67話 モグモグタイム
「いやあ、酷い目に遭ったぜ」
「じごーじとくなのじゃ」
ファンキーロイヤルジジイとの謁見が終わり、首に賞金をかけられかけながらも、なんとかアルヒド城を脱出することができた。とはいえ、追っ手が無かったことから見ても、おそらく指名手配うんぬんは冗談だった可能性が高い。
まあコッチにはジジイキラーがいるし、何かあれば助けてもらえばいいだろう。
「まったく晴明はしょうがないのじゃ」
溜息をつきながらも、慈愛に満ちたクリクリおめめで俺を見つめるモミジ。ますますロリ母性が強まっている。ばぶばぶ。
アルヒド城を脱出した俺達が向かっているのは、この王都アルヒドにあるという『冒険者ギルド アルヒド王国本部』だ。このアルヒドという街は、先ほど脱出した城を中心とした貴族街、その外の平民街、さらに外の職人街といったように、壁で明確に居住地が区切られている。
そして冒険者ギルドがあるのは職人街……つまり街の一番外側である。城から一番遠い場所。なんだこの不便過ぎる立地は。
ワープするような便利機能も存在しないため、俺とモミジはテクテクと歩きながら、ついでにアルヒド観光と洒落こんでいるところであった。
「ヘーミンガイはにぎやかなのじゃ!」
「貴族街は無駄にデカイ家だけで、特に面白いものもなかったもんな~」
閑散とした道を歩くのは、高そうな服を身に纏ったご婦人や、高そうな服を身に纏った小型犬。無駄に広い庭と、無駄にデカい門を警備する兵士……とにかく同じような光景ばかりの貴族街を抜けて、ようやく平民街に辿り着いたのがつい先ほど。
静かだった貴族街とは打って変わって、平民街はとても活気に満ち溢れていた。あちらこちらで客の呼び込みが立っており、隣の店に客を取られまいと大声で叫びあっている。
俺達が歩いているこの通りは、どうやらレストラン街のような場所らしく、美味しそうな匂いがそこら中から漂ってきた。
AFOは空腹システムがないため、バフが欲しいとき以外に食事は必要ないのだが……。
「こんなに……モグモグ……イイ匂いがしちゃうんじゃあな!」
「モグモグ、たべるしかモグ、ないモグのじゃ!」
いつのまにか、モグモグタイムに突入していた!
腹が減っては戦はできぬ。
いや、腹も減っていないし、戦に行くワケでもないが……なんてたってAFOの食事は美味しいのだ。熱心に客引きをしていたお姉さんの営業トークに負けて、こじんまりとした食堂に入り、今はおまかせで出てきたステーキを頬張っているところである。
「えいぎょうトークではなく、おっぱいにまけていたのじゃ」
気のせいです。
俺達を呼び込んだお姉さんは、そのままウェイトレスにクラスチェンジしていた。たったいまステーキを持ってきたのも、そのエクストリーム姉ちゃんだ。「ありがとね!」とお礼を言いつつ、エプロンを大きく押し上げるその大きなお胸と、ズボンをパッツンパッツンに張らせている大きなお尻を揺らして客引きへと戻っていった。
むしろありがとうございます!
エクストリーム姉ちゃんが運んできたステーキは、手作り感が満載の不格好な鉄板に乗っており、軽く見積もっても500グラムはくだらない。現実では注文することを躊躇するレベルのボリューム感だ。
だけど……。
「ゲームの中なら食える! モグモグモグモグ」
いくら食べてもお腹いっぱいにならないんだよね。しかも美味しさはファーストコンタクトから変わらず、ガツンと肉の旨みを味覚に訴えてくるだ。これは現実の料理が味気なく感じる人が出るなんて噂も、あながち嘘じゃないかもしれない。
オニオンソースのかかった肉をフォークでぶっ刺して、そのまま思い切りかぶりつく。少し噛み千切るのに苦労するが、噛めば噛むほど肉汁とオニオンソースが絡んでいき、口の中で濃厚な肉汁ジュースを作り上げた。それをゴクリと飲み込めば、あら大変! 奥底からパワーが漲ってくるような、不思議な満足感と幸福感が全身に広がるのだ。
「むむむっ!」
「もう食べ終わった……だと……!?」
気づいた頃には、俺とモミジの鉄板の上で取り残されたオニオンソースがしょんぼりしているのみ。俺達は夢中で貪り続け、ものの数分で平らげてしまっていたのだった。
モミジは、あの小さな体のどこにステーキが入っているんだろう……幼女ってミステリー……。
「うまかったな」
「うまかったのじゃ~」
腹をさすりながら呟く陰陽師と式神。テキトーに入った店の割に、かなり満足のいく料理であった。この世界には、こんなに美味しい物がゴロゴロと転がっているのか。ちょっと落ち着いたら食べ歩きツアーとかしてみようかな。
「そういえば、晴明!」
「ん? どうした?」
食べ歩きツアー計画を安倍晴明脳内国会で決議していると、モミジが子供用に高く作られた椅子から身を乗り出し、キラキラとした笑顔で俺に声をかけてきた。
「あのたたかいで、レベルアップしたきがするのじゃ!」
「ああ、そういえば俺もレベルアップのファンファーレが鳴ってたな」
ワオルフを大量に倒した時、それにケルベロスを倒した時にレベルアップしていた気がする。それどころじゃなくて後回しにしていたが、ここで確認しておこう。
「ステータス!」
---ステータス---
名 前:安倍晴明
レベル:19
種 族:人間族(天風人)
職 業:陰陽師
H P:284(+22)
S P:172(+10)
M P:396(+2)
攻撃力:225(+24)
守備力:198(+54)
魔攻力:268(+4)
魔守力:257(+15)
敏 捷:142(+6)
器 用:151(+2)
運命力:291(+4)
スキル:式神召喚(不可)
式神契約(1/1)
魔 法:青龍の印 風刃
朱雀の印 燐火
朱雀の印 火雨
玄武の印 水泡
白虎の印 回光
白虎の印 瑞光
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やっぱりレベル19になっている!
もうすぐでプレイヤー未踏のレベル20……これは燃えてきたぞ!
そしてレベル18に到達したことで、中級魔法を1つ習得できるようになっていた。初級魔法を強力にした魔法と、中級から追加されたユニークな魔法……いろいろ種類があって迷うところだが……。
【朱雀の印 火立……敵全体の頭上から火の雨を降らせて中ダメージを与える】
やっぱりコレかな! マキビさんが使っていた『紅雨』に続くと思われる、『火雨』のツリーを進めていくべきでしょう!
なんてったってマキビさんが使っていた『紅雨』がカッコよすぎて、最初に習得する魔法を『火雨』にしたんだからね。なんだかんだ『火雨』には助けられてばかりいるし、俺にとってかなり縁起のいい魔法だ。これを選ばない手はない。
ステータスも後衛職っぽさが浮き彫りになりつつあるが、あとは防具を新調してカバーしよう。俺はあくまで、『陰陽師戦士』なのだから。
「さて、モミジのステータスは……」
---ステータス---
名 前:モミジ
レベル:14
種 族:コオニ
H P:86(+10)
S P:95
M P:348(+60)
攻撃力:112(+45)
守備力:89(+45)
魔攻力:321(+65)
魔守力:328(+65)
敏 捷:193(+20)
器 用:265(+35)
運命力:90
スキル:???
魔 法:鬼化粧
鬼酒
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やはり俺よりもレベルが上がりづらいようだが、それでもレベルが1つ上がっている。
モミジのステータスは、もう完璧な後衛職だな。その割には攻撃魔法を覚えていないし、刀でザクザク斬ってる印象しかないのが悲しいところ。初級には攻撃魔法が存在しないため、中級で攻撃魔法があればいいのだが……。
「どうなのじゃ!?」
「ああ、俺もモミジも強くなってたよ」
「そうか! これで、アンタイというやつなのじゃ!」
何が安泰なのかは分からないが、強くなったのは良いことだ。モミジもレベル15になれば、新しく中級魔法を覚えられるかもしれない。これはレベル上げが楽しみになってきたぞ。
「つよくなって、なんかムズムズするのじゃ」
急に内股で足を擦りあわせつつ、赤い顔で呟くモミジ。なぜか幼女とは思えないほど、艶めかしい表情をしている。
きっと童貞ならば、ここでデリカシーのないセクハラ発言をするところだろう。しかし、紳士である俺は違う。
「トイレならあそこだぞ」
女性がソワソワしながら顔を赤くするのは、お花を摘みに行きたい時。そうホットドッ●プレスにも書いてあった。
どうだい、この完璧な対応は? 今度から俺のことは、安倍・ジェントルマン・晴明って呼んでいいのよ?
「まったくちがうのじゃ。はあ……晴明はでりかしぃがないのじゃ……」
まったく違ったらしい。ホット●ッグプレスのウソツキ!
「もういいのじゃ。それより、そろそろいくのじゃ」
「そうだな。腹ごしらえもしたし、アルヒドウォークを再開しますかね」
俺達は席を立ち、ポンポンとお腹を叩きながら店の外へ出ていった。お会計は注文時に済ませてある。しめて300ゴールド……とってもリーズナブル!
また今度、ステーキを食べに来よう。ついでにエクストリーム姉ちゃんを拝みにこよう。あわよくばデートにも誘ってみよう。もっとあわよくば大人の関係に……。
そんなことを考えつつ、エクストリーム姉ちゃんの「またきてね!」という声を背中に受けながら、俺達は冒険者ギルドへの歩みを再開したのであった。
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