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38話 テンプレ……?

第二章突入!


 冒険者ギルド内を歩いていく。今は真昼間だというのに、まるで夜の酒場のような喧噪だ。


 グルリと辺りを確認してみると、プレイヤーとNPCが入り乱れており、広い部屋のそこらかしこに設置されたテーブルでアイコンつきとアイコンなしが楽しそうに雑談をしている。


 この建物に入ってくる客は珍しくもないようで、コチラを見る者は誰もいない。俺も知り合いがいるわけでもないので、一直線に受付と思われるカウンターへと進んでいくことにした。


 そのカウンターはまさに現実の役所のカウンターと似たもので、横並びのテーブルに5人ほどの受付嬢が座っており、その後ろに順番待ちの列が出来上がっている。受付嬢によって人気があるのか、列の長さもまばらだ。



 俺は特にこだわりもないから適当に……ッ!?



 一人だけ、すごい巨乳がいる!?



 俺は一番長い列の最後尾に付いた。



 そうしてしばらく順番待ちをしていると、ものの数分で列は消化されていき、ついに次が俺の番というところまできた。さてさて、この子は何カップかな?


「おい、ニュービー(初心者)よォ。俺様は急いでんだわ、ちょっと順番を変わっちゃくれねぇか?」


 俺の前にいたプレイヤーが列を離れ、さあ俺の番だと手をワキワキさせながら進もうとすると、突然横から声をかけられた。


 そいつは2メートル近い体躯に、全身を青銅シリーズで揃えたそこそこ強そうなプレイヤー。(たくわ)えた(ひげ)といい、威圧感のある顔といい、肩に担いだイカツイ斧といい、コイツは山賊ロールプレイでもしているんだろうか? 後ろには、子分と思わしきプレイヤーを2人引き連れている。


「何をボケ―っと見てるんだな! 早くどくんだな!」


「そうでゲス! ニュービーが生意気でゲス!」


 子分二人をザックリ言うと、杖を持った魔法使い風のデベソデブと、バンダナをつけた盗賊風のチビガリって感じ。デブはその見た目で、もしかして魔法使いなのだろうか。2人とも特徴的な喋り方で三下感が半端ない。


 いや、そんなことより……。



 これってもしかして、『テンプレ』ってやつじゃない!?



 俺も今やレベル17。掲示板をサラッと見てみたが、最前線のプレイヤーでもレベル15くらいだと書いてあった。


 つまり、俺は最前線のプレイヤーと同等の力を持っており、それが『はじまりの町』という初心者の町でスローライフを送ってる的な展開だ。


 この冒険者ギルドで絡まれるイベントは、もはやファンタジーの通過儀礼。ここで俺がこのコワモテを捻じ伏せ、「な、なんだと!? あのAランクのサンゾック・コワモテーノが一撃で……!?」みたいな展開になるのだ。想像しただけでもキモチイイ。


 さて、チョチョっと(ひね)ってやりますかね。


「フッ、横入りなんてルール違反は……」


「ああ? なんか文句あるか?」


「いえいえ、文句などあろうはずもない。どうぞどうぞ」


 テンプレ? レベル差? そんなの関係ないわ。怖い人には逆らわない方がいいって偉い人が言ってた。争いは何も生まないんだ。穏便に済むならそれが一番いいじゃないか。


 執事もかくやという優美な動きで、俺が快く順番を譲ろうとしていると――――。



「そこのヨコハイリヒゲダルマ! つぎは晴明のバンなのじゃ!」



 冒険者ギルドの入り口から、幼い女の子の大きな声が聞こえてきた。


「モミジ……」


 新雪のような白い肌を深紅の和服で包み、その上を腰まで伸ばした艶やかな黒髪が踊っている。まるでお人形のように整った幼い顔立ちと、濃く深い紅色の瞳を持つ幼女……俺の召還した式神、モミジが焼きおにぎりを片手に仁王立ちしていたのだった。


 ギルド内も先ほどの喧騒が散歩にでも出かけたのか、モミジの大声で静まり返っており、みんなが野次馬モードに突入している。いや、モミジのかわいさに圧倒されているのか……?


「あん? なんだガキ、俺様に文句があるってのか?」


「モンクありまくりなのじゃ! じゅんばんをまもるのじゃヨコハイリヒゲダルマ!」


 ヨコハイリヒゲダルマってメッチャ言うじゃん。そのワードが気に入ったのかな?


 たしかにコイツの顔はダルマにヒゲをつけたような感じだ。見れば見るほど、ヒゲダルマとは言いえて妙だな。モミジもなかなかセンスがあるじゃないか。


「なんだとニュービーが! 下手に出ていればいい気になりやがって!」


 おっと、声に出てしまっていたようだ。


「なーにが、シタテなのじゃ。さいしょからみておったが、ずっとえらそうにしてたのじゃ!」


「このガキが! 調子乗ってんじゃねえぞ!」


 ついにヒゲダルマはキレてしまったようで、その大きな体躯をしならせてモミジを殴りつけようとしている。さすがにそれは……。


「――見過ごせねえ」


 俺は片手で大男のパンチを受け止め……ようと思ったけど、怖かったから念のため両手でパンチを受け止める。へっぴり腰になんてなっていない。キャ●ーンのポーズを真似しただけだ。


 ヤツの拳と俺の手の平がぶつかった瞬間、あまりの衝撃で衝撃波が発生……なんてこともなく、パスンという気の抜ける音がしただけで、特にダメージもなく軽々と受け止めることができた。


 なんだコイツ、なめてんのか?


「な、なん……だと!?」


 と思ったが、本人は驚きでいっぱいって感じの顔をしている。もしかして、今のが本気なのか?


「お、おい……あいつ、サンゾック・コワモテーノじゃないか?」


 え!? マジでサンゾック・コワモテーノだったの!?


「なに!? あのGランクにあがったコワモテーノ!?」


「山賊ロールをしている、リアルでは営業サラリーマンのコワモテーノか」


「ヤツはレベル8になったと言っていたはず……そんなヤツの渾身の一撃を受け止めただと!? 両手でへっぴり腰だけど……」


 サンゾック・コワモテーノさん、個人情報がダダ漏れなんですけど。大丈夫なのかな。


 あと、わざわざ「両手でへっぴり腰」とか注釈つけなくていいから。カッコ悪く聞こえちゃうからそれ。


「お、お前は何者だッ!?」


 受け止められた拳に体重をかけて、上から押しこもうとしてくるコワモテ何某。


 しかし、圧倒的にステータスが上の俺を圧し潰せるわけもなく、滑稽(こっけい)な俺のポーズも相まって出来の悪いパントマイムみたいになってしまっている。


 やれやれ、俺は冒険者カードを作りに来ただけなんだけどな。


 意外とコイツ弱いし、当初の予定通りチョチョっと捻ってやろう。


「俺か? 俺は……」


 全体重をかけてきているコワモテ何某の力を利用し、そのまま腕を取って背負い投げをしてやる。体育の授業では投げたことなかったから、完全なる見様見真似だが、どうやら上手く決まったようだ。コワモテ何某はものすごい勢いで飛んでいった。


 俺は手をパンパンと払って背筋を伸ばし、このAFOに対して堂々と名乗りを上げてやる。



「俺は安倍晴明。冒険者登録をしに来た、ニュービーだよ」



 安倍晴明のメインストーリーが、今ここから始まるのだ。



VRゲーム月間ランキング63位!

順調に月間の順位が上がっています!


ブックマークや評価(★)で応援いただき本当にありがとうございますm(__)m


これからも投稿頑張ります(`・ω・´)

次回は7/2(木)予定

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