78話 イッツ・ア・スモールコケコッコー
ゴトゴトと小石を踏みつけながら、石畳で舗装された道を馬車が走っていく。
舗装された道とは言っても、メンテナンスをまともにされていないようで、何もないよりはマシという程度のモノだ。
大きめの石に乗り上げる度に硬い椅子の上で身体がバウンドして、お尻がそろそろ限界を迎えそうである。
「ゆれるのじゃ~」
「おにいちゃん、だいじょうぶ?」
俺の右膝の上でアトラクション気分のモミジと、左膝の上で腕に抱きつきながら、上目遣いで俺の心配をしてくれるリアンちゃん。いつのまにか俺を『おにいちゃん』と呼び始めている。かわいい。
「『両手にロリで最高だぜ』って顔してますね、安倍ロリコンさま」
「どんな顔やねん」
そんな俺の姿を対面からジト目で見つつ、言葉の刃で切り裂く子系子と、その隣でボーっと何を考えているのか分からないミカエル嬢。
俺達はいま、リアンちゃんの家がある『パプリコ村』へと向かう馬車の中にいた。乗っているのは、アルヒドで借りた安いレンタル馬車だ。そこまで大きな馬車ではないものの、かなりゆったりとくつろいでいたりする。
なぜなら俺達のパーティーは、和服のじゃロリ・軍師系鶏ロリ・純朴村娘ロリ・金髪天使ロリの4ロリ。そしてイケメン陰陽師戦士とおまけに脳筋戦士という、パーティーの過半数がロリータの異色な構成だからだ。
しかも、数少ない男枠である脳筋戦士は……。
「人間五十年~下天の内をくらぶれば~」
外の御者台で敦盛を大声で歌っている。いや「お前は織田信長じゃなくて徳川家康だろう」とツッコミたくて仕方ないが、ツッコんだところでめんどくさくなるだけだからスルーだ。
そんなわけで、馬車の中は俺以外の全員がロリータという、超絶ロリロリ空間が出来上がっていた。これが本当の夢の国……年間パスポートはどこで買えるのかな?
「いますぐパーティーを解散しましょう。こんな変態と仲間だなんて思われたくありません」
イッツ・ア・スモールコケコッコーが不機嫌そうに眉をしかめた。夢の国のキャストはもっと笑顔じゃないとダメだぞ!
ちなみに、アルヒドを出る前にパーティー登録を済ませている。家康と子系子なら信用できるし、陰陽師であることをバラしてしまってもいいかと思った俺は、覚悟とちょっぴりの期待を持ってパーティー申請をしたわけだが……。
『ハッハッハッ! 戦士じゃなかったのか! 安倍晴明は面白いな!』
『さすがに気づきます。見たことのない魔法を使ったり、モミジちゃんが急に転移したり……むしろ隠せてると思っていたのですか?』
という、なんともつまらない反応が返ってきたのみであった。それから陰陽師についての追及は特に無く、すぐに馬車を借りて出発となったのだ。
俺的には楽なんだけど、ここまで何もないとそれはそれで複雑な心境です。もっと「チートや! チーターやんそんなん!」みたいな反応があるかと思ったのに!
「あとどれくらいで着くのでしょうか?」
「えっと、あるひどは3じかんくらいでついたの!」
さっきのことを思い出し、子系子に恨みのこもった視線を向けるが、完全にスルーしてリアンちゃんと話しはじめている。そんな子系子の問いに、しっかりと答えるリアンちゃん。拳を握って一生懸命に答える姿がとてもかわいい。
よくできましたと撫でると、俺にもたれかかり、目を瞑って気持ちよさそうにしている。イエスロリータ・イエスタッチ。同意の上だから大丈夫ですよね、おまわりさん。
「であれば、もうそろそろ到着しそうですね」
ついでにモミジも撫で始めた俺をジト目で見つつ、顎に手を当てて考え込んでいる子系子。その姿は幼女ながら、頼りになる軍師の風格が漂っている。これぞギャップ萌え。
「どうした? なにか気になることでもあるのか?」
「そうですね……なにか違和感を感じませんか?」
子系子はそう言いながら、真剣な顔で窓の外へと視線を移す。俺もつられて窓の外を眺めてみるが、なにもおかしいことは無い、和やかな平原が遥か彼方まで続いているのみである。
「……平和な現実世界で、のんきにピクニックしているわけではないのですよ?」
あからさまに大きな溜息を吐き、やれやれといった表情で肩をすくめる子系子。なんと腹の立つ仕草だ。実際に問題なんて起こってないじゃないか。
「ふむ……モンスターのしゅーげきがない、ということかのぅ?」
「そうです。晴明さまや家康さまという高レベルのプレイヤーがいるとはいえ、この3時間で一度もエンカウントしないというのは異常です」
なるほど……『はじまりの町』から『王都 アルヒド』に向かっている時も襲撃が無かったため、俺も感覚が麻痺してしまっていたが、確かに『RPGゲームのフィールドで一度も魔物とエンカウントしない』って考えるとおかしい。
その結果、前回はユニークモンスターが出てくるなんてことが起こったわけだ。
「確かここら辺はワオルフの生息地だよな? 昨日のケルベロス戦で狩り尽くしたんじゃないか?」
「AFOはリアル準拠な部分が多いとはいえ、それでもゲームです。モンスターは一定時間でリポップする仕様になっています」
たしかに『はじまりの町』周辺でフットラット狩りをしていた時も、倒して数分で光の粒子が集まり、リポップする場面を目撃している。そうなると、尚更おかしいじゃないか。
「今回は前回より戦力も少ない。またユニークモンスターが出てくるなんてことにならなければいいのですが……」
「おい鶏幼女、変なフラグを立てるんじゃないよ」
これではユニークモンスターが出てくる流れになっちゃうじゃないか。
「子系子はオーガーだろ? 予言みたいなことはできないのかよ?」
俺と似てレアジョブについているわけだし、強力な魔法とかスキルがあるはず。未来予知みたいなスキルを持ってたりするかもしれない。
「オーガーは確かにレアジョブですが、そこまで強力なスキルを持ったジョブでもないのです。ステータスやマップ情報の閲覧を主な役割とする、特殊な支援職といった感じですね」
なんだ……数秒先を読んで相手の攻撃を紙一重で全部回避するみたいな超カッコイイ技は使えないのか……。
「占い師が前線に立つという発想がそもそもおかしいです……」
たしかに。この華奢な子系子が、最前線でインファイトしている姿とか全く想像つかない。スライムにも負けそうだもんな。
「さすがにスライムには勝ちました! この水晶玉で撲殺してやりましたよ!」
そう言いながら頭ほどある水晶玉を両手で掲げる子系子。武器だとは思っていたが、絶対に使い方を間違ってるよね。お願いだからニヤニヤしながら振りかぶるのやめてください。
「しかし、ミカエル嬢の『天使』って種族にも驚いたな。これこそ激レアじゃないか」
「そうですね。プレイヤーがキャラクター作成で選択できるのは『人間族』、『長耳族』、『短足族』の3種族ですから」
「……」
パーティーを組んだ時に一番驚いたことが、ミカエル嬢の『種族』だ。それまでは特殊なジョブだったり、特殊な防具でも装備しているのかと思っていたが……まさか種族が『天使』になっているとは予想外だった。
しかし、これについて深く聞こうとすると……。
「ひみつデス」
と言って視線をそらし、コミュ障レベルがアップしてしまうのだ。ものすごく気になるところだが、あまり人の秘密を探るのもよろしくない。俺だって秘密にしていることは多いしね。
「しかし、私とミカエルさまは直接的な戦力にカウントできませんね」
子系子の言う通り、オーガーである子系子は戦えないし、天使のミカエル嬢に至ってはこんなステータスだ。
---ステータス---
名 前:ミカエル
レベル:8
種 族:天使
職 業:天使
H P:58
S P:30
M P:480
攻撃力:0
守備力:0
魔攻力:390
魔守力:511
敏 捷:72
器 用:0
運命力:920
スキル:なし
魔 法:ヒール
ハイヒール
デトキス
-----------
【ヒール……光属性の力で対象のHPを小回復】
【ハイヒール……光属性の力で対象のHPを中回復】
【デトキス……光属性の力で対象の毒・麻痺・混乱を解除する】
なんと潔いステータスだろうか。攻撃力も防御力も0で武器や防具の装備も不可。魔法攻撃力は高いものの、現状は覚えている魔法も存在しないため、回復役として立ち回る以外の選択肢が用意されていない。
俺の膝の上で小首を傾げているリアンちゃんはもちろん戦闘に参加しないし、このパーティーで戦えるのは俺とモミジと家康だけということだ。
「この道中でパーティー戦闘を試しておきたかったのですが……」
個人戦闘とパーティー戦闘では大きく勝手が違う。数の力で戦えるパーティーは強力だが、連携が上手く取れなければ足の引っ張り合いになることだってある。ロブハンで某大明神を何度殺そうと思ったか分からないレベルだ。
味方は敵、これネットゲームの鉄則ね。
「村が見えてきたぞ!」
外から家康の大声が聞こえてきた。どうやら目的地である、『パプリコ村』に到着するらしい。
「けっきょく、モンスターはおそってこなかったのじゃ」
「はい……ひとまず、無駄な戦闘がなくてラッキーだったと思いましょう」
「そうだな」
なんともモヤモヤするが、出てこないものは仕方がない。わざわざモンスターを探しに行くなんてバカなことをする意味もないしな。
質素な装備で暇そうに立っている門番の横を通り、俺達は馬車のままパプリコ村へと入っていくのであった。
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