表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/98

42話 夢のマイホームは遠い


「チ、チワッス……」


 討伐クエストに出かける前に、消耗品の補充と装備品の購入は必要不可欠。


 この前のこともあって、解毒草なんかの状態異常回復は使い切れないくらいに持っておきたいし、薬草やポーションも買わないと安心できない。


 何より鉄の盾と鎧と籠手が、クイーンビーベアの一撃によってボロボロになってしまった。テキトーな装備でもここら辺の魔物ごときに負けるとは思えないが、どんなイレギュラーが襲ってくるともしれない。準備をしておくにこしたことはないのだ。


「やっと顔を出したか、ガキ」


「いろいろあったんですよ……」


 ということで、いまは商業地区の一角に立つ『レナード商会』に来ていた。もちろん『レナードの紹介状』を有効活用するためだ。


【レナードの紹介状……レナード商会限定でアイテム購入時に3割引される紹介状】


 金欠であるこの序盤で、この3割引はかなりオイシイ。足元を見てきそうなレナードさんに見つからない内に買い物を済ませようと、そそくさと商会に侵入したわけだが……。


 商会に入った瞬間に目敏(めざと)いレナードさんに捕まり、こうして商会長が直々に接客してくれている。まったくもってありがたいことだね。帰りたい。


 相変わらずレナードさんは、完全にカタギではないヤーさんフェイスに雑草のような(ひげ)を蓄え、筋骨隆々の肉体にちょっぴり高そうな服を張りつけている。完全に出演作品を間違えてるよね。このゲームは龍が●くではありません。


「これ、使えますよね?」


「おう、もちろんだ」


 次の町からは定価で買うことになるだろうし、ここで買い溜めしてしまおう。ジジイから分捕った分とクイーンビーベアのドロップ、それにギルドの報酬を合わせて10000Gくらい持っている。


「あ、そうだ。これって防具とか武器に加工できます?」


 既製品を買う前に、一つ確認したいことがあったんだ。


 クイーンビーベアのドロップ品がいくつかあるので、これを装備に加工できればかなりの戦力アップを見込めるはずなんだが……。


「こ、これは……どこでこんなシロモノを手に入れたのか知らねえが、コイツは生半可な腕で扱える素材じゃねえな。この町……いや、この国で扱えるヤツはいねえだろう」


「やはり、難しいですか……」


 そう。素材のレア度が高すぎるのか、どうやら簡単に加工することはできそうにないのだ。ジジイも高レベルの鍛冶師だが、それでもこの素材は加工できないと言っていた。


「可能性があるとすれば帝都か……帝都でも無理なら、魔族に支配されちまったドワーフの国の職人クラスじゃねえと無理だろう。仮に売るっつわれても、値段も皆目見当つかねえや」


 小さい町とはいえ、そこそこに大きな商会のドンでもあるレナードさんでもそうなのだ。これはしばらくインベントリに置いておくしかないか……。


「分かりました。とりあえず、防具シリーズを見せてください」


「すまねえな。防具ならイイもんが揃ってるぜ!」


 ということで、防具の一覧を見せてもらったわけだけど……さすがに最初の町ということもあって、ぶっちゃけ品揃えは微妙だった。ジジイのところが充実しすぎていたのもあるが……。


「うぅん、鉄シリーズが一番上か……」


「なんだガキ、一丁前にウチの防具にケチをつけようってのか? ああ?」


「いやあ、とても素晴らしい防具ですね! 『鉄の盾』と『鉄の鎧』と『鉄の籠手』をください!」


 ちょっと近距離で凄むのはやめて欲しい。そのヤーさんフェイスで凄まれれば、小学生くらいならショック死しちゃうぞ。俺は大人だからチビるくらいで済んだけどね。


「おう、1750Gだな」


 元が2500Gだから750Gも得をしてしまった。次の町にいけばもうちょっと上のシリーズもあるはずだ。セット効果も付くことだし、今は鉄シリーズにしておこう。アイアムアイアンマーン。


「あ、これボロボロなんですけど、買い取ってもらえたりします?」


「こりゃまた……交通事故にでもあったのか?」


 ツキノワグマのパンチ力ですら1.5トンとか言われているし、似たようなものかもしれない。10メートルくらい吹き飛ばされたしな……。


 ここまでボッコボコに変形したこの装備では、防御力が全く上がらないのだ。持っていても仕方ないので、クイーンビーベアの一撃で粗大ゴミと化した鉄シリーズは処分してしまいたい。


「……普段はこんな廃品回収みたいなことはしねえんだが、鉄シリーズなら鋳潰(いつぶ)して再利用もできっからな。ガキが土下座して頼むなら買い取ってやってもいいぜ?」


「誰が土下座なんかするか。一昨日きやがれ反社会勢力の悪徳商人」


 男のプライドは鉄よりも硬い。そんなに簡単に曲げられるものではないのだ。


「買い取り価格も3割増ししといてやるぞ」


「この通りですお願いですから買い取ってください社長」


「……相変わらず、変わり身のはええヤツだなあ」


 少しでも高く売れるのならば、俺のプライドなんて何本でもポ●キー感覚でへし折ってやるぜ。この世は金がすべて。プライドでおまんまは食えないのだから。


「ま、こう見えて意外とガキは気に入ってるからよ。これくらいのサービスなら安いもんだぜ」


「えっ、キモッ」


「よし、引き取ってやるから3000G払え」


 アカン、あまりにもキモくて口に出てしまった。髭面のヤーさんに『気に入ってる』とか『サービス』とか言われても、寒気がするから本当にやめて欲しい。俺はまだカタギでいたいんだ。


 レナードさんはなんだかんだ言いつつも、俺のガラクタを1000Gで引き取ってくれた。



「ガキ、この町を出ていくのか?」


 なんとなしに面白いものがないか物色していると、レナードさんが商品台帳のようなものを確認しながら聞いてきた。仕事が忙しいなら、俺のことは気にせず奥に引っ込んでくれてもいいんだけど。


「ええ、そのうち『アルヒド』に行くつもりです」


 この町はチュートリアルのためにあるようなモノだ。出来ることはそう多くないし、きっと俺も明日か明後日には『第一の国 アルヒド王国』に向けて出発するだろう。


「そうか」


 レナードさんはぶっきらぼうにそう言った。しかし、その声は珍しく小さい。


「もしかして、寂しいんですか? 社長もかわいいところがありますねぇ」


「ハン、せいせいするぜ。俺に向かってそういう舐めた口を利くのもガキくらいだ、まったく」


 なんだコイツ、ツンデレなのか? オッサンのツンデレとか、いったいどこに需要があるんだろう。少なくとも俺には需要はないからやめて欲しい。


「俺が渡したあの石、どうした?」


「ああ~」


 そういえば、モミジと俺を引き合わせた『紅葉石』は、もともとはレナードさんの所有物だったんだよな。ある意味でレナードさんは恋のキューピットなのか……?


「有効活用させてもらいましたとも。おかげでカワイイ女の子と出会いました」


「なんじゃそりゃ」


 あ、ちょっと嬉しそうに鼻を鳴らした。商品台帳もずっと同じページを見ているし、なんて分かりやすいオッサンなんだ。


 こうして考えてみると、俺はけっこう人の縁には恵まれている気がする。その縁の出発地点とも言うべき人が、このレナードさんだ。なんだかんだ言いつつも、俺もレナードさんには感謝している。


「ここでアルバイトした経験は、一生忘れません」


「おう。またこの町に来たときには顔出せや。面白いモンを仕入れておくからよ」


 ここにも、俺に「また来い」と言ってくれる人がいる。そのことに、また俺の胸は熱くなった。


 気がつけばずっと手に持って転がしていたポーションの瓶を、買い取りカウンターに置く。ちょっと買いすぎたかもしれない。



 それからも回復系の消耗品を買い溜めし、他に面白いものがないかを物色していると、現実でも見慣れたアイテムを見つけた。


「これ、何ですか? ペットの首輪?」


 そこら辺の飼い犬とかが付けてそうな、特に装飾もないリール付きの首輪だ。このゲームではペットを飼えるのだろうか?


「見ての通り、ペットの首輪だ。マイホームを持つとペットを飼える。その時に、首輪を持ってねえとペットショップで動物を売ってくれねぇし、外で捕まえてきても門番に取り上げられるからな。ペットを飼うなら必須アイテムだ」


 マイホームを持てるのか! これは何としても手に入れたい! いずれはするであろう新婚生活のために!


 美女モミジと炬燵(こたつ)に入りながら、一緒にお茶を(すす)ったりしちゃったり。そして彼女の大きな胸に埋もれるように眠る豆柴……いい! とてもいいぞ! 俺も豆柴になりたい!


「買うなら最低でも100万Gだからな」


 ハイ解散。


 1万G貯めるのだって大変なのに、途方もない金額すぎる。いったい買うのに何年かかるのやら……。


 うぅん、マイホームを手に入れる予定はなくなったけど、ペットの首輪は欲しいな。


 あとで「コレをつけるとリンパが刺激されておっぱいが大きくなるらしい」とでも言ってモミジに装着させる。そして「『にゃん』という言葉の響きに反応して卵巣から女性ホルモンが大量に分泌され、その結果おっぱいが大きくなるらしい」とでも言って猫耳をつけて語尾を『にゃん』と言わせよう。


 ネコミミ和服のじゃロリ……完璧だ!


「お前にコレを売ってはいけないと、商売神が俺に言っている気がする」


「大丈夫です、悪用はしません。ただ、幼女に装着させようと考えているだけです」


「人はそれを悪用と呼ぶぞガキ」


 その後、30分の執拗な俺の粘りによって、レナードさんはついに『ペットの首輪』を俺に売るのだった。ちなみに値段は2000G。装備を買った代金よりも高い気がするけど、きっと気のせいだろう。




 余談だが、この日の夜に装着してもらおうとモミジにお願いしたところ……『安倍晴明キックボクシングジム 大事なトコロ支店』が臨時オープンした。そろそろ玉が潰れてしまわないか、我ながら心配になってきたぜ。



総合評価が1500ptを突破しました!


ブックマークや評価(★)で応援いただき本当にありがとうございますm(__)m


今週は木土日の3投稿予定です! 次は土曜日!



モミジにネコミミつけようとする話も番外編みたいなので書きたいなぁ

迷いどころ(´・ω・`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ