28話 幼刀くまてつ、爆誕!
ステータスの(+XX)は、
値の内の装備による上昇分を意味しています。
「これがモミジちゃんの装備じゃ」
あれからゲーム時間で1日経ち、俺達はまたダグラスの鍛冶屋に来ていた。約束通りに1日で作ったらしい。石造りの机の上には、モミジが着ている和服と似たモノが畳んで置かれており、さらにその横には布で包まれた棒状のナニカが置かれていた。
「モミジちゃんに武器も欲しいとお願いされてのォ。ついでに作っておいた」
「おじいちゃんダイスキなのじゃ! さっそくきてくるのじゃ!」
モミジはジジイから装備をひったくる勢いで奪い取り、更衣室に駆け込んでいった。
「悪いなジジイ。武器の分だけでも金を出すぞ?」
「いいんじゃよ。ワシにとっても、本当の孫ができたようで嬉しくてのォ」
顎をさすりながら目を細める姿はただの好々爺。人の好さそうなその笑みを少しは俺に向けてもよいのではなかろうか? そして俺にもオーダーメイド品を献上してくれてもよいのではなかろうか?
「モミジちゃんに作ってあげた装備は……ふむ、値段は鉄シリーズ何個分になるかのォ。払ってくれるなら坊主のも作ってやるぞ、もちろん一括払いで」
「やっぱ鉄シリーズの武骨な感じがいいよなぁ」
鉄シリーズが既に予算オーバーだ。ここで「気が変わったから払え」とか言われてもめんどくさいしな。これ以上は何も言うまい。
「じゃじゃーん、なのじゃ!」
俺とジジイがくだらない会話をしている間に着替え終わったようだ。勢いよく開け放たれたカーテンの向こうには、特に見た目の変わらないモミジが誇らしそうに仁王立ちしていた。
「はぁ……これだから素人はダメじゃのォ。パッと見は同じかもしれんが、素材の質がまったく違う」
「うむ! コッチのほうが、きごこちがいいのじゃ!」
ファッションセンターしま●らヘビーユーザのオシャレ番長である俺でさえ、よく見ても違いが分からない。これはサイゼ●ヤの間違い探し級の難易度だぞ……。
「まったく晴明は『でりかしぃ』がないのじゃ」
「誠に申し訳ございません」
「よいか? まずココと、ココのいろがチガウのじゃ。それにココのながさも3センチほどちがう!」
あちこち指をさされながら懇切丁寧に教えられたが、俺にはまるで分らない。これはもうダメみたいですね。オシャレ番長の称号は返上しよう。
「むむむ……まあ、いいのじゃ。それよりも! めだまはコレじゃ!」
そう言いながらモミジが掲げたのは、茶黒の鞘に納まった大振りな日本刀だった。
「それがモミジの武器かぁ――って日本刀!?」
「アレは天風刀という種類の武器じゃのォ。モミジちゃんにリクエストされたんじゃ。おじいちゃん、作ったことないけど頑張った」
鞘から抜き放ったそれは、片刃で大きく反りの入った特徴を持つ、現実では日本刀と呼ばれている武器だった。AFOでは日本に似た風土の国が存在し、名前を『天風』というらしいので、日本刀も『天風刀』という名称になっているのだろう。
モミジの身長よりも大きい刀を振り回せるのだろうか? 逆に刀に振り回されそうな感じなんだけど?
「しかし、どうやって作ったんだ? どことなく鉄っぽくないような……」
「山で出会ったサーベルベアのドロップ品じゃよ。アレの爪は元から同じような形をしとったからのォ。チョチョっと打ち直してやったんじゃ。服の方はアレの毛皮じゃのォ」
ふむ。そう言われてみれば、どことなくサーベルベアのサーベルに似ている気がする。
式神の持ち物の情報は閲覧できるようなので、改めて確認してみる。
【剣熊毛皮の天風服……サーベルベアの毛皮を加工して天風の伝統衣装風に仕上げた逸品】
【剣熊爪の天風刀……サーベルベアの爪を加工して天風刀風に仕上げた逸品】
確かにサーベルベア関連の装備みたいだ。あくまで天風『風』になっているのは、ジジイが専門じゃないからだろうか。しかし『剣熊爪の天風刀』って、字面の渋滞具合がえげつないな。剣なのか爪なのか刀なのかハッキリしろ!
「むふふ~、コヨイの『くまてつ』はチにうえているのじゃ……」
刀を見つめながらモミジがなにか呟いている。なんで血に飢えた人斬りみたいな発言をしているんだ。深紅の瞳がドス黒く濁っていくんだけど、そろそろ誰かアイツを止めろ。
「――おい! 刀の名前が『くまてつ』になっちゃってるんですけど!?」
そんな機能があるとは予想外だ。アイテム名が『剣熊爪の天風刀』だったのに、モミジの呟きのせいで『幼刀 くまてつ』になってしまった。幼女の刀だから幼刀ってか? やかましいわ!
「むむっ、落ち着け坊主。命名したことで、なにやら武器としての格が上がったようじゃぞ!」
「た、たしかに……急にラブリーな威圧感のようなモノを出し始めたな……」
いや、『ラブリーな威圧感』って自分で言っていて意味わからないけど。そうとしか表現できないのだから仕方がない。
とてつもなく原理が分からないが、アイテム名が『幼刀 くまてつ』になると同時にパワーアップしているようだ。
【幼刀 くまてつ……幼女専用装備。幼女のぷにぷにおててで握られながら、幼女のハイトーンボイスによって命名されたことで幼刀としての力を手に入れた刀。鍔がくまさんの形になっていてチャーミング】
ようじょせんようそうびになってりゅ……。
この世界の幼女贔屓はどうなっているんだ? 説明を見る限り『幼女が握りながら幼女が命名したこと』がトリガーとなり、こうなってしまったと推測できる。
元々は武骨でモミジよりも大きかった『剣熊爪の天風刀』が、全体的にデフォルメされて、幼女でも軽々と振り回せるチャーミングなオモチャに変貌をとげてしまった。
しかし見た目に騙されることなかれ。武器によるステータスの上昇値は格段に上がってしまい、俺の鉄の剣など比較にならない最強装備へと進化しているのだ。
そして、完全武装したモミジのステータスがこれだ。
ワン。
トゥー。
スリー。
---ステータス---
名 前:モミジ
レベル:1
種 族:コオニ
H P:25(+10)
S P:10
M P:70(+40)
攻撃力:50(+45)
守備力:50(+45)
魔攻力:70(+50)
魔守力:75(+55)
敏 捷:35(+20)
器 用:35(+15)
運命力:-5(-10)
スキル:???
魔 法:なし
-----------
全体的にステータスが高い上に、魔法を覚えていないのに魔法関連のステータスが軒並み高い。他の人のステータスを見ていないから分からないが、最前線攻略組の魔法使いと比べても遜色ないんじゃないか? これ、俺いります?
「どうじゃ、晴明! わらわつよくなったのじゃ!」
「そうだな~、よしよし。モミジがいれば百人力だな~」
「なのじゃ~」
このままでは俺自身を囮として、モミジの魔法で敵を一掃する「あれ? どっちが主人公?」みたいな状態になりそうだけど。かわいいからどうでもいいか。パーティーの戦力アップは素晴らしいことだからね。別に泣いてなんかいない。
「とりあえず、これで旅の準備は完了だな」
「そうじゃなァ。行くとするかのォ」
ジジイの鍛冶屋に来る前に、薬草やポーションなどの消耗品は購入済みだ。この村に道具屋は存在しないのだが、今朝も遊んだ幼児4人組の中の一人が「ウチのおとうさんはヤクソーメイジンなんだぜ!」とか言うので、売ってもらえないか頼んでみた。すると「余所者にはやらん! と言いたいところだが、ウチのガキと遊んでくれた坊主は村の仲間だ」と薬草とポーション類を快く譲ってくれたのだ。
ジジイのおかげで装備も一式揃ったことだし、消耗品類もこの村で揃えられるものは揃えた。メインストーリーを進めるためにも、そろそろ『はじまりの町』に戻らなければいけないのだ。この『モナクス』でスローライフっていうのも悪くはないが、せっかくの剣と魔法のファンタジーだしな。スローライフは、一通りゲームを楽しんでからでもいいだろう。
「『はじまりの町』に戻ってから、ついに俺達の真の冒険が始まるんだ!」
「戻ったら戻ったで、なんだかんだ坊主は厄介事に巻き込まれそうじゃがのォ」
やめろジジイ。変なところでフラグを立てるな。
VRランキングの日間26位、週間54位になっていました!
最近は小説を書くのが楽しくてたまりません。みなさんのおかげです。
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明日は通常話(朝)+掲示板回(夕方)を更新予定です。




