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旅立ち

前回から10年後の話です。

俺とイリスは城門の前にいた。

俺もイリスも身支度はもう整えた。

あとはここを出るだけ、なのだが……


「母さん……放してくれない?」


「もう少しだけ!もう少しだけだから!!」


子供かこの人……。

母さんは俺の腕にしがみついていた。


なぜこんなことになったのか。

話は一週間前に遡る。


一週間前。

その日は俺の16歳の誕生日だった。

そして同時に、今の自分の限界を思い知った日だ。

弱いのだ。

母さんに及ぶどころかアンナにすら勝ち目がない。

原因はわかっている。


そもそも魔族というのは魔物と呼ばれるものの中で理性を持つもののことだ。

では、魔物とは何か?

魔に属し、人間よりも強い魔力を持つ生物のことだ。

魔物はその種族により強さが大きく違う。

人間の子供にすらやられるような魔物もいれば、母さんのように人間の国を多数滅ぼすような真性の化物もいる。

なら、強さは完全に生まれた時に決まっているのか?

それは違う。

この世界には、経験値というものがある。

ゲームによくあるアレだ。

この世界では経験値を他の生き物を殺すことで得られる。

もちろん、弱いものを倒しても微々たるものしか手に入らないし、格上を倒すとより多くの経験値を得られる。

人間だとそれで徐々に強くなるのだ。

だが、魔物は違う。

一定の量の経験値を得ると進化と呼ばれるものが行われる。

進化をするとその魔物はより上位の種族に変化し爆発的に強くなる。

俺は今より強くなる方法はこれしかないと考えている。

それはイリスも同じだったらしく、俺達は城を出て修行をしに行くことを決意した。


したんだけど……

母さんがこの調子でなかなか出立出来ずにいた。

イリスも母さんの後ろに控えているアルフレッドとアンナも呆れた顔をしている。


「陛下……レクサ様も困っております。別に二度と会えないわけではないのですから、そこまで惜しまなくとも……」


「五月蝿い、アルフレッド!!レクサのいない日がこれから訪れようとしているのだぞ!!それも、いつ帰ってくるかわからないのだ!!これはそんな永遠に等しい苦行を耐え忍ぶための用意だ!!」


アルフレッドはため息をついて頭を抱えている。


「陛下にはまだレクサ様コレクションがあるでしょう?レクサ様のいない間はあれで耐え凌げば良いのでは?」


アンナがそう言って説得しようとする。

ところでレクサ様コレクションってなんだろう。


「うう……でも……」


「それに、そんな風にレクサ様に甘えてばかりいらっしゃいますと、レクサ様に呆れられてしまいますよ?」


もう呆れてます。

しかし、そうアンナに諭されて母さんは渋々、心底名残惜しそうに俺から離れた。

……この人、大丈夫だろうか。


「レクサ様。最後にこれをお持ちください」


アンナがそう言って革製の袋を渡してくる。

中にはガラス玉っぽいものが入っていてその中心に尖った赤い棒が浮かんでいる。


「これは?」


「帰り道を示してくれるものです。その赤い棒の先端は常にこの城に向いています。修行を終えて戻られる時に役に立つかと」


「なるほど。ありがたく貰っていくよ」


ガラス玉を革の袋に戻して腰に括り付ける。


「それじゃあ、行ってきます」


そうして俺とイリスは生まれ育ったこの城を出て修行の旅に出たのだった。




さて、早速だけど問題がある。

俺もイリスも社会見学みたいな感じで一応城から出たことはある。

だが、それでも城下町の外には行ったことがない。

俺達はこんな国があるとかそんな地域があるといった知識自体はあるのだが、生まれてこの方あの城を離れたことがないのでどこに行くべきかわからずに、ただひたすら道に沿って歩いていた。

そして……


「なあ、イリス。今どこにいるのかな」


「……わからない」


迷子になった。

辺りを見回してもただひたすらに森が広がっている。

いくらなんでも適当に歩きすぎたかな……。

城から出てとりあえず東の方へ行く道に沿ってひたすら歩いていたのだが、途中から道がなくなり、気づいたら森の中で迷ってた。

……どうするべきか。

戻ること自体はできるが戻ったところで行く先もない。

なら、このまま適当に突き進んだ方がいいのか?


そんなことを考えていると正面から大きな黒い狼の群れが飛び出してきた。

狼は全部で9匹。

なんか尻尾が2本生えている。

俺たちを取り囲むように6匹の狼が動き、3匹が俺たちに飛びかかる。

なるほど。

知性はあるが理性はない。

これが魔獣か。


魔物の中で理性のない獣系の魔物のことを魔獣と呼ぶらしい。

魔物、人間に関係なく無差別に遅いかかるため嫌われているのだとか。


そんなものが3匹迫っている訳だが……


「イリス。任せた。俺は囲んでるヤツらをやるから」


「……ん。わかった」


イリスは腰に下げていた鋼の剣を目にもとまらぬ速さで抜き一閃した。

たったそれだけで3匹の狼は口から尾まで切り裂かれた。

うわぁ……えげつなぁ……。

惨劇を横目で見ながらとりあえず俺は適当に6匹の内の1匹に指を向ける。


「『連鎖チェイン・雷撃ライトニングボルト』」


俺の指先から眩い雷が迸る。

雷は1匹に当たると残りの狼たちに『連鎖』していく。

それだけで6匹の狼も屍と化した。


「……え?弱っ!?」


手応えがなさすぎる。

イリスもあっさり苦もなく勝ったし……


どうやら俺達は自分たちが思っていたよりも強かったらしい。

前回から今回までの間の話は番外編とかにして書くと思います。

ストーリーにはそんなに関係ないし……

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