第14話 冒険者会館をみつけた。
ブックマークおよび評価ありがとうございます。励みになります。書き溜めのない執筆ですので、文体が変化する場合もありますが、自身で違和感を感じたところは、後日まとめて改稿すると思います。
店の前の大通りには、多くの店が並んでいる。ダフネさんのお店のような個人商店が主のようだ。さすがにモールやスーパーはない。洋服店、金物店、家具店などなど生活に必要なものは大概売っている。薬屋や武器のお店もある。病院らしき場所はまだ見ていない。街は領主の城、領主館を中心とした城下町となっている。
領主の城とはいっても、領主館は実際には辺境伯の別荘のようなもので、代官がこの街のトップ。その屋敷の周りには、主に役所の重鎮や比較的裕福な商人が住んでいるらしい。
まあ、まだ詳しいことはよくはわからないが、領主館のすぐ周りが、いわゆる高級住宅地、その次に商業地、そして一般住宅地があり、その外側に農地や倉庫やいわゆる工業系の職人街。さらに街の壁の外側にも、それなりの農地があるという。
大きな道は城を中心に放射状、そして同心円状にあり、東西の道はそれぞれの街の壁の門に通じている。ちなみに、街や領主館に壁はあるが、堀はない。
とにかく、暇にあかせて、街中を歩き回ると城の東側に、いわゆる役所街のようなところを見つけた。図書館や商業会館、工業会館とか、そんな感じの建物が並んでいる。飲食店や商店などもダフネさんの店のある通りより多いから、この辺りが実質的に街の中心部なのであろう。
僕はひとつの建物の前で足を止めた。『冒険者会館』。看板にはそう書いてある。表から見た感じでは、看板がなければ、どういう場所かはわからないけれど、ここは名前からして訪れるべき場所であろう。
僕の物語やゲームベースの異世界知識では、冒険者ギルドといえば、国をまたにかけた大組織で、冒険者レベルが記されたカードなりが発行され、各階級に分かれて、ギルドから出される依頼を受けて、魔物狩りや討伐を行うというもの。
果たしてこの異世界の場合はどうなのだろうか、と、恐る恐るだが早速中に入ってみる。
ふむ、なんとなく既視感があるのは、【エルフ村】での想像イラストやなにやで、接した冒険者ギルドと似たつくりだからであろう。ほんと地球人というか日本人の想像力には恐れ入る。
職員が待ち構えるカウンターや、おそらく依頼書が掲示されているであろう掲示板、そのほか、飲食できるスペースなんかも併設されている。
違うといえば、ほとんど人が居ないところか。
猫耳やいろいろな亜人との出会いを想像したのだけれども、未だ出会いはない。というか、こちらから声をかけたり、マジマジと道行く方々を見ることは意識的・・・に、いや無意識に避けてはいるので、出会うことは無いのだけれども。伏し目がちに視線を恐れて歩いていたのではない、決して。景色は見ているし。
ほとんど人のいない会館内を歩き回る。掲示板を眺める振りはしているのだ。そしてカウンター方面にも、時折視線も送ってみてはいる。が、誰も声をかけてくれない。冒険者会館、敷居高すぎだろう。
ダフネさん家の誰かに、付いてきてもらえばよかった・・・。などと考えていても進展がないので、コンデジを取り出し、撮影モードに入る。お上りさんモードならば、他人の視線も気にならないからね。ちなみにこちらから声をかけないのは、カウンターに男性職員しかいないからでは決してない。
いい感じに、会館内部のひとり撮影会を開催していると、職員らしき方が近づいてきた。これで、お声がかかるだろうから、意識を対人モードに切り替える。
「君、なにしてんの?」
なんだか横柄な質問。もちろん、写真を撮ってるとかは言えないので、「見学してます。」と、簡潔に答えると、そのまま遠ざかって行った。
なんだよ、コミュニケーションしろよ!異世界人はコミュ障か!せめてそこは『何か御用ですか?』だろうに。と、文句も言えないまま、撮影会は続くのだった。まあ続かないけど。なぜならば、先ほど遠ざかって行った職員らしき方が、さらに2人の職員らしき方を連れてきた。
「君、先ほどから動きが怪しいのだけれど、ちょっと話聞かせてくれるかな。」
ということで、別室に丁寧に案内されることになった。普通のコミュニケーションを通り越して、職質からですか。しかし僕には、伝家の宝刀、結界守の村の紹介状があるので心配はしていない。
少し汗ばんだり、脈が早くなっているのはあくまで、新たなコミュニケーションへの期待からである。
「身分証持ってる?ギルドに登録してないよね、君。」
狭い部屋で、3人の男性は僕の対面に座っている。まるで取り調べのようであるが、僕は満を持して、結界守の村の紹介状を取り出し、提示する。これで万事解決のはず。
無罪放免どころか、『これは失礼いたしました。結界の村の客人とは知らず、とんだご無礼を』となるであろうことは、容易に想像できる。
「で?」
「は?」
いやいや、結界守の村の紹介状ですし、これ辺境伯の領地では万能なんじゃないの。『で?』って何?脳内は、結界守の村に転移したとき以上のパニック状態に陥った。
「いや、紹介状が・・・」
「うん。紹介状は見せてもらったが、何の目的で不審な魔道具を持って冒険者会館をうろついているのかの説明はしてもらってないね。」
あ、少し口調が優しくなった。睨まれる目線は怖いけれども、ならば対話も可能であろうということで、異大陸からの巻き込まれ転移から、結界の村を出てサルハの街に商人のダフネさんと同行したことを説明する。
「まあ、前代未聞だが、ここに来た経緯はわかった。それで、その魔道具で何をしようとした?ちょっと見せろ。」
まだ不審者扱い。しかも、コンデジを含めて持ち物検査も開始されたので、そこは争いごとを好まない僕は素直に提示する。その間、また別の職員がやってきて、何やら水晶玉のようなものを置いて行った。