表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

少年は願い、少女は求める。

世界の移り変わりを、少女は感じる。

作者: 池中織奈

少年は願い、少女は求めるシリーズ第15弾

 世界は変わっていくものだと、私は最近思うようになった。

 私は、小さな村で生まれた。6人兄妹の末っ子で、体が少しだけ弱くて、役立たずと家族に言われていた。

 あるとき、村が飢饉に襲われた。私は捨てられた。

 そこで、神様に会った。

 神様と、その使いの人は、私を助けてくれた。

 神様の話は知っていた。村にやってくる行商人さんがいっていた。

 名を忘れさられた神様が、現れたと。ウィントという名前の神様。神様の世界で色々起きて、その関係で地上に神が降臨できなくなっていると、そんな風に語っているらしいと聞いていた。

 でも、私は、そのことをなんとなく聞いていた。

 だって、神様が世界に現れるなんて聞いたことなかったから。ずっと、ずっと昔、神様はこの世界によく訪れて、私たち人間とかかわり続けていたって話だけど、そんなこと現実ではなくて。

 神官さんたちは、私たち人々が神を怒らせてしまったからだって言っていた。だから私たち人間は神様に償いをして、神様の怒りを鎮めなければならないって、そんな風にいっていたけれども……私は正直そういうこと言われてもって思っていた。だって神様が世界に姿を現さなくなってから何百年も経過している。そんな、私たちにとって生まれる前のことを言われても知らないって思った。それより、私たち村人は日々の生活をするのでいっぱいだったから。

 だけど、そんな私の前に神様は、現れた。

 美しい女性。

 神秘的な雰囲気を纏った女性。

 その人が、行き倒れそうになっていた私に手を差し伸べた。

 一緒に居た踊り子の女性が食べ物を差し出してくれて、もう一人の赤髪の少女も私を助けてくれた。その人たちの後ろには数人の神官がいて、偉い人なのかなとだけ思った。

 ゆっくりご飯を食べて、元気になった私がどういう人たちなのかと聞いて驚いたものだ。

 神様、なのだという。

 名を忘れ去られたウィントという神様。

 そしてその娘であるフィート。

 二人は神様なのだと。そして踊り子の女性は、ウィント様への信仰を代々忘れなかった一座の娘だという。カルッサさんたちが、ウィント様を忘れずに進行し続けたからこそ、ウィント様が復活出来たのだと。

 私は、この世界で何が起こっているかなんて全然しらなかった。

 だから、ウィント様やフィート様からこの世界の神々の世界がどうなっているかを聞いて、ウィント様が封印されていた状況を聞いて、愕然とした。

 たった一人の身勝手な神の影響で、神様が降臨出来ない世界が生まれている。そして、昔は、神々が世界に姿を現していた頃は、人と神が手を取り合う穏やかな世界だったと。そんな、今では決して考えられない世界が、昔は当たり前だったと。八百年という途方もない時間封印されていたウィント様は、以前の姿に戻したいのだと、そんな風にもいっていた。

 そのために、各地を回って信仰心を取り戻しているのだと。

 中には記録から消し去られてしまったウィント様を信じないものもいたらしいが、それでもウィント様は取り戻したいのだといった。

 ピリカという光の神が生まれて、神々の世界がおかしくなったという。

 その神様は、世界を見守ってなどいないのだという。世界を見守っていたのならば、封印から解除されたウィント様を放っておくわけはないと。

 神官たちは……神様の怒りを鎮めるために償わなければならないって一生懸命だったけど、それを神様は見ていなかったと、そういうことなのだと思うと、なんとも言えない気分になった。

 でも私の目の前には、今神様がいる。

 神様なんて本当にいるのだろうかなんて思っていた私の前に、神様が、いる。

 ウィント様たちは私を近くの街まで連れて行ってくれた。そしてウィント様たちが連れてきたからと神官さんが私に仕事の斡旋をしてくれた。

 その時に街の皆が、全然姿を現すことがなかった神が、現れたという事実を受け入れていることに驚いた。神様のための償いだって神官さんたちが頑張ってたけど、それを見ても、神が現れるはずがないっていうのが世界の認識だった。

 それが、こうも変わっていることに驚いた。

 世界は移り変わってきている。

 神様が本当に存在するのだろうかと、懐疑的だったのに。

 神様は存在していると、信じる人が増えてきている。

 ウィント様とフィート様の人柄が穏やかで、一生懸命で、好感が持てるからっていうのもあるだろう。それに、八百年も封印されていて、目が覚めたら愛した世界から存在を抹消されていたなんて、話を聞いているだけで同情する。人間的で、ううん、人間とあまり変わらない、そんな親近感のわく神様で、私は助けられたこともあってウィント様とフィート様が好きだと思った。

 そういう、私たち人間の気持ちが、神様の力になるんだってそんな風にウィント様たちはいっていた。

 神様と、人が助け合う世界。

 この移り変わってきた世界を感じると、本当にそういう世界が来るのではないかって、私は楽しみになってきた。




 ――――世界の移り変わりを、少女は感じる。

 (どこにでもいる少女は、神様と出会い、この世界の移り変わりを感じた)



カルッサやウィント、フィートの行動は結果として出ているというお話です。

地上ではウィントの名が知られ始めていますが、ピリカは地上を見ていないのか気づいていません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ