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ライ麦畑に連れてって

作者: 桜倫

女子高生の私が文章を書こうと思った原点

何気ない日々に飽き飽きしてきたそんな人たちに届いてほしいです。

行きたくなかったから、学校に行かなかった。中学のそこそこ仲良かった嫌われ者の先生から「お前は気分屋だからな」とよく言われていたことを思い出した。高校は、行かなくても家に電話がかかってくることはない。だからといって、無断欠席するようなタチじゃないと踏んでいた自分が、まさか学校をサボるとは…去年の自分は驚くだろう。去年は、アホみたいに勉強してた。親の期待と塾の業績と学校の知名度に圧力かけられながら。


今は、幸せだ。ちょっと名だたる進学校に進んだために、周りは勉強ができる。かなり。だから、自分の成績は中の下。親も成績にはあまり興味を示さなくなった。今は、オール5のハイパー中学生の妹が標的らしい。妹 は、勉強できてスポーツ万能、私と違って友だちも多い。いわば、絵に描いたような優等生だ。親の言葉を借りると万人ウケするってやつ。

私は、人の好き嫌いが激しく、付き合いが限られている。高校で未だに、毎日ラインしたり教室移動したりする特定の人がいない。生活しにくいといえば、学校生活は送りにくい。けれど、小中とほとんど周りの環境が変わらなかったから、友だちの作り方を忘れてしまった。クラスの打ち上げにも参加せず、はや、もうクラス替えの時期となった。


また、こうやって今日も学校を自主欠講してる。

自主欠講と言うと響きがよい。サボりというと、もう不良みたいだ。今日は、表参道のスターバックスに朝から入り浸っている。期間限定のフラペチーノが、ようやく飲めた。いつも、帰りによると「SOLDOUT」のシールが貼ってあるメニューが出されるだけだ。だから、奮発してグランデで頼んだ。学校の方には、最寄り駅から3駅行かないとスタバがない。周りにも、行ったことがない子ばかりで驚いた。あと、スタバでお茶=遊びに行くらしい。私の感覚では、勉強したり、友だちとの待ち合わせに使ったりであったからだ。


わざわざ、片道1時間半通学にかけて郊外の学校に行くのは制服がないのに惹かれてだ。

アイロンはしなくてすむし、スカートのひだのしわも気にしなくてすむ。なによりもなにをきてもなにも言われないのだ。

といっても攻めた服を着てくわけでもなく、中学の不良どもとつるむ時と学校のファッションは分けている。

いくら自由だからといって、スキニーはいてお腹を出したり、オフショルのワンピなんて着て行ったら1発で生徒指導だろう。


学校では静かに、中学の奴らとはズルズルと付き合ってる。別に楽しくはない。

中学の奴らとは自分だけが一時期バカ真面目に勉強したから、少し距離ができた。昔みたいに、放課後マックでだべったり深夜まで公園ではしゃぐほどの気力も破天荒さも無くなってしまった。今ではたまにLINEして、ご飯食べるぐらい。高校にちゃんと行ってるやつもやめたやつもいる。前と変わらずみんな楽しそうだ。何より生き生きしてる。「毎日充実してます!」って顔だ。それこそリア充。比べて私は、なに高望みした学校行って落ちぶれて毎日なんとなくすぎてってるのだろう。

惨めだ。

自分の選択が間違っていたと考えたくもないし、認めたくもない。でも、だからといって、必死で生きていく意味を探すほど自分が熱血じゃないことぐらいとっくのとうに知っている。何かをしたい、でも何もできない。


そんなことを思っていたら、フラペチーノが半分減ってた。もうすこし味わえばよかった。ちょっとの後悔が押し寄せてくる。


本を開いた。


読書は唯一の趣味だ。そう書くと、きっとメガネで教室の隅で縮こまっているような地味な子を想像するかもしれない。けど、私はさっき言ったように不良仲間がいて茶髪にして今は学校をサボった上で読書をしようとしている。本を読むのは偉い偉いと先生も親も口を揃えて言うけれど、これだと本末転倒だ。どっちが偉いんだか…

だか、きっと学校に行かずゲーセンに入り浸っているよりよっぽど文化的だ。


本に目を落とす。


サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」。


これで、読むのは何度目だろう。そんなに好きなら、買えばいいものを懲りずに図書館で借りては返している。読んだら満足してしまい、なかなか買う気が起きない。


表紙を開く。


主人公のクリスマス前後のちょっとした冒険を追体験する。寄宿舎を抜けて、バスに乗って女の子を引っ掛けて、結局入院、自宅療養するまで、そして彼がこの文を書くまでを。


彼は、私と違って自分のなりたいものがよくわかっている。言葉にしてしまうとなんとも詩的なのだが、彼は「ライ麦畑のキャッチャー」になりたいのだ。

自分はどうだろうか。ライ麦畑のキャッチャーになれるのか?

学校は辞めてても大丈夫だ。彼がそうであったから。

幸いにも文を書くことが得意だ。

現実ではちょっとイキる方向を間違え不良にも優等生にもなれない私が、文章を書くことでキャッチャーになれるかもしれない。


そんな漠然なことを考えて、フラペチーノを飲み干す。あぁ、夜は塾がある。さて、また図書館に行ってこの本を返して宿題をやらないと。


きっと、この本を読むのはこれで最後だ。

私は何十回も読む中で、生きがいを見つけた彼に憧れとそして嫉妬を抱いていた。

日々がつまらない、誰それが羨ましいそんなことを言うのはもう止めよう。


お店を出ると、雨が降っていた。


大丈夫、濡れていこう。

最後までありがとうございました。

これからまた投稿するつもりですので、気にしていただけたら幸いです。

キャッチャーへの一歩踏み出せました。

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