第1章-8ー世界の為に身を尽くすー
_片付けられていく食事を少し寂しげな目で眺めながら、ユーガストに視線を戻した。
彼は、元いた場所には座っておらず、一足先にドアの前に立っていた。
ユーガストは、指をちょいちょいとひらつかせ私をこちらに呼び、私も椅子から腰を上げ、ユーガストの後に続いて外へ出た。
彼の背中にふと目を向けると、彼はまるでそれに気づいたかのように振り向き、怪しげに微笑んだ。
私は、唾を力強く飲み込み、額に汗を流した。
今の私は、自分ではない。
この人だって、親だと信じていない。
__だけど、今は流れに身を任せるしかない…_
この人は今から私を何処に連れていく気なのか…
私をどうするつもりなのか…
私は何処かで自分に説得し、自分のものでは無いような綺麗な指で額の汗を拭うと、腕に力を入れた。
彼は小さなドアの前で足を止め、ここで待っていてくれ。と、そのドアを優しく開けた。
中には、可愛らしいうさぎの人形や小さなお家が沢山並べられており、子供用ベッドもあり、一目見ただけで誰でもわかる、女の子用の子供部屋だった。
「君が目覚めた時にと用意させた部屋だったんだ。
今日までこの部屋に入る事はなかったんだけどね。」
と、何処か寂しげな顔で彼は言った。
私がその部屋に足を踏み入れ振り返ると、そこに彼の姿はなかった。
小さく溜息をつき、子供用のピンクでレースが沢山ついた、可愛らしいベッドに腰を下ろした。
「これから私、どうなってしまうんだろ…」
ベッドの掛け布団をくしゃりと握る。
私がふと口からこぼした言葉に何か返事をしたように、
血管を伝っていくような声が響いた。
私はその妙な感触に体を大きくうねらせ、ベッドに倒れこんだ。
__なっに…この感触はっ
その声は、ゆっくりと血管を撫でるように響いていく。
その声が体中の血管や臓器に響き渡る度に、心拍音が大きくなっていく。
血流の流れる音と、響く声が脳に響き渡る。
___貴女は、これからこの世界のために身を尽くすのです。
私はその声に身を震わせ、喉から唾を吐きだし、目から涙をこぼした。その声は、段々ゆっくりと体に溶け込んでくる。
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。
その声は血管から、臓器にも響いていき、ついには心臓までたどり着いたかと思うと、心臓を優しく撫でるかのようにゆっくりと声をあげた。
___貴女は、これに慣れていないだけ。すぐに慣れるわ。
今まで気持ち悪いと感じてきた血管や心臓を撫でる声も、段々と慣れてきて、体に完全に存在が溶け込んだように、私の体は驚く事を忘れていた。
「貴女は…その声の主は…ハァ…誰なの…?」
私は喘ぎ喘ぎその言葉を喉から絞り上げた。
慣れたものの、血管をゆっくりと撫でられるあの感触全身にびっしりと覚えていて、私はそれを思い出すと、吐き気と同時にぎゅっと体を自分の腕で強く抱きしめた。
___私は貴方の産みの親よ…信じてくれるかは分からないけど…
「と言うことは、貴女は…女神…様…?」
私は、彼女の言葉に驚きを覚え、不思議そうに問いた。
___えぇ。私はこの世界の女神。そして、貴女の産みの親。
それも大事だけどもっと大事な事を貴女に伝えたくて、話に来たのよ。
貴女が1人の時でないと、話すことはできないですからね。
ふと、手のひらを誰かに触れられた気がしたのだが、その手には何も触れてはいなかった。
「貴女…姿を表さないの…?」
私は、純粋に疑問に思った事を口にした。彼女は少し悲しそうな声で、「今はその時ではない。」と答えた。
___これから貴女は、色々な試練を乗り越えなければなりません。
その途中では、大切な人が傷つき、大切な人を失い、悲しい事も楽しい事も沢山あると思います。
ですが、貴女はその苦しみを乗り越える力がある。
人々を守る力を秘めているのです。
貴女が、どうしても危険に晒された時や、貴女の精神状態がとてつもなく危険な状態にあったとき、女神の力はきっと貴女を守ってくれることでしょう。
ですが、その力も完璧ではありません。
救うべきでないと力が判断した場合、女神の力でその人を救うことができないのです。
「ごめんなさい。女神の力って?」
私は、彼女が話している声を遮って大きな声で問いた。
___女神の力は、私から貴女の命にさずけられた力よ。
貴女は女神の娘だから、当たり前だけれど普通の体ではないのです。
わかりやすく言えば、貴女は女神を人体化させた存在と言っても過言ではありません。
「その力が完璧じゃないって…その力は私の意と反する決断を下すこともある…という事ですか?」
震わせる声でつぶやく。
さっきの大きな声で問いた時とは真逆の声で。
___えぇ。そういう事です。
ですけれど、心配する事はありませんわ。
その時は、貴女の力。貴女自身の内に秘めている力でその壁を乗り越えることが必ずできるのですから。
女神は優しく囁いた。
まるで、母親が赤子に話しかけるように。
___私が貴女に伝えたかったことはこれだけです。
貴女が、無事にこの城に帰ってくる事を、心から願っております。
私が何よりも1番大切なものは、貴女なのですから…。
彼女の言葉が消えたと同時に、私の体から緊張が流れ落ちた気がした。
「女神様…いや、お母さん…。」
不思議な気持ちだった。母親と話すのにこんなにも緊張したのは初めてだった。(女神なのだけれども。)
だけど、今の状況でも女神が自分の母親だなんて信じられないと心のどこかでは感じていたが、夢の世界か異世界ならばまた別の話だと、私は彼女の言っていた言葉を、ゆっくりと理解しようとした。
…私は、彼女が伝えてくれた、重くも優しい言葉を心に染み込ませながら、自分の体には少し小さい子供用ベッドに横になった。
「この世界の為に身を尽くす…」
その、心に重石を乗せるような言葉に胸を抑えながら、
__異世界、もしくは夢の世界に来てから、2日目。
子供用のベッドの上で、私はこれから起こる出来事に、心に期待と不安の小さな火を燃やしていた。
今回は、前書き無しにしてみました!
こんな感じで、話によって前書き有り無しを変えていこうと思っていますので、よろしくお願いします( ❁ᵕᴗᵕ )ペコリ♡
今回は、とっても厨二病展開になってしまったのですが、どうだったでしょうか…!
誤字とか、変な文章とか沢山ある思いますが、そういうのを見つけたらコメントなどで教えて下さると幸いです.*・゜(*º∀º*).゜・*.
これから、やっとですが面白くなっていくと思うので!!!!!
アイノスピアよろしくお願いします( ❁ᵕᴗᵕ )ペコリ♡
(ブックマーク、評価、コメント、レビュー等よろしくお願いします( ❁ᵕᴗᵕ )♡)