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脱出

さて、これから俺たちはどうなるのだろうか。

さっきから壁を壊そうとしたり、鉄格子を壊そうとしたりしてみてるのだけれど、全く壊れそうにない。

ここで大人しくしている他ないのだろうか?

というかここは本当にどこで、あいつらは一体何者なのか。

わからないことが多すぎてどうしようもないんだよな。

とりあえず、さっき俺達が戦ってた場所よりも地下牢の奥の方にいるっぽいのは分かっているのだが……。


しばらくすると俺達のいる牢屋に男が2人やってきた。

イリスが骨で倒したアイツらだ。

包帯をまいているが割と元気そうである。

2人は牢屋の前に立った。

どうやらこの牢屋を見張るらしい。

男達は今度は長槍を持っており、俺たちを警戒しているのか牢屋から少し離れた所――――とは言ってもすぐに槍で刺せる位置――――に立っている。

2人はその場で会話を始めた。


二人の会話でいくつかのことが分かった。

どうやらここは盗賊達の拠点らしい。

城は丘の上に建っているのだが、丘の麓にある洞窟からこの城の地下の放棄された牢屋に来ることが出来るようだ。

洞窟は迷路みたいになっていて結構広いらしい。

母さん……自分の土地の治安維持が適当すぎるよ……。

あと、あの幽鬼のような男はこいつらの雇った用心棒らしい。

この盗賊たちの殆どは人間らしいが、あいつは魔族なのだそうだ。


そんな風に男達の会話に聞き耳をたてていると、足音が聞こえてきた。

男達も気づいたようだが、どうやらこいつらの仲間ではないようだ。

道の先に槍を向けて警戒している。

やがて足音の主が姿を現した。

アンナだ。


「レクサ様、探しましたよ。本当にどれだけ心配したことか……」


とても安心したような顔をしているアンナ。

心配してくれていたのは素直に嬉しい。

それよりも身に迫ってる槍に気を払ってほしいのだけれど。


「アンナ!危ない!」


思わず叫ぶ。

アンナが槍に貫かれる光景を幻視する。

が、杞憂に終わったようだ。

アンナは姿勢を崩さずに、少し横に逸れることで槍を回避した。


「話の最中に攻撃を仕掛けるとは……少し礼儀を教え込む必要がありますね」


そう言うとアンナは右手を正面に掲げた。

すると、アンナの手にアンナの身の丈ほどの大鎌が現れた。

アンナは大鎌を軽く横薙に振るった。

たったそれだけで男達の持っていた槍は切り飛ばされた。

アンナが大鎌を適当に振るうと男達は倒れた。

どうやら切り裂かれた訳ではないらしく、血は出ていなかった。


「さて、レクサ様。少し下がっていてください」


言われた通り少し下がる。

するとアンナが鎌を軽く振って鉄格子を切断した。

俺もイリスもアンナの意外な強さに唖然とした。

そういえば、アンナって魔王の配下だったね。

強くないと魔王のメイドはつとまらないってことなのか。

ところで、イリスは一体どうしたのだろう。

思い返してみると男達が牢屋に来てからイリスはまた一言も話さなくなってしまった。

まあ、無口なのは元からだから気にするほどのことでもないか。


「なあ、アンナ。そいつらって……」


俺は地面に倒れ伏している男達を指さす。


「殺してはいません。意識を奪っただけです。私は弱者を殺すのは好きではないので。ご命令であれば即座に始末致しますが……」


「いやいやいや!いい!殺さなくていいから!」


何かヤバそうな気配を感じてアンナを止める。


「そうですか?……では、早くこのような場所から出ましょう。陛下が心配していらっしゃいますよ」


母さんか。

母さんは俺に甘すぎるんだよなぁ。

少し転んだだけでも異様に心配するし、アルフレッドの戦闘訓練を行うのも最初は猛反対してたし……。

そんなあの人が俺が行方不明になったとか聞いたら発狂するんじゃなかろうか。


「わかった。イリス、行こう」


座り込んでいたイリスに手を差し伸べると少し迷う様に手を動かしてから、俺の手を握った。


「イリス……?」


アンナが不思議そうにこちらを見ている。


「ああ、俺が名付けたんだ。いつまでもお前って呼ぶのも変だしな」


「なるほど……。良い名前ですね。イリス。レクサ様を守りながらついてきなさい。基本的には敵は私が処理しますが万が一の時はあなたがレクサ様を連れて逃げ、城に戻りなさい。あの床が抜けた地下室には梯子をかけておきました。入口にはアルフレッドが待機しています。そこまで逃げるのです。わかりましたね?」


イリスは静かに頷いた。

それを見てアンナも満足気に頷く。


「では、行きましょう」


アンナを先頭に、俺達の脱出が始まった。

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