16話 さらばロブハンリターンズ
－－－CHAT－－－
美波：ねーねー、天翔ける八岐大蟹いかない？
KAITO：あれ狩ってもキモイ装備しか作れないじゃん
美波：えー？ かわいいよ？
KAITO：ないわー
腰振り大明神：精神科へGO！
～LOGIN アルベルト～
美波：ひどい！
美波：あれ？
KAITO：またかよw
腰振り大明神：今度は何やらかしたセクハラ常習犯
アルベルト：やらかしてる前提なのおかしくない？
アルベルト：俺ほど品行方正なイケメンゲーマーはいないというのに
腰振り大明神：鏡見てから発言しろブス
アルベルト：あ？ やんのか生臭下ネタ坊主
美波：まーたはじまったよ
腰振り大明神：久しぶりにキレちまったぜ
腰振り大明神：上等だ、屋上に出ろ
アルベルト：やってやんよ！ 俺の体現蒼冴邪剣でナマス切りにしてやるぜ！
腰振り大明神：いってらっしゃい
アルベルト：いや、お前は出ないんかーい
アルベルト：もういいぜ
腰振り大明神：どうも
アルベルト：ありがとうございました～
KAITO：はいはい
KAITO：で？ なんでまた戻ってきたん？
アルベルト：そうだ！ 聞いてクレヨン！
アルベルト：馬鹿と遊んでる場合じゃねえんだよ！
腰振り大明神：はー、キレッソ大阪
KAITO：どうどう
美波：それでー？ またセクハラ？
アルベルト：強制転職させられた
アルベルト：キャラクターに続いて今度はジョブまで勝手に決められたんだけど？
アルベルト：なにあのゲーム？
腰振り大明神：ＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷ
腰振り大明神：お前にＷＷＷ自主性ってもんはＷＷＷＷＷＷねえのかよＷＷＷＷＷＷＷＷ
アルベルト：キャンセル不可の強制イベとか無理ですやん
美波：いろいろ大変そうだねー
KAITO：でもなんだかんだ楽しんでんじゃん？
KAITO：ってか転職施設でジョブって変更できなかったっけ？
アルベルト：【悲報】転職施設の存在しない僻地に拉致される【逃亡不可】
腰振り大明神：Do you koto nano?
腰振り大明神：You wakaran. Sangyo de yoro?
アルベルト：ジジイに騙されてレベル1無職で適正レベル60の魔境へ
アルベルト：ジジイの知りあいのジジイと話してたら強制転職イベ
アルベルト：ジジイの鍛冶屋しか存在しない過疎村で再転職できる筈もなく
腰振り大明神：ＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷ
腰振り大明神：ジジイ好き杉内
アルベルト：1000%騙されただけなんだよなあ
KAITO：さすがにこれは……
美波：でもアルだしねえ……
アルベルト：どういう意味だコラ
アルベルト：俺はコンプライアンスに厳しいこの世の中でも平気で女を殴る男だぜ？
腰振り大明神：女の子の手を握ったこともない童貞が何か言ってる
アルベルト：ど、どど、童貞ちゃうわ！
美波：それで童貞君はなんのジョブになったの？ そんな変なジョブ？
腰振り大明神：魔法使いに決まってるだろう
腰振り大明神：もちろん童貞的な意味で
アルベルト：クッ……当たらずとも遠からずなのが悔しい……
KAITO：マジかよエリート魔法使いさんじゃん
腰振り大明神：草草オブ草
アルベルト：陰陽師だよ
アルベルト：魔法系だけど魔法使いじゃないから童貞じゃない
アルベルト：いいね？
KAITO：陰陽師？
KAITO：そんなジョブあったっけ？
腰振り大明神：は？
腰振り大明神：事前情報を調べてたけどそんなジョブ聞いたことないんだが？
アルベルト：テメェの検索能力が低いんだろネットベイビー
アルベルト：幼稚園からやり直せメーン？
腰振り大明神：個人情報をAFOスレに晒してやるからな
アルベルト：ごめんなさい
美波：陰陽師おもしろそうじゃないー？
腰振り大明神：自慢しにいちいち戻ってくんなカス
腰振り大明神：かまってちゃんでちゅかー？
アルベルト：一番なりたくなかったジョブだわ
アルベルト：HN:安倍晴明 ジョブ:陰陽師
アルベルト：狙いすぎとちゃう？
腰振り大明神：めちゃめちゃ陰陽師好きですやん
KAITO：逆にその名前でどのジョブになろうとしてたんだよ？
アルベルト：もちろん戦士
腰振り大明神：無理だろＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷ
腰振り大明神：キャラクター作り直せＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷ
腰振り大明神：あＷＷＷＷＷＷＷＷ作り直せないんでしたねＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷＷ
アルベルト：殺す
美波：さすがにｗ
KAITO：なるべくして陰陽師になった感じだな
アルベルト：まーーじで萎えた
アルベルト：AFOやめようかな……
腰振り大明神：やらないならくれ
アルベルト：それは無理^^;
腰振り大明神：やっぱり氏ね
美波：でもやめちゃうのもったいないよー
KAITO：今まで戻ってこなかったってことは結構楽しいんだろ？
アルベルト：そうだけど……
アルベルト：しかしなぁ
KAITO：AFOをくれたのは誰だっけ？
アルベルト：……母さん
KAITO：母親の好意を無下にするつもりか？
腰振り大明神：～中略～
アルベルト：やっぱり母さんは最高だぜ！
アルベルト：AFO戻ります！
腰振り大明神：チョロすぎワロタ
美波：このチョロさがアルのいいところでもあるから……
美波：あ、そういえばアルさ
アルベルト：ん？
美波：サタンちゃんに連絡したんでしょうねー？
アルベルト：シ、シタヨー
腰振り大明神：確実にしてない
KAITO：確実にしてないな
美波：確実にしてないわねー
アルベルト：ち、ちゃいますねん！
アルベルト：連絡しようと思ってスマホ見たんですよ？
美波：じゃあ、なんで連絡してないのよー
腰振り大明神：ヘタレたんだろ
腰振り大明神：アルベルトと書いてヘタレと読むからな
アルベルト：人をヘタレの代名詞にするな！
KAITO：なんで連絡してないんだよ？
アルベルト：数時間で未読メールが120件
アルベルト：差出人はすべて同一人物
アルベルト：メンヘラで塗り固められた件名
腰振り大明神：（ ＾ω＾）……
美波：あらー
アルベルト：最後のメールは
アルベルト：『件名：どこまでもおいかけるから』
美波：……。
KAITO：……。
腰振り大明神：……。
アルベルト：あなただったら返信をしますか？
美波：さーて、アル！ AFOで待っててね！
KAITO：俺達が合流したらレベルあげ手伝ってくれよな！
腰振り大明神：またAFOで会おうね！
アルベルト：イイ性格してるぜテメーら
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なんだかうまく丸め込まれたような気がするが、いつも通りのやり取りに救われた気もする。ホント馬鹿ばっかだけど、いいネットの友達を持ったぜ。
「『なるべくして陰陽師になった』か……」
まるで最初から決まっていたかのようにイベントが進んでいって、気づけば『陰陽師』になっていた。これを偶然と片付けるのは些か早計に過ぎるだろう。
『安倍晴明』と『陰陽師』……これはもう切っても切れない関係にある。明言されてはいないものの、どうやらAFOには様々な隠しシステムがあるらしい。その中に『名前に関係するシステム』があったとしても不思議ではない。
掲示板を軽く流してみても、腰振り大明神が言うように『陰陽師』というジョブについての情報はどこにもなかった。試しに書き込んでみたら釣り認定されて煽られたし。すぐに煽ってくる余裕のない人間はイヤだね。
儀式の直前に『特殊転職クエスト：レッツゴー陰陽師』というアナウンスがあったことから、『特殊転職クエスト』を受けることで就くことができるレアジョブかもしれない。そう考えると、ゲーマーの血が騒ぐというもの。
まだ『安倍晴明』という名前でゲームをすることに抵抗はある。
自分の名前であって、自分の名前ではない。
この世で一番愛すべき名前であって、この世で一番憎い名前。
しかも、これからは『陰陽師』まで背負っていかなければいけないのだ。俺のトラウマの根幹ともいえる、『陰陽師』を。
……でも、もしかしたらこのゲームが何かのキッカケになるかもしれない。自分の名前を、自分自身を好きになるキッカケに。
まさに自分探しの旅ってやつだ。『ユアストーリーシステム』なんてシステムがあるくらいだし、こんな動機でAFOをやるヤツがいたっていいだろう。
俺はちょっとばかり慣れた動作でフューチャーズギアを被り、電源ボタンを押した。
「レッツゴー陰陽師！」
