な方向に話が進みそうだったため、無理矢理に予定していた聞き込み調査へとシフト。しかし、俺の質問を聞いても、リアン母はいまいちピンときていないようだ。
しばらく腕を組んでウンウンと唸った後、なんとも曖昧な表情で言葉をつづけた。
「『家畜が外に出るのを怖がる』って話を聞いたくらいかねぇ。あの煙突のある家が村長の家だから、詳しいことを聞きたきゃ、そっちで聞いておくれ」
「わかった。ありがとう」
関係あるのかは分からないが、ヒントみたいなものをゲットした。他にあてもないことだし、村長の家でもっと詳しい話を聞いてみるか。
「よし、村長の家に行くぞ」
「わかったのじゃ!」
「うん!」
「……」
俺の呼びかけに元気よく答えるモミジとリアンちゃん。ミカエル嬢は相変わらず無言でコクリと頷くだけで、何を考えているのか分からない。一応は伝わっているようだから、コミュニケーションは取れていると信じたい。
「あー、リアンちゃんは家で待ってていいんだぞ? 聞き込みの後には村の外に出ていくから、さすがに危ないだろうし」
ジョブにもついていない普通の子供であるリアンちゃんを危険に晒すわけにもいかない。そう思って声をかけるも、リアンちゃんは首をフルフルと振った後、強い意思のこもった目で俺を真っ直ぐ見つめ返してきた。
「おにいちゃん、ポチわかる? あたしなら、みればすぐわかる」
「……たしかに分からないな」
俺達はポチの特徴を聞いただけだ。ポチが本当にワオルフだった場合、普通のワオルフとポチを見分けることなどできないだろう。「実はいま倒したのがポチでした! クエストは失敗です!」なんてことだってあり得るのだ。そんなことになれば目も当てられない。
しかし、本人はよくても保護者が――。
「いいよ、行ってきな。ただし、キチンと帰ってくるんだよ!」
「……うん」
「村の中には入れちゃだめだからね」
「うん!」
絶対に反対すると思ったが、意外とすんなり送り出してくれた。ポチのことも完全にではないが、飼うことを許したようにも聞こえる。
「いいのか?」
「もちろん心配だけどね。でも……アンタ達なら、なんとなく娘を預けてもいいかなって思うんだ。女の勘ってヤツだね」
どこに信用される要素があったのか分からないが、これも『神からの遣い』だからだろうか。
でも、信用には答えないとな。絶対にポチを見つけ出して、リアンちゃんを無事に村まで送り届けよう。目指せハッピーエンド。
そして好感度を高めて、「リアン、おにいちゃんとけっこんするの」と言わせるのだ! 目指せトゥルーエンド!
「あくまで保護者として預けるだけだよ。リアンに手を出したら殺すからね」
「ウ、ウッス!」
俺の邪な感情を読み取ったのか、刃物のような鋭い目つきで俺を睨みつつ、忠告してくるリアン母。
これが普通の村人の出す殺気だってのか……ケルベロスやクイーンビーベアにと引けを取らないプレッシャーだぜ……!? まさか、リアン母はユニークモンスター!?
「なにバカなことをいっておるのじゃ」
「本当に大丈夫なのかねぇ……リアン、やっぱりお母さんとお留守番しないかい?」
冗談を言っただけだもん。そんなにドン引きしなくてもいいじゃない。
「よ――し、みんなで張り切って村長さんのところに行くぞ――!」
「ごまかすのがヘタじゃのぅ……」
溜め息混じりで呟くモミジの声を背中で受け流しつつ、俺は村で唯一の煙突がたっている家に向かって歩いていくのだった。
ブックマークが2100件を突破しました!
応援してくださって本当にありがとうございます(;人;)
小説を書くモチベーションになるので、ぜひぜひ[ブックマークに追加]と、↓↓にある★★★★★から評価をよろしくお願いしますm(__)m
次回は土曜日に投稿予定です(`・ω・´)




