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22話 契約成功!?


 水面をぷかぷかと浮いているような感覚と、朦朧(もうろう)とする意識。


 ここはいったいどこだろう。夢を見ている時の感覚となんとなく似ている気がする。


 思い出せ。俺は何をしていた?


 ……あ、そうだ。俺はAFOをやっていた。マキビさんから陰陽師についていろいろ聞いて、式神召喚が成功したのになぜか中断してしまって、それから間違って裏鬼門で式神召喚しちゃっておかしなことになって……黒髪の美女に、殺された。


 そう、殺されたのだ。


 まあ、冷静に考えてもやりすぎたよね。だって式神を召喚して戦いが始まったと思ったら、胸を揉んでキスしてそのままエッチしようとしてたんだぜ?


 現実に置き換えれば、『飛び込み営業で知らない家にピンポンして出てきたのがカワイイ女の子だったからとりあえず犯そうとした』みたいな感じだろう。どう考えてもクレイジーな性犯罪者だ。


 嫌われたかなぁ。嫌われたよなぁ。うわ、なんかめちゃくちゃショック。けっこうガチで惚れてるのかも。もしかして初恋からの即失恋!?


 勢い余って「俺の女にしてやる」とか、今時の少女漫画でも言わないような俺様系セリフ言っちゃってたし。あれはさすがにないよね。言葉だけ見ると俺様系だけど、実際は童貞感丸出しだった。


 でもしょうがないじゃん。母さん以外の異性とまともに話したことないんだから。「童貞キモッ!」とか思われてたらどうしよう。二度と立ち直れないかもしれない。


 で、でも? 最後の方はちょっと笑ってたし? 「おもしろいわっぱよ」とか言ってたし? あの子の方からキスしてきたし? 「またいつか、のぅ。安倍晴明よ」とか言ってたし?『またいつか』ってことは、次を期待してるって意味だよね?


 つまり、俺は嫌われていない!



 よかったよかった。



 ……ん? ちょっと待て、なにか引っかかるぞ。



 ()()()()()()()()()()()()()()()



 どう考えてもおかしい。俺は名乗っていないのだから、名前を知っているはずがない。その証拠に、途中までは『うつけ』とか『わっぱ』と呼んでいた。ジジイの『鑑定』みたいに、相手の情報を覗くスキルでも持っていたのか……? いや、それなら最初から使っているはず。


 考えを巡らせていくうちに、強い浮遊感を感じた。おそらく意識が覚醒するのだろう。ジジイの荷物運びで気絶した時も同じような感覚を味わった。


 そういえば、死んだ時ってどこにリスポーンするんだろう?


 はじまりの町からリスタートとかないよね?



「……」


「あ、晴明おきた」


 寝起きでぼやける視線の先に、誰かの顔が見える。そして頭の下には、暖かくて柔らかい感触の何か……デジャヴ……これは……。


「ひざまくらァ!?」


 苦々しい記憶が蘇り、反射的に起き上がる。一日に何度も爺さんの膝枕で寝ていられるか!


「む、この反応は心外」


 しかし、聞こえてきたのはしわがれ声ではなく、少し幼さの混じった女の子の声だった。


「ハ、ハクゥ!?」


「うん」


 そう、俺に膝枕をしていたのは、なんとハクだったのだ!


 よくよく思い出せばマキビさんの膝とは全く違う感触だった。柔らかさで言えば天と地の差、月とスッポン、羽毛布団と漬物石だ。ちょっと女の子の甘くていい匂いもしたし。桃みたいなフルーティーなスメルだった。


 お、俺は、なんてもったいないことを……!


「ア、アー。なんだかまだ体がどこか痛いナー。さーて、もうひと眠りしようカナ?」


「もうだめ。ハクはつかれた」


 逆再生のごとく自然な動きでハクの膝に戻ろうとするも、足の裏で背中を蹴られて丸太のようにゴロゴロと転がされてしまう。意外と強い力で蹴られたようで、数メートルほど勢いよく転がり、そして何かに当たって止まった。


 頭の下には、どこか柔らかくも皮骨ばった感触と加齢臭……これは……。


「おや、次は私の膝で寝ますか?」


「だから爺さんの膝枕って誰得!?」


 またもやマキビさんの膝だった。爺さんの膝枕リターンズ……うぅ、硬いよぅ。


 ああ、ハクは狐姿に変身して隅っこで丸くなってしまった。あれでは膝枕は不可能だ。カムバックやわらかい女の子の膝枕。


「ふふっ、さすがに私のようなおじいさんの膝はイヤですよね?」


「ソ、ソンナコトナイデスヨー」


 そう言いつつ俺は素早く立ち上がる。


 膝枕は女の子の太ももを味わうだけではない。双丘から初日の出のように覗く、女の子のかわいいお顔があってこその膝枕だ。さっきのは双丘というより地平線だっただけど……。


「ハクは休ませてあげてください。ここまで晴明君を運んできて、起きるまでずっと膝を貸していたのですから」


「ず、ずっとですか!?」


 ずっとって、どのくらいだろう。8時間くらいかな。なんだか、まだ後頭部が温かい気がしてきた。これはしばらく頭を洗えない。


「そうですね……15分くらいでしょうか?」


「なんと短い!」


 耳かき専門店の一番安いコースより短いじゃないか!


 しかしよく考えてみれば、女の子の膝枕って初めてなのでは? 死ぬまでにやっておきたい恋愛シチュエーション500の1つを、こんなところで達成してまったぜ。あとで妄想ノートにチェックつけとこう。


「あれ? そういえば、俺は死んだのでは?」


 完全に膝枕事件で忘れていたが、確かに俺は黒髪の美女に殺された。それに式神召喚は村の広場で行っていたはずなのに、いつのまにかマキビさんの神社に移動している。ここまで運んだと言っていたが、どういうことだろう?


「死んだ……? いえ、気絶はしていましたが、死んでいませんよ」


「なんですって!? そんなはずは……」


 俺が死んでいない? しかし、確実に刀を振り下ろされたところで意識を失っている。どう考えても、あの後はデュラハンになってノーライフでフィニッシュのはず。


「ふむ……晴明さん、式神召喚をした後のことを話してくれませんか?」


「わ、わかりました」


 混乱しながらも『紅葉石』がひとりでに動き出したこと、謎の黒髪の美女が召喚されて戦闘になったこと、そして刀を振り下ろされたところで記憶が途絶えているが、おそらくあのまま首を()ねられただろうということを、ところどころプライバシー保護の観点から端折(はしょ)りつつ説明した。


 さすがに胸を揉んだとかキスしたとか告白したとかは話さない。自分の情事をひけらかして興奮する輩ではないのだ。個人撮影動画は個人で楽しむためのモノ!


「それと、一つ分からないことがあるんですけど……」


「なんでしょう?」


「名前を、呼ばれたんです。教えてもいないのに」


 式神関連のことならマキビさんが分かるかもしれない。そう思って聞いてみたが、その瞬間にマキビさんの目が驚きで大きく見開かれた。 


「晴明さん、ステータスを確認してみてくださいっ」


「ステータスですか?」


 どうしてこのタイミングでステータスを見るんだ?


 理由を聞きたいが、マキビさんは珍しく興奮している様子で、俺が確認するのをソワソワしながら待っている。別に見ることに抵抗があるわけでもないし、とりあえず見てみるか。


「分かりました……ステータス!」


---ステータス---

名 前:安倍晴明

レベル:1

種 族:人間族(天風人)

職 業:陰陽師

H P:27

S P:18

M P:25

攻撃力:15

守備力:9

魔攻力:12

魔守力:9

敏 捷:10

器 用:12

運命力:23

スキル:式神召喚(不可)

    式神契約(1/1)

魔 法:なし

-----------


「式神契約が1になって、式神召喚ができなくなってる……」


「やはり、ですか……正直に言いますと、無事では済まないだろうと思っていました。裏鬼門の召還はそれだけ危険なことですから」


 マキビさんは自らの興奮を落ち着けるように、一度大きく深呼吸をして続けた。


「しかし、晴明さんは生き残りました。式神召喚の結界が解除されるのは、術者が解除した時、結界が破壊された時、術者が命を失った時。そして……式神契約が成功した時です!」


 式神召喚の解除はできなかったし、マキビさんの力で破壊することも出来なかった。マキビさんが言うには気絶していただけで死んではいないし……消去法でいけば、式神契約が成功したということになるんじゃないか!?


「あ、あああ、あの! もしかして、あの美女が俺の式神になったということでしゅか!?」


「そう、ですね。式神契約が成功していれば、式神契約のスキルで顕現(けんげん)……式神をこの世界に呼ぶことができるはずです」


「にゃ、にゃるほどぅ!」


 ヤバイ。めちゃくちゃ緊張してきた。


 いやあ……「何度でも蘇って、いつかお前を俺の女にしてやるぜ!」とか意気込んでいたのに、どんな顔をして会えばいいんだろう。思っていたよりも早い再会となってしまった。


 大丈夫かな? 顕現した瞬間に首を撥ねられるとかないよね? 式神契約バリアーみたいなの発動するよね?


「式神契約とは、お互いを認め合うこと。成功すれば術者と式神の間に強い(えにし)が生まれます。その結果、式神にも術者の情報が開示される……晴明さんが名前を呼ばれた時点で、きっと式神契約は成功していたのでしょう。あまり怖がらなくても大丈夫だと思いますよ」


「裏鬼門関係でマキビさんの言うことはイマイチ信用できない自分がいる」


「それを言われてしまうと……私も未経験のことですから、推測するしかないと言いますか……」


 おっと、つい心の声が漏れてしまった。困り顔のマキビさん。


 まあ、裏鬼門での召喚自体が(まれ)だと言うし。これだけ親身になってくれているマキビさんを責めるのも筋違いだ。結局は俺がビビってるだけだしね。


「それよりも! さっそく顕現してみませんか?」


「そ、そうっすね。HPがちょっとヤバイのが気になりますけど」


「自分の式神の攻撃でHPは減らないので大丈夫です! それに村の中ですし!」


 めっちゃグイグイ来るなマキビさん。でもHPが減らないなら、そんなに気にしなくても大丈夫かな?


 正直言えば、早く会って聞きたいことがたくさんある。どうして契約してくれたのかとか。スリーサイズとか。好きな男性のタイプとか。お、おお俺のことをどう思っているのかとか。


 マキビさんに方法を聞いたところ、心の中で顕現させたい式神を選択し、『顕現』と言葉にすればいいだけのようだ。



---ステータス---

式神召喚(不可)

式神契約(1/1)

 ┗名前:(名称未設定) レベル:1 種族:コオニ

-----------



 名前をつけてないから名称未設定。種族は……コオニ? あんまりコオニって感じじゃなかった気がするけど……あとでマキビさんに聞けばいいか。ひとまず、コレを選択してっと。


「それでは……顕現!」


 俺のすぐ目の前の地面に、さっきマキビさんと作った召喚陣と似たモノが浮かび上がる。それから色とりどりの小さな光が四方八方から集まり、粘土細工のように混ざり合って、色や形を複雑に変えながらなにかを形作っていく。



 ふわりと風が吹き、金木犀のような甘い匂いがした。



 目の前に現れたのは、俺が一目惚れした女性。



 腰まで伸びた(あで)やかな黒髪と深紅の瞳。



 そして紅葉を敷き詰めたような和服に身を包んだ――――。



 ――――幼女だった。



「なぜロリ!?」



VRゲームの日間ランキング(48位)に乗ることができました!


ブックマークや★で応援してくださり、本当にありがとうございますm(__)m


とてもとてもモチベーションアップしたので、張り切ってストックも量産中です!


毎日投稿これからも続けていきます!

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