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第65話 帰路。

 2時間もあれば、色々な話ができるのだが、相変わらず僕は方向を確認しながら、前を見ているので、助手席に居る方としか、ゆっくり話はできない。ちなみに今は国王様ね。まあ、国王様御一行は道中の空からの眺めを堪能しているからいいのか。窓から見る上空からの風景と、テレビで皆さんに見せた日本の空撮写真の風景とのあまりの違いに、愕然としていた。まあ僕の家の周辺はファガ王国の田舎と変わりないんだけども。


「アタール君、そういえばサシャに贈った銀時計だが、悪いが余が頂いた、すまんの。」


「それはアート様からお聞きしました。金貨2000枚の価値が付いたと聞いてびっくりしました。」


 あ、国王様が舌打ちした上に振り返って、めっちゃアート様を睨んでる。これは今僕に聞かせて驚かせようとしたんだな。アート様は『何?』って首かしげてるけど、これは後で何か言われるんだろうな。ご愁傷様です。


「そういえばアタール君。ドラゴンを含む幾千の魔物を屠り、強大な魔力を持つその身、ファガ王国のために、宮廷魔法使いとして活躍してくれんか。アタール君ほどの宮廷魔法使いならば貴族でなくとも、数多おる貴族を顎で使うことができるぞ。」


 屠ってないけど。まだ生きてるし。


「いえ、それは謹んでお断りいたします。もちろんファガ王国のために力を尽くすことに異存はありませんのでご安心ください。アート様に謁見したときにも申したのですが、僕はこの国がけっこう好きですから。」


 僕の目標に、役所勤めは無いし。気分を害すかなと思ったけど、大笑いを始めた。『亡くなったサシャさんの旦那と性格が似とるの。』と言われたけど、あんなに本を集めたり、しっかりと研究記録や日記のようなものをつける根気は僕にはないな。まあ、あの日記は字が汚くて読めないけど。


 ログハウスとは打って変わって他愛ない話をしているうちに、遠くに王都が見えてきたので、地上に降りる。光学迷彩風結界を解除して、皆さんに車を降りてもらい、王城の会議室に転移しようとしたら、国王様がまたごね出した。今度は車で道を走りたいというので、渋々了承して、10分ほど道を走らせた後に、転移した。


 会議室が出ていった時と同じまま。地図や魔石ををインベントリから取り出し、テーブルの上に置こうとすると、持って行っていいと言われたけど、実はもう複製してるので、丁寧にお断りした。というか、魔石が複製できるのは盲点だった。魔石は魔物から得るものという既成概念のために、今まで試しもしていなったのが悔やまれる。今度生物の複製も・・・いや道徳的見地でこれは試すのもやめておこう・・・。


「アタール君、今日は本当にありがとう。そしてこれからよろしく頼む。」


 国王様が頭を下げたので、さすがにここはアート様のときと違い、


「国王様、平民に頭を下げないでください、それにまだ何も結果は出していません。もしも上手く結果が出せたら、そのときに褒めていただくだけで結構です。」


 と、一応もしもの時にと考えていた、ありふれた言葉を返した。


「アート、誰か呼んでこい。」


『我』とか普段言っている方が、使いっ走りだ。アート様は部屋を出て、すぐに使用人を呼んできた。国王様はその使用人になにやら耳打ちをしている。この人たち、ひそひそ話好きだな。以前作ろうと考えていた盗聴魔法でも作ってみようか・・・。


 特に話が残っているわけではないのに、まだすぐに解散というわけではないらしい。


「今お茶を用意させる。席に座ってしばし待て。アタール君、余が与えたメダルについて、説明しておく。どうせアートは何も言っておらんだろう。」


 アート様は頭をかいている・・・。サシャさんは手を口に当てて笑いを隠しているから、いつもの事なのだろう。


「余が国王として正式に招待した客に渡すメダルだ。ようするに国賓だ。それは通常、他国の王室か教皇に渡しているもので、我が国に滞在している間それを提示することで、王国として最大限の便宜をはかる。サシャが手紙でそれくらい重要な人物と言い張っていてな。さすがに早馬を出して余もサシャに再度確かめたわ。」


 誰だよ、通行証とか言ってた人は。あ、目をそらした。


「コンコン」


 会議室の扉がノックされ、アート様が『入れ』と言うと、使用人が、お茶やお茶菓子を用意して、素早く立ち去って行った。ん、いや立ち去っていない方々もいる。


「おい、ここへ。」


 国王様が声をかけると残っていた使用人さんが、奇麗な箱をもって近くに寄ってきた。


「アタール君、これは報酬でもなんでもない。とりあえず受け取れ。」


 そういった時に、奇麗な箱が僕の前に置かれ、箱の蓋が開けられた。中には金銀財宝の山、ではなく金貨がぎっしり詰まっている。アート様のときの金貨百枚も当惑したけど、これはもっと多い。


「それは時計のお礼だ。大金貨2000枚。受け取ってくれ。」


 複製できるから要らないとも言えない。しかしこの国の偉い人は、なぜこうも浮世離れした金銭感覚なのだろう。でも、ありがたく貰うけど。


「ありがたく頂きます。」


 エレナの目がグルグルしてる。この表情は初めてだ。まあ、一般的な冒険者の年収、666.666人分のお金だからねそうなるのもわかる。横からアート様が国王様に対抗したのか、サルハの街の領主菅をやるとか言い出したけど、それは丁寧お断りだ。そんなところに住んだら目立ちすぎるでしょう。


 そろそろお開きというところで、僕がひとつ提案というかお願いをした。


「皆さん、お願いがあるのですが、緊急時に僕が門を通らずとも、街中や村に転移しても問題のない方法を考えていただけませんか?今は必ず街壁の外に転移した後に、門番さんのチェックを経てから、先ぶれを出すという手順を踏んでいます。普通の訪問時は問題ないと思いますが、緊急時に転移した場合に、街門を通っていないことが問題になる可能性が大きいので。」


「ん?いや、メダルを持っているのだから気にせんで良いぞ。」


 え?そうなの?そんなセキュリティでいいの?


「国賓の方々はお忍びで動くことが多いのだ。まあ、門を通らずにというのはさすがに無いが、よほどのことがない限り、目こぼしするか、問題にしないのが慣例だ。入国後に身分を偽って歓楽街に行く輩もおるんでな。」


 お、歓楽街あるんだ。女性陣がいないときにそのあたりはゆっくりと・・・え、エレナの視線が、アート様が叔母さん呼びしたときのサシャさん並みに怖いんだけど・・・。


「結界守の村の場合は、今日のように私の家の前に転移してくれればいいわ。」


「では我は城に転移場所を用意する。」


「余も居城に転移場所を用意しよう。」


 なんだか、解決したようだ・・・。あとはアリバイ工作のために、サシャさんを結界守の村にお送りした後、いちどジャジルに戻り、3日後にサルハの街に向かうというシナリオを説明した。その3日の間に、結界守の村を再訪して、研究の説明をお聞きしながら、問題解決の糸口を探るという方向性に全員が同意し、駆け足での大移動会議は終わりを告げた。まだ陽も落ちてないんだけどね。


 シナリオ通りにサシャさん、アート様を送り届けたあと、島のログハウスに戻った僕とエレナは、今日一日のできごと話うことにした。そろそろ島に名前つけないとな。


「エレナさん、なんだか大きな話になってしまったけど、問題ないですか?」


「全然大丈夫ですよ。アタールさんのおかげで、今までの生活では考えもしなかった方々にお会いできましたし、それに皆さんとても優しいのです。こちらからの相談事だったのが、今回もアタールさんは自分と関係ない方々の人助けのために働かれるのも、わたしにとってはとても自慢できることですし、それに・・・わたし、エレナ・タカムーラって言われちゃいました。もうわたし、タカムーラ家の家族なんだって、嬉しくて。」


 エレナがうるうるしてる。今のところは家族ってことだから、何とか大丈夫かな。これ、奥さん・・・とか言われたら、嬉しくはあるけど・・・いや、無理だな。ここは、ペンディングにしておこう。

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