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第61話 ログハウスで会議。

「その全く知られていない転移魔法や、アーティファクトの魔道具でしか確認されていない、飛行魔法、それに馬より速く走るアーティファクトか・・・。」


「はい。普通ならば強行軍で4日、いや、叔母様の家を経由していますから、一週間はかかろうという工程を今日は1時間ちょっとで参りました。そして、参りました理由はすべてアタール君の事柄についてです。陛下は私に説明をとおっしゃいましたが、ここはアタール君に。」


 もう、『我に任せよ』ではないのね。王様に送られたサシャさんの手紙に何が書いてあったかは知らないけれど、ここはスピーディーに話を進めたいし、僕たちを除く3人は、僕が『のんびりと自由に生きる。』ためのキーマンでもあるらしいから、思い切って全てをぶっちゃける必要もあるかな。


「サシャさんの手紙で、何をどこまでお知りになっているのかはまだ測りかねますが、おそらく色々と見ていただいた方が早いと思います。ところで皆さん、数時間お時間を頂けますか?少し移動して、いろいろ見ていただこうと思います。」


 異世界というか、地球からの転移者というのも、告げようと思う。エレナの方を見ると、察してくれたようで、頷いてくれている。


「ついでと言ってはなんですが、ファガ王国の地図があればお借りしたいのですが、よろしいでしょうか?」


 国王様は使用人さんの代わりに、アート様を顎で使って、地図を用意させた。僕は人払いに関して確認してもらい、僕の別荘、実験施設のある島に転移して説明することを話した。エレナさんは、口をあんぐりと開いているけど、さっきの頷きは、島に行くことを察してくれたわけじゃなかったのか。女の子は難しいな。


 転移や飛行について危険性がないことは、実際に体験したアート様とサシャさんも話してくれているが、どちらかというとどれたけ楽しかったかとか、遊園地のアトラクション体験話のようになっている。


「数時間会議室に籠ることにすると、昼食を挟んでしまいますが、大丈夫でしょうか。」


 エレナさん、有能秘書ぶりを発揮。すごいな、国王様にも物おじしなくなってる。そういえば使用人さんとかが、昼食をどうするか聞いてくる可能性があるよな。それで会議室が無人になっているのがわかって、城内が大騒ぎになる可能性がある。


「うむ、先ほど人払いした折、余が声掛けするまで誰も近づくなと命令したから、大丈夫だ。会議は場合によっては丸一日に及ぶこともある。飯抜きでな。」


 エレナがものすごく残念そうな顔をしているのは何故なんだろう。もしかしてお昼ご飯抜きになるのを心配しているのか・・・。今度真意を確かめてみよう・・・。魔石と地図は僕がインベントリに預かり、僕も含めてみんなをひとつに包むイメージで結界を張る。この結界ごとの転移だ。


「それではこのまま転移します。<テレポート>。」


 今更だけど唱えてみた。あ、インベントリのとき唱えるの忘れてたな。とにかく、一瞬でログハウスの前庭に転移した。


「「「な、なんと・・・これは。」」」


 目を瞑っていたわけではないので、一瞬で景色が変わったことに皆さんが戸惑っている。いや、アート様は長距離転移はもう既に体験したよね。みんなを包む結界を解除して説明する。


「今のが転移魔法で、ここは僕が今開拓している島です。あとは家の中で。島には名前を付けていないから、まだ正確には知りませんが、王都からだいたい、1000キロ位は離れていると思います。」


 まだ驚愕から復帰しない国王様とサシャさんをそれぞれアート様とエレナがサポートしているので、玄関の扉を開き、皆さんを家に招き入れる。リビングのソファに皆さんを案内し、優雅にお茶を用意する時間も勿体ないので、ガラスのコップを並べて、2Lのペットボトルのレモンティをそれぞれ注ぐ。冷たいやつ。


「それでは、飲み物も用意しましたので、説明を始めたいと思います。まず僕は・・・」


 異世界、ようするに地球の事を説明するのはすごく難しかった。しょうがないので、大型液晶テレビに、スマホで『空撮・日本』のキーワードで検索した画像を表示して、視覚に訴えることにする。都会の街並みや、自然の風景などが次々に画面に表示されていき、ぼくはそれに、いい加減な解説をつける感じだ。


「僕はこの絵にある世界から来ました。そこからの転移者です。ファガ王国とは全く違った場所であることは理解していただいたと思います。」


 みんなコクコクと頷いている。高層ビル群や夜景には圧倒されていたからな。液晶テレビ65インチで良かった。さすがモデルハウスだ。


「ジャーパン皇国と僕が言ったのは、僕の住む国は天皇、そうですね・・・皇帝・・のような方がいます。そして外国人が僕の住む国を『ジャパン』と呼んでいます。他の呼び方も有りますが。それでジャーパン皇国という出身国名を名乗らせていただきました。」


 いちど皆さんの顔を見渡してからさらに続ける。


「その国とういうか、向こうの世界で魔法が使える人はひとりもいませんでした。僕の場合、未だに理由もなにもわかりませんが、突然にこの世界、えっと、サシャさんの家の近くに転移させられ、気が付くと魔法が使えるようになりました。それに気づいたのも、サシャさんの家ででした。そのときには、どんな魔法が使えるのかはわかりませんでしたが。」


 そのときに試した魔法については、いまのところ蓋をしておく。デュプリケイトはいろいろ不味そうだし、リーディングもやばそう。一応注意事項として、あまりにもこの世界とのテクノロジーの差があるので、この島以外には、先ほどの車しか持ち込んでいないという説明はしておいた。


 テクノロジーの詳細については語っていない。おそらくだけど、この世界の魔法で代替え可能なものも多いので、あまり各方面に知られて、急激なブレイクスルーが起きることは警戒している。他国や教会についての知識も全くない状態なので、どこに敵や危険が潜んでいるのか予測できないし。アート様の諜報員の例もあるし。空撮の写真のみ見せたのにはそういう理由もある。


「公爵のくせに、いやもう元公爵か。その魔法研究バカだったヤツの家の近くに転移したとはな、なかなか縁があるな。」


 サシャさんの旦那さんが、公爵だったのか。サシャさんはその跡を継いだ感じかな。子供は娘さんって言ってたし。この国の仕組みも機会があればお教えいただきたいものだ。


「そして旅の途中でいろいろ試した結果、先ほどの魔法を発現して、縁あってサルハの街に到着しました。街での細かい出来事は今は割愛します。そして縁あって、アート様に謁見する機会を得ました。そのときに、国王様とアート様からのメダルを賜わりました。」


 あまり関係ないかもしれないけれど、サシャさんの手紙に関係するだろうと思い、一応メダルをインベントリから出して、テーブルの上に置いた。みんな、ふむふむと頷いている。エレナは一緒に頷く必要ないからね。テレビの電源を落として、話をさらに続ける。ここからが、僕の相談事のメインだ。


「そしてこの島についてです。まず地図を見てください。」


 先ほどお借りした、ファガ王国の地図をマグネットでホワイトボードに張り付けて説明を行う。


「国の北側。ここ・・・からここが魔物の山という認識でいいですか?サシャさんにお聞きしたいのですが、結界の範囲はどんな感じなんでしょうか?」


 サシャさんが、国王様やアート様とひそひそ話をしている。エレナはひくひくと文字通り聞き耳を立てているな。席から立ちあがったサシャさんが、ホワイトボードの前にやってきた。


「アタールさん、ここからお話することは、この国の国家機密になります。絶対口外しないようにお願いします。エレナさんもいいですか?」


 僕とエレナは頭を大きく縦に振り、了承の意を表す。まあ、大規模な結界となると国の防衛の話だもんな。エレナさん、数日前までは、集落の小娘だったのが、今は国家レベルの話を国王や公爵、辺境伯と席を並べて話してるとか、どんだけ環境激変してるんだよ・・・。僕も同じようなものか。

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