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第28話 奴隷商にて。

ストーリーのスピード感も含め、私の文章力下での主人公一人称視点の限界が既に見えてきましたね・・・・。かといって全部書き換えたりサイドストーリーというのもないと思うので、この物語については、完結までこれでいきます。

 奴隷商は、商業人区と職人区の間にあった。区分けされた場所には広場があり、行商の許可を持った商人などが集まり市を開いたりもしているらしいが、今日は屋台が何軒か出ている以外は、ただの広場として存在している。


 僕の泊っている宿にも結構近かった。建物も普通というか、周りに溶け込んでいて、奴隷商であると言われなければわからない。景観保護条例でもあるのだろうか。


 僕の服装は相変わらず、旅人の服なので舐められないか心配だけれど、門番らしき方は一瞥しただけで僕たちを素通りされてくれた。


「ようこそ、いらっしゃいませ。」


 初老の男性が、入店してすぐに丁寧に声をかけてきたので、まずは初めて奴隷商を訪れたことを告げると、応接室のようなところに通された。


「私は番頭のマックスと申します。さてさて本日はどちらの方が身売りでしょうか。」


 うっ、身売りだと思われていたようだ。かなり失礼な話だけど、こういう時は怒らずに冷静に。まあ、僕の服は見た目新品ではあるけれど普通というかちょっと旧式の旅人の服だし、エフゲニーさんについても、リペアとクリーンで小ぎれいになってはいるが、それこそ村人の服という感じではある。


 こういった風体の方々が普段身売りに来るんだろうな。門番がすんなり通した理由もいまさらながら気づいた。


「いえ、どちらかというと購入です。」


「申し訳ありませんでした。それではご用件をお聞きします。」


 こんな行き違いでもマックス氏が顔色ひとつ変えないのは、さすがプロだが、これが日本なら翌日には、大手SNSで炎上必至である。早速要件をお伝えする。賃金奴隷の在庫に、この街のスラム出身者がいないかどうか。


 そして奴隷の契約などについて。マックス氏は事務的ではあるが、的確にすべての質問に答えてくれた。まず、この街のスラム出身者については、現状は不明とのこと。


 なので後ほど在庫を見せていただいて確認することになった。契約についてはスラムで聞いた話の方が正確だったダフネさんの情報は不正確というより不足気味という感じ。


 身売りの賃金奴隷は、自己買取について事前に契約しておくことが可能だそうだ。ただし、最低限奴隷としての販売価格の倍は必要だそうだ。ちなみに、身売りの金額は、販売価格の3割程度らしいから、7倍近い金額になる。


 それくらいじゃないと、高いお金出して買った主人にメリット無いもんな。まあ、普通は自己買取など無理な話だ。


 契約については魔道具で所有権を記録した書類と、対になる奴隷紋がセットになるそうだ。奴隷紋で奴隷である証明とともに、設定したキーワードにより痛みを起こすとか、筋力を落として行動不能にするなど、精神・記憶干渉ではなく、神経干渉。守秘については絶対的な対応はなく、発する言葉にあわせて、痛みを起こすなどの設定ができるだけで、絶対的なものは無いそうだ。


 奴隷でも嘘発見器のないところでは嘘はつけるし、言い回しさえ気を付ければ情報を流せるってことか。書類の方は無くしたときは最寄りの奴隷商に奴隷をつれていけば、再発行してくれるそうだ。


 というか神経干渉できる魔法があるってかなりチートじゃないの?と思ったが、誓約の魔道具に触れさせながら直接(魔法で)皮膚に刻み込む必要があるので、誰彼構わず奴隷にすることはできないそうだ。


 そもそも奴隷紋を刻む魔法自体がレアらしく、奴隷商の数自体すくないという情報もいただいた。ちなみに奴隷商がレアであるという説明の時のマックス氏は、ふんすと鼻孔を膨らませながら自慢げだった。


 キーワードや制限については、奴隷紋に触れながら所有者が魔力を込めながら念じることで設定可能とのこと。逃亡防止用に、主人から一定の距離を離れた場合発動するとか、けっこう細かく設定できるのはわかった。


 主人・仮主人なども設定可能。教育は購入者担当。犯罪行為をしたり貴族などに無礼を働くと、所有者責任になるそうだ。もし他人に殺されたりケガさせられたときは、逆に損害賠償を請求できる。主人によるけどスラム住民より待遇いいかも。


 実際のところ奴隷は高い買い物なので、元を取ってさらに利益が確保できるまでは、比較的大切に扱われ、商人が主人の場合、教育によって奴隷解放後には、そのまま平民として登録し、従業員として働いている方もいるというが、こういうのはだいたい広告用のもの凄くまれなケースだと思うので、話半分で聞いておく。


 奴隷は開放しただけでは棄民とかわらないそうだ。


 とにかく、一応在庫奴隷のチェックを行いたい旨を伝えると、見学料を要求された。入場料のようなものだ。料金も大銀貨1枚とかなり高額。これはおそらく冷やかし防止だろう。貴族とか明らかに金持ちそうな商人からは徴収していないに違いない。ちゃらりと、大銀貨2枚をマックス氏の手に乗せる。彼が初めて笑顔を見せた。心からの笑顔のようだ。


 奴隷および奴隷紋の取扱説明の書冊子を渡され、店舗奥のかなり広い別室に案内されてしばらく待つ。と、ノックとともに、マックス氏が使用人と奴隷であろう方々を伴って入ってきた。


「当店には今犯罪奴隷はおりません。また、戦争奴隷もここ数年はおりません。男女、年齢、疾病、身体欠損の有無を問わず、在庫すべて連れてきております。」


 スラム出身者の確認なのだから、そうなるだろう。みんな簡素な貫頭衣を着て、首から番号札をかけている。総勢12名。それに対応するであろう価格が書き込まれた履歴書のような書類が手渡されたが、これはエフゲニーさんにお任せ。僕にはスラム出身者の顔など分からないからね。


 エフゲニーさんが書類を見ながら奴隷たちに質問している間僕は手持無沙汰なので、ずらっと並んだ奴隷たちを見渡すだけ。2813、番号札は、この奴隷商が取り扱った奴隷の通し番号だろう。


 小声でマックス氏に数字の意味を聞いてみると、御触れで20年前から記録の義務ができて、そのときからの通し番号だそうだ。年間140人かよ。と思ったけど犯罪奴隷もいると考えれば、そんなもんかと納得しておいた。


 平均大金貨20枚として総売り上げ14億円相当、年間約7000万相当。まあ、奴隷の衣食住や税金、従業員給与もあるから、純利益はわからんけども。そこそこいい商売なんだろうなぁ。あ、左側から2番目の猫耳の女の子磨けば可愛いかも。その隣の犬耳も・・・。


「アタールさん、この中にスラムの元住民はいないようです。どうしますか?」


 どうしますか?と聞かれても、約束ではスラム出身者の保護だしなぁ。一度履歴書のようなものを見せてもらい、確認する。元冒険者の男性に女性2名、一塊になっている元商人一家5名は『金貸しから借りた金が返せず』か。まさに借金奴隷だな。


 他の4人は。近隣農村からの身売りで、成年の女性ばかりか。というかあの猫耳も犬耳も成年なんだ。ぺらぺらと価格を確認してみる。成人男性が大金貨20枚、女性は18枚の人と10枚の人、亜人らしき方々は15枚、子供は人種男女問わず12枚か。安いのは欠損とか病気かな。全員買っても大金貨200枚行かないな。


「マックスさん、みんなに質問してもいいですか?」


『どうぞ』許可を貰ったので、駆け出しの商人であることを告げたあと、僕に買われたいか聞いてみた。一応全員に自己買い戻し契約を付ける事を条件に付けた。仕事の内容は言ってない。というか決めてない。うん、僕とエフゲニーさんの服装のせいか、みんなの反応は鈍い。なので、今日のところはそそくさと撤退することにする。話も聞けたし。


「まあ、すぐとは行かないもんですよ。でもこれで、アタールさんがスラム出身奴隷をちゃんと買い戻そうとしているという説明は、みんなにできますから良しとしましょう。」


 帰り道、エフゲニーさんが、誰も買われたがらなかったことを気遣って声をかけてくれたのだが、僕が気になっていたのは、猫耳と犬耳の奴隷のことだけだった。帰ってから奴隷および奴隷紋の取扱説明書の冊子を熟読しよう。


 スラムのイワン一味の小屋(いやもうイワン小屋と名付けよう)に帰ると、リスト作りのための住民の列ができていた。小屋に入って確かめると、どこかからか買ってきたのだろう、食材の山があった。リスト作りの円滑化のため、食材配布を餌にしているそうだ。ついでに服代と湯浴み代として銀貨1枚ずつ配っている。マキシムさんなかなかやるね。


 日が暮れる直前までリスト作りは行われ、明日以降は予定通り僕抜きでの住民冒険者登録だ。さて、明日僕は久しぶりに家で用事を済ませた後はのびりするか・・・。冒険者登録をはじめ、もろもろのスラム地区の今後予定を相互確認したあと、宿に向かう途中の路地でいつものように自宅に転移した。宿全然泊まってないね。

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