39話 はじめての冒険者登録
「俺は安倍晴明。冒険者登録をしに来た、ニュービーだよ」
決まったァ――――!
これは完璧に決まった。相手の言葉を引用したこの皮肉、完全にぶっ刺さったはずだ。コワモテ何某の屈辱に塗れた顔が容易に想像できる。さてさて、次はどんなセリフを言ってくれるのかな?
「晴明がたったいまソトになげとばしたから、きこえてないとおもうのじゃ」
「なんだとッ!?」
やっちまったァ――――!
たしかに冒険者ギルド内にコワモテ何某の姿はない。あまりにも勢い良く投げすぎて、そのままダイナミック退出してしまったようだ。
ヤツに「お前は何者だ!?」と聞かれた時から、さっきのセリフを言おう言おうと準備しすぎて、他のことを考えている余裕がなかった。これが策士策に溺れるというやつか……。
「「カ、頭――――ッ!」」
状況に取り残されていた子分二人が我に返ったようで、こけそうになりながらも慌てて出ていった。そのコミカルな雰囲気にも、なんだか毒気を抜かれてしまう。
周りで野次馬していた連中も、「何を言ってるんだアイツ」みたいな感じで白い目をして俺を見ているし。せっかく晴明アゲの展開だったのに、なんだか場が白けてしまったじゃないか。おのれ、許すまじコワモテ何某!
「ほとんど晴明のせいじゃが……それより、ぼーけんしゃとーろくとやらはいいのか?」
「おっと、そうだった」
冒険者ギルドに来た趣旨を忘れるところだったぜ。ようやく俺は冒険者登録をすることができて、本当の意味でAFOがこれから始まっていくのだ。
「あの、きょにゅ……お姉さん、冒険者登録をしたいんですけど」
「ファイッ!?」
突然、戦いのゴングが鳴った。
冒険者登録をしたければ、私を倒しなさいということだろうか? やってやるぜ! いや、むしろヤってやるぜ!
まったくけしからん! コイツ、近くで見てもかなりの巨乳じゃないか! そ、そそ、そんな凶悪な兵器には負けないぞ!
こ、こうなったら、俺のこのエクスカリバーを挟んで性なる力を解き放――。
「おちつけヘンタイ」
「オゴッ……どうして……お前は、俺の股間ばかり……」
俺が咄嗟に脱ごうとしてズボンに手をかけると、掬い上げるようなモミジのキックが股間に炸裂した。たしかにボクサーがパンチの練習に使う器具みたいなのついてるけどさ! ソコで安倍晴明キックボクシングジムはオープンしてねぇんだよ!
「このヘンタイはきにしなくていいのじゃ。おねーさん、ぼーけんしゃとーろくをたのむのじゃ」
「は、はい」
俺が悶えている間に、モミジが勝手に話を進めている。これではどっちが主か分からない。
「え、えっと……ようこそ、冒険者ギルドへ! 冒険者登録ですね?」
【『メインストーリー:はじめての冒険者登録』が発注されました】
「はい、お願いします巨乳さん」
【『メインストーリー:はじめての冒険者登録』を受注しました】
「……」
【『メインストーリー:はじめての冒険者登録』が破棄されました】
「なんで!?」
こんなことってある!? 受付嬢にメインストーリーを拒否されたんだけど!?
「きょ、巨乳さんじゃありません! 気にしてるんですから、やめてください!」
どうやら無意識に呼んだ『巨乳さん』というあだ名がダメだったらしい。
ここで改めて巨乳さんをよく見てみると、なかなかの美人であることに気がつく。キレイにウェーブのかかった栗色の髪を肩まで伸ばし、おっとりとした顔立ちに髪色と同じ色の瞳。そしてお鼻にはチョコンと小さな丸メガネが乗っている、ふわふわ系知的ガールという趣だ。
なにより素晴らしいのは、華奢な身体にドカンと居座る貫禄のE。ウェイター服のような黒い衣装の胸部は、あまりの存在感に破裂寸前だ。まったく重力に負けている様子もなく、真ん丸とキレイなお椀型でハリも良さそう。こりゃぁ、たまりませんな!
「……セクハラで訴えますよ」
おっと、あまりにもジロジロと見すぎたようだ。巨乳さんは両腕でガードして胸を隠してしまった。スケールがデカくて全くガードできていないが、今日のところはこれくらいにしておこう。
「すみません。えっと……なんて呼べば?」
「あっ、自己紹介がまだでしたね。私はこのギルドで受付の仕事をしています、『エイミー』と言います」
おっとり巨乳さん……エイミーは、眼鏡の位置を直し、ピンと姿勢を正して挨拶をする。姿勢を正した時に、ぶるるるん! とどこかが暴れた。あえてどことは言わないが、とんだじゃじゃ馬を飼ってやがる。
「よろしくお願いします、エイミーさん。俺は安倍晴明で、コッチが式神のモミジです」
「よろしくなのじゃ!」
俺も挨拶を返したわけだが、もはやエイミーさんは俺を全く見ていない。俺に続いて元気に挨拶をしたモミジに視線が釘付けだ。モミジのかわいらしさは老若男女を問わないらしい。エイミーさんが犬を撫でたくてうずうずしている女子高生みたいな顔をしている。
……そうだ!
「モミジ、ずっと立ってるのも疲れるだろう? どこかに座ったらどうだ? 例えば……エイミーさんの膝の上とか」
「……? わかったのじゃ」
モミジをだっこして、エイミーさんの膝の上に乗せてやる。
「は、はうあぁっ!? か、かかか、かわいい……!」
ロリータインパクトによって、エイミーさんのATフ●ールドは完膚なきまでに破壊されたようだ。ふわふわと表現するのがふさわしい雰囲気だったものが、もはやふにゃふにゃにまでオチている。まさに骨抜きにされたってやつだな。
「先ほどはすみませんでした。改めて、冒険者登録させてください」
「も、もう、仕方ありませんね。でも、次はないですからね?」
【『メインストーリー:はじめての冒険者登録』が発注されました】
【『メインストーリー:はじめての冒険者登録』を受注しました】
ハハッ、チョロいぜ。
「それでは、この冒険者カードを持ってください」
エイミーさんから渡されたのは、クレジットカードと同じサイズをした白地のカードだった。
「あの、真っ白なんですけど……」
「登録がまだですから。ひとまず、そのカードを持ったままステータスの参照をしてみてください」
言われた通りに、カードを持ったままステータスの参照をする。
【冒険者カードに情報を登録します。よろしいですか? ※項目の表示設定はあとから可能となります】
はい。
【冒険者登録が完了しました】
え!? これだけ!?
本当に今のやりとりだけで登録が完了したようで、冒険者カードには俺のステータスが印字されていた。すげぇ簡単だな。
「デフォルトの設定ですと、全体にステータス情報が開示される『全体公開』設定になっています。『非公開』や『フレンドのみ公開』など、名前やレベル以外の項目は細かく設定することができるので、忘れない内に設定しておいた方がいいですよ」
モミジの頭を蕩けた表情で撫でながらも、声だけは真面目に説明を続けてくれるエイミーさん。なんとも器用な人だ。
あ! モミジがEに埋もれている! うらやまけしからんッ!
俺もいますぐその包容力の海へと飛び込みたい衝動に駆られたが、さすがに秘匿したい情報が多いため、涙を飲んで冒険者カードの設定をすることにしたのだった。
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