63話 折り紙でパックンチョは誰でも作れるだろ!
「家康! 大丈夫なのか!」
「うむ! 回復魔法でHPは全回復したぞ! ホラ、安倍晴明の盾だ!」
邪魔をされて怒るケルベロスの攻撃を躱しつつ、地面にぶっ刺さった盾を回収し、俺の元へと逃げてくる家康。
俺は鉄の盾を受け取り、改めて家康を観察する。防具はボロボロのままだが、確かにいつも通りバカ元気そうだ。
「オレも戦うぞ、安倍晴明! さすがに3対1では分が悪いだろう!」
「確かにキツいけど……レベル17で、バフまでかけた俺でもキツいんだぞ?」
家康は他のメンバーよりレベルが高いとはいえ、それでもケルベロスと戦えるレベルではない。だからこそ、今までも戦いに参加していなかったはずだ。
「こう見えて、オレは器用だからな!」
すごい自信満々に胸を張っているが、疑いの目を向けざるを得ない。どう見ても脳筋だし、脳筋だし、脳筋だ。折り紙で鶴を折れるレベルで器用とか抜かしているんじゃなかろうな?
「まあ、見ているがいい! 実力で証明してみせよう!」
「そこまで言うなら、いいけど……さッ!」
俺と家康が悠長に話していると、見かねたケルベロスが飛び掛かってきた。仲間外れにされて寂しかったのかな? かわいいワンちゃんだ。
俺と家康はそれぞれ逆の方向に飛んで、この体当たりを回避する。
「よし、俺達で倒すぞ! 死ぬなよ、家康!」
「ハッハッハッ! こちらのセリフだ、安倍晴明!」
確かに俺の方が死にそうだ。
家康が参戦したとはいえ、依然としてケルベロスは俺をロックオン。もちろん攻撃も全て俺に向けて放たれている。3つも顔があるんだから、1つくらい家康を見たっていいのに!
「うわ――! 調子乗ってごめんなさい――! 100億倍とかウソつきました――! せめて50億倍くらいです――!」
俺の謝罪を受けて、ケルベロスの攻撃が更に激しさを増した。どうしてだろう?
執拗に俺を攻撃してくる爪や牙を必死に避けつつ、どうにか頭では打開策を探っていく。
左首を切り落としても再生……この再生能力は無限なのか、全ての首が同じ再生能力を持っているのか、再生前後で能力は変わるのかなどなど、できれば一つ一つ検証していきたいところだが……。
「そんな暇ないよね――ッ!?」
危ねぇ! 咄嗟にしゃがんだからよかったが、頭の上を地獄の鎌が通り過ぎていったぞ! あの爪の殺意は高すぎるだろう!
「ハッハッハッ! オレの槍だって殺意は負けておらんぞ!」
ケルベロスの後ろに回り込み、体重をのせた槍をケツにぶち込む家康。
ええ……マジかよ……。
「ようやくオレを見たな!」
そりゃ見るだろう……躊躇なくケツに槍をぶちこむキチ●イなんだから……。
しかし、その家康の一撃のおかげで、右首のロックが俺から外れた。これで少しやりやすくなる。
こういったボスでパッと思い付くのは、大きく3パターンの仕様だ。まず、何度も再生するけどHPは決まっているパターン。真ん中の首が本体で、真ん中さえ倒せば勝利するパターン。
そして一番厄介なのが……3つの首を全て倒さなければいけないパターン。あの再生能力を考えると、それもほぼ同時に倒す必要があるだろう。一番厄介だが、それだけに一番確率が高い気がする。
ひとまず一番手っ取り早く確かめられる、真ん中の首が本体パターンを確かめてみたいが……。
「ハッハッハッ! コイツさっきよりも強くなっているぞ! 助けてくれ!」
「見てりゃ分かったはずだよねぇ!? 器用じゃなかったのかよ!?」
どうやら悠長に作戦を練り、検証している場合でもなさそうだ。自らに迫る爪をギリギリで躱しながら、偉そうに助けろと叫ぶ家康……なんなんだアイツは。
「ハッハッハッ! 折り紙でパックンチョを作れるくらいには器用だぞ!」
パックンチョって……鶴より簡単じゃないか!
「何が器用だ! この脳筋め!」
「ハッハッハッ! 褒め言葉だ! それより早く助けてくれ!」
『実力で証明してみせよう』とか言っていたくせに、とんだ足手纏いだった!
「チクショウ! 俺もMPがカツカツなのに! ★朱雀の印 火雨★!」
ケルベロスの頭上に火の雨を降らせ、怯んでいる隙に家康と合流して距離を取った。家康の鋼の鎧は、攻撃を受けてさらにボロボロになっており、もはや上裸と変わらないレベルにまでなっている。ここまで攻撃食らってコイツもよく生きてるな。
『火雨』を食らったケルベロスは、また『火雨』が撃たれることを警戒しているのか、コチラを見つつも近づいてくる気配はない。
「大将が無策で突っ込むんじゃないよ!」
「ハッハッハッ! 考えるより行動するのがオレの信念だ! 考えることは他のヤツがやる!」
一度も会ったことないが、本多正信さんの苦労が垣間見えた。コイツの軍師なんてやったら、半日で円形脱毛症になりそうだぜ。お疲れ様です、本多正信さん。この世界に育毛剤ってアイテムあるかな?
「……家康、ヤツの攻略だが」
俺がケルベロスについて考えていたことを説明すると、家康はフンフンと頷きながら聞き……。
「とにかく首を取ればいいのだな!」
とてもザックリと理解していただいた。間違っていないが、俺の懇切丁寧な説明が全く意味を成していない。説明に使った労力と時間を返して欲しい。あと助けるために使った分のMPを回復するポーションも。
「……まあいいや。1本でもいい、あの首を家康は倒せるか?」
俺がそう聞くと、家康は自分の胸をドンと叩いて、これまた自信満々に答える。
「任せるがいい! 『パワードスピア』を使えば、可能だろう! 効果時間が短いから、チャンスは一度だがな!」
「ふむ」
『パワードスピア』というのは、ウォーリアが覚える魔法だったはずだ。俺一人ですべての首を同時に倒すのは不可能だし、1本でも分担できるならかなり心強い。まあ、自己申告だから実際に倒せるかどうか知らないけど……。
ここは家康を信じよう。これで俺が1本、家康が1本……あと1本は……。
――よし、準備完了。説明をまるでしていないが、きっと上手くやってくれるだろう。アイツこそ器用だからな。
もう俺の『回光』の効果時間が切れかかっている。素のステータスじゃ勝ち目はないし、家康の『パワードスピア』も一度きり。つまり、ぶっつけ本番の一発勝負だ。この一発ですべての首を倒すしかない。
「俺は真ん中をやる」
「ならば、オレは右首だ!」
担当も決まった。あとはヤツに近づいて、全ての首を同時に倒すだけ。失敗すれば俺と家康はもれなく死亡して、リーダーと鉄砲玉を失った防御陣地も崩壊してしまうだろう。
まさに防御陣地すべてをベットする大博打。
負ければNPCのみんなが……なによりエイミーさんが……あの柔らかい感触が、失われてしまう! まだちゃんと堪能していないのに!
「安倍晴明! 目眩ましにちょうどいい技がある! 後に続くがいい! オレが道を切り開いてやろう!」
俺が決意を新たにしていると、家康が槍を振り回しながら言った。ウォーリアの家康がどうやって目眩ましをするのか分からないが、冗談を言っているようにも見えない。
それに家康が「俺の後についてこい」というと、不思議と安心感を覚える自分がいたりする。コイツなら何かやってくれそうな、そんな期待感が高まるのだ。どうみてもバカなのに、妙なカリスマを持っている男だぜ。
「――分かった。それじゃあ、俺の合図で一気に突っ込むぞ」
「うむ!」
ひとつ、俺は大きく深呼吸をする。
まったくAFOはトラブルばかりだ。クイーンビーベアといい、このケルベロスといい……質の悪いところが、毎回のように大事な人の命がかかっていること。人の命がかかった戦いなんて、現実じゃそうそう味わうこともないだろう。
しかし、こうして『守りたい』なんて思う存在ができたのも、『守る』力を得たのも……トラブルばかりのAFOのおかげだ。こんな気持ちになることだって、現実じゃそうそう味わうこともないだろう。
だからこそ――――。
「絶対に負けるわけにはいかねぇだろ! よっしゃあ、行くぞ家康!」
「承知だ! そもオレが負けるものか! ハッハッハッ!」
2人で大きく叫びながら、俺達を堂々と待ち受けるケルベロスへと走り寄っていく。周りではプレイヤーとNPCが声を揃えて応援している声が聞こえた。この瞬間、防御陣地は一つになっていた。
勝てばユニークモンスターの討伐。
負ければ防御陣地の全滅。
チャンスは一度限りの大勝負にして大博打。
――俺と家康のすべてを賭けた、乾坤一擲のラストアタックが決行されたのだ。
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2020/09/03追記 すみません(T_T) 投稿は土曜日になりそうです(T_T)




