61話 寝起きドッキリ大成功~~!
「さすがに子分犬とは違って、魔法一発で蜂の巣にはならないか」
俺の『火雨』をその身に受けたキングワオルフは、いきなり布団を引っぺがされた寝坊助のように飛び起き、やけに甲高い鳴き声をあげてキョロキョロと周りを見回している。人間みたいな反応がとてもシュール。
やはり攻撃は通っているようだ。通っていないのであれば、あそこまで気にするワケないもんね。
「寝起きドッキリ大成功~~!」
朱雀の印で空中に『ドッキリ』という炎文字を書いてやると、意味は分からずとも犯人が俺だと理解したようで、牙を剥き出しにして強い怒りをぶつけてきた。ちなみに、『朱雀の印 ドッキリ』なんて魔法は発動しなかった。ちょっと残念。
「さて、防御力マイナスでボス戦か……」
我ながら狂ってるよね、これ。攻撃が掠っただけでも大ダメージだし、当たり所が悪ければ一発KOもあり得る。しかし――。
「当たらなければどうということもない」
怒りそのままに、まっすぐ俺に向かって飛び掛かってくるキングワオルフを躱しながら、俺は不敵な笑みを浮かべてみる。
人生で一度は言ってみたいセリフのトップ10には必ず入るこのセリフ。まさかこんなところで言うことになるとは!
遠くの方から「あれ言いたいだけですよね」とかヤジが飛んで来るが、その通りです!
その後も闘牛のようにヒラリヒラリと躱していると、キングワオルフは焦れてきたらしい。風景に溶けていくように、体の端から透明になって消えていく。さっきも使っていたステルスモードだ。
あの巨体がすっかり消えてしまい、どういう原理か足跡も残らない。息遣いや強烈な獣臭もしないため、どうやら五感の内で触感以外はアテにならないらしい。
普通に考えれば、一発でも食らったらダメなこの状況で、さらに見えない敵となると大ピンチのはずだが……。
「だけど、俺ってば見えない敵と戦うの慣れてるのよね~」
原因はもちろん、廃人プレイをかましていたロブハンだ。あのゲームのロブスターに、海老迷というヤツがいる。美味しそうな名前とは裏腹に、ロブハンでも屈指のクソ敵として有名であり、その要因こそがまさに『見えない』ことなのである。
海老迷とは見えない海老の集合体だ。コイツの討伐クエストは、迷路のようなマップに数十体の見えない海老が配置されており、全てを殺し尽くさなければ討伐完了とはならないクソ仕様となっている。
当然のように運営へ抗議メールが殺到し、「勢いで作っちゃいました。でも報酬もウマくないし、やりこみ要素ってことで許してちょ」って感じの謝罪メッセージ(?)がホームページに掲載されるなど、物議を醸しまくったロブスターでもある。
結局は修正されることもないまま、ロブハンでも屈指のクソ敵として君臨し続けたこの海老迷。コイツを初めて討伐したパーティーこそが――。
「俺達なんだよなぁ!」
振り向きざまに、鉄の剣で大きく遠心力をつけて薙ぎ払う。「キャン!」という甲高い鳴き声とともに、何かを斬った手応えを感じた。
攻撃を受けてステルスモードが解除されたキングワオルフが、大きく後ろに飛んで俺との距離を離す。その顔は、人間の俺から見ても困惑しているのが分かるほどだった。
「消えて後ろからってのは、さすがにテンプレが過ぎるぜ」
その攻撃で不屈のアルベルトが何度床を舐めたことか。100を過ぎた頃から、俺は段々と見えない敵の思考回路が分かるようになってきていた。次にコイツが取る行動は――。
「もっかい、後ろだろう!」
さっきのはマグレだと思って、もう一回同じように後ろから攻撃してくる。今までの敵はそれだけで殺すことができたのだろう。まさに必殺技というヤツだ。だからこそ、勝利の記憶が行動を縛り、攻撃がワンパターンになる!
「ついでに! ★朱雀の印 火雨★!」
また距離を取るためにジャンプしたその着地点、そこを予測して火の雨を降らせる。キングワオルフはマトモに火雨を食らい、崩れるように膝を付いた。さすがにユニークモンスターとは言え、魔攻力マシマシの火雨を連続で食らえば、かなりのダメージだったらしい。
黒い毛はところどころが焦げてしまい、まるで野良犬のようにボロボロだ。ヤツの目から戸惑いは消えておらず、どうして自分が追い詰められているのか理解できていないという顔をしている。
「今度はコッチのターン!」
俺は間を置かずにキングワオルフへと近づき、鉄の剣を振るった。相変わらず初心者の剣筋だが、「攻撃力マシマシだからとにかく当たればオッケー」という考えの元、とにかく振り回し続ける。
「――おっと!」
当然キングワオルフもやられるままではない。鎌のような形をした鋭い爪、それに大きな体での体当たりなど、なかなかに厄介な攻撃を繰り出してくる。俺はその攻撃を時に左手の盾で受け流し、時に地面を転がって避けるなどして、結果的には一方的にダメージを与え続けた。
数分経った頃には、ボロボロの野犬からゾンビ犬にランクダウン。ユニークモンスターにして、ワオルフ達の王は……見るも無残な姿になっていた。
「――お前、弱いな」
確かに消える能力は厄介だが、それだけである。
攻撃力や防御力ではクイーンビーベア以下、速さはコアトルビー以下、ウザさはダグラスのジジイ以下。はじまりの山での激戦を潜り抜けた俺にとって、コイツは脅威になり得ない。
俺の言葉を受けて、ギリギリと歯ぎしりをするキングワオルフ。人間の言葉は分からないはずだが、俺が馬鹿にしたことは伝わったらしい。これくらいの挑発でキレるとは、知能もジジイ以下だぜ。
「まぁ、弱い方がありがたいけど。さて、そろそろ終わりに――」
しようか、と続けようとした瞬間。
キングワオルフが、いままでで一番大きな雄叫びを上げた。
「ここにきて『なかまをよぶ』ってか」
キングワオルフが大きく雄叫びをあげた瞬間、防御陣地の周りで戦闘していたワオルフ達がなりふり構わずに突進し始め、その内の10匹がボロボロになりながらもキングワオルフの元に集ったのだ。
突然の事態に戸惑い、ひとまず防御を固めて観察していると……。
「なっ!?」
――キングワオルフが、10匹のワオルフ達を食らった。
正確に言えば、大きく開いたキングワオルフの口の中へと、ワオルフ達が自ら飛び込んでいったのだ。狂気の沙汰としか思えないが、状況的にどう考えてもパワーアップする気だろう。
「――させるかッ!」
特撮戦隊の変身時間を攻撃チャンスだと捉える、俺は超絶ひねくれ者!
剣を構えて走り寄り、その大きく開いた口に鉄の剣を捻じ込もうとした瞬間――――。
「――ッ!?」
爪先に全てのパワーを集中させ、慣性の法則に全力で逆らって、思い切り後ろへと身体を投げた。
遅れて左右の耳から聞こえてきたのは、『ガチン!』という何かが噛み合わさるような音。殺気を感じ、咄嗟に回避に専念して正解だった。あのまま進んでいれば、俺は何かに両側から食い千切られていただろう。
「……な、なんだアレ」
呟いたのは俺か、それとも周りで見ているプレイヤーか……それすらも判断できないほどに、俺は混乱の極みにあった。
なぜなら目の前にいるキングワオルフが……。
「ケル……ベロス……!?」
三つ首の怪物へと進化していたからだ。
おかげさまで、一週間近くジャンル別日間のトップ10前後にデ――ンと鎮座してます!!
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