表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/98

64話 勝鬨は主人公があげるものだと思っていた時期が俺にもありました


「家康、目眩ましって結局どうするつもりだ!?」


 先導して走る家康の背中に問いかけると、こちらをチラリと見てから自陣満々に答えた。


「簡単に言えば、砂をかける!」


「めちゃくちゃ古典的だった!?」


 まさか砂をかけるとは……。


 確かに砂は目潰しの効果が高いけど、目を(つむ)られたら効果はない。そもそも目が合計で6つもあるし、アレに目潰しは難しい気がするんだが……。


「細工は流流(りゅうりゅう)仕上げを御覧(ごろう)じろというヤツだ! まあ見ていろッ!」


 そういいながらスピードを上げ、ケルベロスへと一直線に突っ込んでいく脳筋。槍を構えて真っすぐ特攻していく姿は猪の如し。まさに猪突猛進だ。不安しかない。


 そのまま家康はグングンとスピード上げていき、ケルベロスの攻撃がギリギリ届かない距離で急停止する。


三葉(さんよう)流槍術 (さん)()……」


 (おもむろ)に地面へ槍を突き刺すと――。


「――葉蘭(はらん)!」


 思い切り掘り起こすように、ケルベロスに向けて槍を振りぬいた。


 『葉蘭』とは、楕円形で巨大な葉を地表に立てる常緑(じょうりょく)多年草(たねんそう)だ。密な群落を作る特徴があり、大柄な葉が立ち並ぶような風景が作られることが多い。


 家康が使った技は、地面から群れて生えたその葉蘭を模す様に、突き入れた槍で砂を巻き上げるモノのようだ。テキトーに槍を刺して振ったようにしか見えないが、まるで粘土で成形したように、一枚一枚の葉が綺麗に作り上げられている。


 『砂をかける』と言っていたのは、砂で目潰しをするのではなく、砂を壁にして視界を(さえぎ)ることだったようだ。


 しかし、これでは……。


「俺達の目眩ましにもなってない!?」


「ハッハッハッ! 細かいことは気にするな!」


 砂で作られた葉蘭の群生は優に3メートルを超しており、確かにケルベロスの視界を遮っているが、俺達からもケルベロスが見えないほどに育ってしまっている。これではコッチもケルベロスも条件が変わらないじゃないか。


「後は各々(おのおの)の実力で切り開くのだ! オレが一番槍を貰うぞ! ハッハッハッ!」


 高笑いをあげながら、砂の森へと消えていく家康。なんで家康なのに特攻してるんだアイツは。鳴くまで待とうケルベロス。


「というか、一人で突っ込まないでいただけます!?」


 慌てて俺も砂の葉をかき分けていくと……。


「むぅ……」


 石突(いしづき)を地面にドンと突き立てて、(うな)る家康がいた。なぜかケルベロスの姿が見当たらない。


 さすがに逃げたとは思えないが……。


「……まさか、ステルスモードか?」


「そのようだ!」


 完全に裏目に出ちゃってるじゃないですか――! ヤダ――――!


 自信満々に胸を張っている家康に、ほんのちょっぴり、ビッグバンほどの殺意を覚えた。ケルベロスより先にコイツを()っておいた方がいいかもしれない。主に俺の精神衛生的に。


「どうする! 安倍晴明!」


「いや、ここで人任せかい」


 どうすると言われても、ここまでグッチャグチャにされてしまうと……いくら海老迷(えびまよ)で鍛えたとは言え、なかなかパターンを読むのも難しい。


 さすがに油断していたな。そりゃ変化前に使えていた技なんだから、変化後も使えない方がおかしいというものだ。


 ここからは、かなりアドリブが必要に……。


「……ん?」


 ひとまず周りを見渡していると、遠くで子系子がぴょんぴょん跳ねながら何かを叫んでいるのが見えた。その顔はとても焦っており、口の形から推測するに……「し・む・ら・う・し・ろ」。


 俺はシムラじゃないんだけど。


 ん? うしろ?


「ほわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 後ろから殺気を感じ、全力で緊急回避を実行!


 すぐに大きな風切り音がお尻の方から聞こえてきた。危なかったぜ。あと数秒遅ければ、ケツが真っ二つになっていたところだ。


「チクショウ! 人のケツばっか狙いやがって!」


 毒づいてみるも、またもやケルベロスはフッと姿を消してしまう。あのケツベロスめ!


「ってか家康くぅん!? 近くにいたんだから教えてくれてもよくなぁい!?」


 石突で太●の達人を始めている家康に文句を言うが、当の本人は「なにを言っているんだ?」みたいな呆れ顔をしている。無性に殴りたくなる顔だ。


「先ほど消えているケルベロスを切り捨てたではないか! 今回は完全に姿が見えたし、安倍晴明ならば気づいていると思ったぞ!」


「なに? 姿が見えた?」


「うむ! 急に、パッとな!」


 どういうことだ? せっかく姿が見えないというアドバンテージがあるのに、なぜわざわざステルスを解除する?


 消えたまま攻撃した方が確実だろうに。


「……いや、もしかして」


 ヤツのステルス能力は……攻撃行動を取った時に自動解除されてしまうのではないか?


 それなら辻褄(つじつま)が合う。最初に家康を後ろからザックリいってた時も、遠目だが攻撃する時には姿が見えていた。俺とサシで勝負していた時は、攻撃行動に移る前に潰していた可能性が高い。



 つまり、ヤツのステルスは完璧ではない!



 それさえ分かれば、あとは対策するだけだ。家康と二人で背中合わせになって、死角を消すのが手っ取り早いが……。


「家康くぅん、チミ、なかなかイイ装備してるじゃなぁい?」


「む? ハッハッハッ! そうだろう、そうだろう! 最近新調したのだ!」


 家康の装備は鋼シリーズ。少し(すす)汚れているが、布でちょっと磨けばイイ感じになりそうだ。


 俺は家康の装備する高級そうなマントで、その鋼の鎧……特に胸当て部分をゴシゴシと磨く。さすがに鏡とまではいかないが、ぼんやりと風景を反射するくらいにはピッカピカになった。これで準備はオーケーだ。


「よし、家康! いつも通り、偉そうに胸を張って立ってろ!」


「ハッハッハッ! オレは偉そうなのではなく、偉いのだ!」


 よく分からない返事をしながら、言われた通り偉そうに胸を張る家康。めんどくさいヤツだが、扱いやすくて助かるぜ。あ、高笑いはし続けなくていいよ。うるさくて集中力が切れるからソレ。


 言ってもやめない高笑いを聞き流しつつ、俺は意識を集中した。集中する先は、家康のピッカピカに磨かれた胸当てだ。俺の推測が正しければ……。


 ふと、家康の鎧に映る俺の後ろに、大きな黒い影が差す。


「――反射で丸見えぇッ!」


 俺は振り返りながら、迫る爪を盾で受け流す。見えなければ必殺の一撃も、見えていれば防ぐのは簡単だ。


 もちろん、防ぐだけで終わらせるはずもない!


「家康ッ!」


「ハッハッハッ! よく分からんが、大大大チャンスだな!」


 ケルベロスの真ん中の首……キングワオルフの首を、思い切り振りぬいた剣で飛ばしながら、家康に合図を送る。何の説明も無しに実行したが、家康はデカイ図体の割に瞬発力が高いらしく、このチャンスを見逃すまいと一気に攻勢へと転じてくれた。


「我が最強の一撃、その身に受けるがいい! ★パワードスピア★」


 家康が魔法を唱えると、手に持った大きな槍が赤いオーラに包まれていく。そして妨害しようとするケルベロスの爪を紙一重で避けつつ、槍を使って大きく跳躍した。


 そのまま空中で何度か回転した後……。


「三葉流槍術……二ノ葉、葉月(はづき)


 最大限に遠心力をつけた槍の柄を、ケルベロスの右首の付け根へと叩きつけた!


 勢いよく振るわれた槍の柄は、ケルベロスの首を叩き潰すようにめり込んでいき、そのまま首の骨を叩き折って首を胴体から抉り取る。


 これで、ケルベロスの首はあと1つ!


「グッ……! やっぱ間に合わないかッ!」


 このまま俺が左の首まで落としてやろうと思った矢先、『回光』の効果時間が切れてしまい、ステータスがダウンする。


 そしてほぼ同時のタイミングで、『鬼化粧』の効果も切れてしまったようだ。身体中に貼られていたテープが剥がされるような感触と共に、(あか)い葉が身体から離れていき、恐ろしい鬼の姿は元の人間の姿へと戻っていた。


万事休(ばんじきゅう)す……」


 バフ効果が完全に無くなった今の俺では、ケルベロスにダメージを与えることはできないだろう。首を飛ばすなんて(もっ)ての(ほか)だ。


 切り飛ばしたケルベロスの真ん中の首……キングワオルフの切り離された首が、地面に落ちながらニヤリと勝ち誇ったような笑みを浮かべた。



 ここまで追い詰めたというのに……。



 このままでは切り落とした首もすぐに復活し、ケルベロスは俺達に反撃するだろう……。



 あと一歩が足りない……。



 俺は……俺達は……負けてしまうのか……?



 ………………………………。



「なんちゃって」


 俺がそう呟いた瞬間、キングワオルフのニヤケ面が固まった。


 逆に俺がニヤリと笑ってやる。まったく状況を説明していないが、なんとなく心の深い部分で繋がっている感覚がある。きっと彼女なら上手くやってくれるはずだ。


「――顕現! そして★白虎の印 瑞光★」


 ステータスを素早く操作し、『モミジ』を選択して『顕現』させる。


 いつかみた召喚陣が、ケルベロスの右首の上に出現。それから色とりどりの小さな光が四方八方から集まり、粘土細工のように混ざり合って、色や形を複雑に変えながら『モミジ』を形作っていく。


 そして――――。


「まったく、晴明はしょうがないのじゃ」


 召喚陣から出現したモミジが、俺の魔法で形作られた白虎をその身に吸収して――――。


「やあ――――――ッ!」


 必殺の一撃をケルベロスの左首へと叩きこんだ。


 定規で引いたような一本線が、ケルベロスの残された左首の付け根に入り、やがて滑り台を滑るみたいにズレ落ちていく。


 そうして最後の首が地面に重たい音と共に落ちた後……ケルベロスの体が、崩れ落ちた。


 体の端から光の粒子となり、ハラハラと風に乗って面積を減らしていくケルベロス。地面に転がったキングワオルフの首、その瞳が、どこか勝利を称えているようにも感じた。


 数秒後……ついに、ケルベロスの体が完全に光の粒子となって消えていった。


「…………」


 世界から音が消えたと錯覚するような静寂。


「よっしゃあ! 俺達の――」


「オレ達の完全勝利である! 勝鬨(かちどき)をあげろぉぉぉぉぉおおおおお!」


 俺の勝利宣言を遮りやがった家康の雄叫び。その大音量にも負けない声が、戦場全体からドカンと響き渡った。


「「「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!」」」


 こうして俺達は……ユニークモンスターとの戦いに勝利したのだ。


 最後まで油断できない……一歩でも間違っていれば、勝者と敗者が逆になっていたかもしれない……改めて思い返せば、そんなギリギリの戦いだった。


 しかし、俺達は勝ったのだ。防御陣地のみんなを、守り抜くことができたのだ。


 体育座りでモミジに頭をナデナデされながら、俺は勝利を噛みしめるのだった。





 一方、ケルベロスが討伐される少し前。馬車前方の戦場。



「暇だなぁ……お嬢もちょっとくらい、コッチにワオルフを回してくれていいんですがねぇ」


「オイラはこのままでいいんだなぁ。戦うのは疲れるんだなぁ」


「ヤク! ソウ!」


「はらのむしがおさまらないのじゃ~~!」


「しっかし、お嬢はつえぇなぁ」


「このままワオルフを殲滅しそうなんだなぁ」


「ヤクソ! ウ!」


「む? よびもどされそうなのじゃ。サンゾク、あとはまかせたのじゃ」


「はい? 急になんで――アレェ!? お嬢が消えたんですけどォ!?」


「ひえぇ! マズイんだなぁ! ワオルフがオイラ達にロックを変えたんだなぁ!」


「ヤクソ!? ウ! ヤクソウ!」


「『喋れないけど人間に友好的な怪物ゴッコ』してんじゃねえよ! って危ねぇ!?」


「死ぬんだなぁ! 兄貴、助けて欲しいんだなぁ!」


「ヤク……ソ……ウ……」


「チ、チクショ――――! こんなところで死んでたまるか―――ッ!」


 モミジが突然消えてしまい、サンゾック達が再び大ピンチに陥っていた……。



やっとケルベロス戦及び拠点防御戦は終了!

第二章もあと数話で完結します(`・ω・´)


ブックマーク1500件を突破しました~!!

応援してくださって本当にありがとうございます(;人;)


小説を書くモチベーションになるので、ぜひぜひ[ブックマークに追加]と、↓↓にある★★★★★から評価をよろしくお願いしますm(__)m


投稿が遅くなってすみませんでした(´;ω;`)

明日も投稿予定です!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ