50話 暴れん坊将軍
「晴明! ここにいたのじゃ!」
モミジ達が乗っている荷馬車に向かって歩いていると、前方からモミジがトテトテと走り寄ってきた。その後ろには、大柄なサンゾックよりも更に大きい筋肉達磨を連れている。
「オマエが安倍晴明ってヤツか! 探したぜ!」
2メートルを軽く超える身長に、一切の無駄なく洗練された筋肉美。その筋肉を覆うのは、鉄シリーズよりも上位の鋼シリーズ装備と、見るからに上等そうな赤いマントだ。所々に傷がついた鋼の鎧は、歴戦の戦士ということを証明している。
真っ赤な髪と髭がライオンの鬣のように生えており、ゴツゴツと彫りが深い顔には皺もない。年の頃は30代の半ばだろうか。
赤色のぶっとい睫毛の奥では、獰猛な肉食獣を思わせる鋭い瞳がキラリと光り、見つめられただけで竦み上がってしまいそうな威圧感を有している。
なにより、雄叫びのような大声で心臓が止まりそうになった。どうして俺を探していたんだろう。これからボリボリと食べられちゃうんだろうか。
「人間がどんな味なのかってのは興味深いがな! 今はそれどころではない! ワオルフの襲撃だ!」
「シューゲキなのじゃ!」
ナポレオンのように開いた右手を突き出し、マントを風に靡かせる大男。そしてそれを横で真似するモミジ。いけません! この人は真似しちゃいけない類の人間です!
「オマエも配置に就いてくれ!」
「配置って……何も聞いてないんだけど……?」
急に配置に就けと言われましても。山賊一味と遊んでいた俺も悪いが、そもそも配置の話なんてあったっけ。馬車の中で休憩しておいてくれとしか聞いてないんだが……。
「おお! そうであった! いまからオレが配置を伝えるのだ!」
「なめてんのか?」
「ハッハッハッ! どっちだっていいだろう! 魔物が来る前に配置に就いてればいいのだ!」
なんともテキトーなヤツだ。そして俺の背中をバンバン叩く力が強い。初対面なのにパーソナルスペースにズケズケと入りこんできやがって。まったく礼儀のなってない!
「テキトーさでは晴明もまけてないのじゃ。レーギのなさも」
うるさいですわよ、モミジさん。俺はとてつもなくフレンドリーなだけだ。
「ハッハッハッ! 安倍晴明が幼女の尻に敷かれているという噂は本当だったか!」
どこでそんな噂が出回っているんだよ。そしていちいち声がデカすぎる。今の「幼女の尻に敷かれている」というセリフが辺り一帯に広まって、更に噂が加速しちまってるじゃないか。
勘違いしないで欲しい! 俺は尻より胸派です!
「悪いな、これでも声は3割ほどに抑えているんだ! そしてオレもおっぱい派だぞ! 仲間だな!」
「うん、なにも嬉しくない共通点!」
なんなんだこのオッサンは! ってか誰なんだよ!
「おお! 自己紹介がまだだったな!」
たったいま気がつきましたとばかりに、掌を拳でポンと叩く大男。コメディのようなテンションに毒気が抜かれてしまう。
それから男は姿勢を正し、例のナポレオンポーズを取りながら、大声で堂々と名乗りを上げた。
「オレは『徳川家康』! クラン『チーム葵の紋』のクランマスターだ!」
……はい?
『徳川家康』と言えば、歴史上でも有名な人物だ。戦国時代を生き抜き、天下を統一した豊臣秀吉の亡き後、豊臣陣営を下して江戸幕府を開いた偉人である。
そんな歴史上の偉人をプレイヤーネームとして使うとか、コイツはもしかしなくても痛いヤツじゃないか?
「ハッハッハッ! 綺麗なブーメランを投げるじゃないか! オマエは日本統一党か!」
「クッ……そういえばそうだった!」
俺だって安倍晴明じゃないか……。
日本統一党と言えば、何かにつけて与党を批判するも、その発言が自分達にも刺さるという俗称『ブーメラン党』。
ブーメランの代名詞とは言え、センシティブな事を言うヤツだ。俺が日本統一党の支持者だったらどうする! まだ選挙権ないけどさ!
「細かいことは気にするな! ジャパニーズジョークってヤツだ!」
「やっぱり家康もテキトーなのじゃ」
プスッと言葉の針で刺されても意に介さず、モミジの頭を「コイツめ~!」とガシガシ撫でる家康。
馬鹿力で撫でられたモミジは、「グラグラするのじゃ~」と千鳥足になってしまっている。さすがは徳川家康を名乗る男だ、かなり神経が図太いぞ。
「話を戻すが、他にクランマスターをしているヤツもいなくてな! オレが迎撃の指揮を執ることになったのだ!」
確かにクランマスターを務めているならば、そこら辺のヤツよりリーダーシップはあるだろう。『チーム葵の紋』をそこまで知っているわけではないが、別ゲーでかなりのマンモスクランだったはず。
「配置は、人数が一番多い『公益社団法人日本ロリコン協会連盟』が右! 安倍晴明率いる山賊団は前! 『チーム葵の紋』が後! 余ったヤツは左だ!」
「メチャクチャざっくり!?」
「どうせ寄せ集めだ! こんなのマトモに指揮できるわけなかろう!」
いや、そりゃそうですけども……なんだか一気に心配になってきたぞ。コイツがリーダーで大丈夫なんだろうか。当の家康は、なぜか自信満々のドヤ顔をしている。
「もちろん作戦はあるぞ!」
「……一応は聞いておこう」
どうせロクな作戦じゃない。
「『ガンガンいこうぜ』だ!」
やっぱりね……。
「タイミングをあわせて、さいしょにマホーをぶつけるのはどうじゃ?」
「おお! モミジは頭がいいな! 採用だ!」
幼女に助言をもらうってどうなの……素直に受け入れるその姿勢は素晴らしいけどさ……。
「オレのクランには、軍師の『本多正信』がいるからな! 頭脳作業はいつも正信任せなのだ! 今日は仕事が忙しいため欠席している!」
「軍師がいないのかよ!?」
不安メーターが一気にグーンと上がったぞ! 脳みそが入っていない頭だけあっても意味ないだろう!
「さて、配置は分かったな! 情報共有はエリアチャットを使用する! 随時確認するんだぞ! サラバだ! ハッハッハッ――!」
ごまかすように捲し立て、大声で笑いながら去っていく家康。どこからどう見てもバカだが、豪快な男でなんだか憎めない。ある意味でカリスマがあるのかもしれないな。
「チャットか~」
チャットにはパーティチャット・クランチャット・エリアチャット・全体チャットが存在し、それぞれ別ウインドウで管理されている。
パーティーチャットとクランチャットは、同じパーティーまたはクランのメンバーのみ参加できるチャットだ。仲間内の雑談や情報共有で使うことになるだろう。
エリアチャットは、マップの同エリア内にいるプレイヤーが参加できるチャット。近くのプレイヤーへの救援要請や、今回のようなプレイヤー間の連携に使われる。
全体チャットは、掲示板があるためそこまで機能していないが、クランメンバーの募集や生産職の広告で使われていることが多い。あとは「ポーションくれ」とか乞食してるプレイヤーを見かけたくらいだ。
パーティーを組んでもいないし、クランにも入っていないことから、AFOでチャットは使ってこなかったが……やっぱりMMOと言えばこれだよな!
エリアチャットを確認しろと言っていたし、ひとまずどんな感じか見てみますかね。
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次回は木曜日投稿予定!!!!!




