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白い惑星  作者: みくに葉月
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第二章 BFF

 七月に入り、いつの間にか窓の外の景色は一面緑に包まれた。

耳を澄ませると窓の外から時々ツクツクボウシの鳴き声が聞こえる。

気温は真夏の温度にまで上昇し、本格的な夏が始まろうとしていた。

 

 午前の授業が終わると昼ご飯を食べるために僕は食堂に向かった。

食堂につくといつもの机と椅子の場所にみんなが待っていた。

 

 「遅いよ木葉。早く食べよ。」と好青年のような雰囲気の男が声をかけてきた。

彼は東雲真琴。同じクラスで仲良くなった友達の一人だ。

人を思いやる気持ちが強く、誰とでも親しく接することが出来る上に顔立ちが良いので異性にもよく好かれていた。

 

 「もう、昼休み終わっちゃうじゃない。」と真琴の隣に座る女の子が言った。

彼女は高橋莉愛。黒髪の長髪で身長は一六〇センチメートルくらいのやせ形。成績優秀で中学の頃から常に学年上位をキープしているらしい。だがその一方でどこか抜けているところがあるのが彼女の欠点でもあり、愛らしい所だ。一昨日の彼女は弁当と間違えてテレビのリモコンを学校に持ってきたらしい。

 

 「ほんとおっせーよ。ジュース奢りな。」と言っている真琴の正面に座っているのは上野拓也だ。

拓也は基本考えていることが青春アニメに出てくる脇役のようだった。というのは少し適当過ぎたか。いやしかしそれ以上説明のしようがないくらい彼の性格はそれに酷似していた。いつも彼女出来ねーかなとか言っている。

 

 僕は東雲真琴、高橋莉愛、上野拓也、この三人と同じクラスのよしみで仲良くしている。

彼らは彼らなりの考えを各々が持っていて、決して周りの雰囲気や流れに流されない強い精神を兼ね備えていた。そんな彼らの精神を僕は好いていた。

 森林に生える針葉樹林は他の木と交わることが無く、ひたすら天に向かって生えている。そのように彼らの精神も決して他者に惑わされず、まるで自分の考えが誰かに侵されることを拒否しているかのようにここに存在していた。

 

 「ごめん、ちょっと授業の板書が追いつかなくて遅れた。」と僕は言った。

 「え、今日の授業そんなに書くところ多くなかったよね?木葉って書くの遅いんだね。」

と莉愛が無邪気な笑みを浮かべて言った。

 莉愛は思ったことが包み隠さず顔に出るタイプということに最近気づいた。もしババ抜き選手権なるものがあれば莉愛は一度も勝つことが出来ないだろう。

 

 「莉愛、それは違う。きっと木葉は昼寝してたから授業中に板書を写せなかったんだよ。」と拓也は言った。

 拓也。墓穴を掘ったな。僕は昼寝はしていない。昼寝をしていたのはむしろ拓也の方だった。

 

 「昼寝してたのは拓也でしょ。現文の時間だったから良かったけど生物の時間だったら今頃鬼瓦先生の餌食になってホルマリン漬けにされてるよ。」と莉愛が言った。

 「分かってないなあ。いかに授業中さぼれるかが勝負なんだよ。だから現文の授業中に寝たのは計算のうちだよ。俺を尊敬したまえ。」と拓也が言った。

 「尊敬するわけないじゃん!」

 「木葉、今日は暑いね。」と莉愛と拓也を他所に真琴が言った。

 

 拓也がお調子者で好きなようにして、莉愛がそれの相手をする。僕と真琴がそれを傍から眺めながらお茶をすする。それが僕たちのいつもの風景だった。

 拓也はふざけているだけのように見えるがちゃんとみんなのことを考えている。拓也は自分のことよりも先に周りの雰囲気の調和をとることに専念している。

 そのお陰でみんなが自然に笑って過ごせる環境が整っているのかもしれない。

 莉愛は世話好きでお節介だ。だから困っている人がいたら絶対それを見逃さず助けの手を指しのべるし、悪戯を働こうとすればそれを鉄拳で制裁するだろう。莉愛は学級委員みたいな性格をしていた。

一方の真琴は僕と似ているかもしれない。常に落ち着ていて、いつも物事を客観的にとらえ冷静に対処する。冷たいのではない。ただ主体になることを好まないのだろう。僕もそうだからその気持ちはよくわかるつもりだ。

 

 とにかく、この四人だからこそ、この完全な調和をとれているのだろう。

それ以上増えても減ってもだめだ。

もしそんなことが起きれば途端にこの友情は崩れ落ち、破綻してしまうだろう。

脆い友情関係というわけではない。

ドミノを円状に重ね合わせたようにそこには一つの形が出来あがる。

僕たちはそのドミノのピースの一つひとつなのだ。

そのように僕たちはいつでも四人で一つの形だった。

 

 「今日から猛暑が続くらしいからね。」と僕は言った。

 「高校入ってから初めての夏だから耐えられるか心配だな。部活でへまするのだけは嫌だね。」と真琴は言った。

 

 真琴はバスケ部だ。中学の時サッカー部だったらしい。真琴はスポーツがなんでもできるタイプだ。もともと持っている才能を活かしてある程度活躍できるので部活内部で立場に困ることはないだろう。どうして高校でバスケ部に変えたのかは分からない。多分聞いても教えてくれそうもなかった。

 

 莉愛はフォークソング部。フォークソング部という部活は確固たる定義はないが大概の学校では軽音楽部の定型的ではない形でのバンド演奏で活動している部活のことを指している。たいていの学校ではアコースティックの演奏でドラムではなくカホンで、ベースはアコースティックベースでの演奏が主流だ。この学校もそれに倣っている。莉愛はその中でギターを担当しているらしい。拓也はサッカー部だった。ポジションはフォワード。一年だからまだ二軍だけれど、将来有望だそうだ。このようにそれぞれに夢と希望があり、みんなそれに向かって毎日精進していた。

 

 それに引き換え僕は何の部活にも所属していなかった。ここの学校の生徒の八割は何かしらの部活動をしていた。そして僕はその他の二割の方に属している。

けれど、部活動に参加していないからといって別に疎外感を感じたり、劣等感を抱いたことは無い。各々が好きなことは部活動であれ何であれ勝手にすればいい。僕も好きなことを好きな形でするのだ。

 

 「みんな、熱中症には気を付けてね。」と僕は言う。

 僕はというと暑かろうが寒かろうが、学校が終わればエアコンのきいた図書館に夜まで入り浸る。熱中症は僕とは無縁なのだ。

 「でも、夏休みの部活はほんとこたえるよな~。」と拓也が言った。

 「その前に期末試験でしょ。」と莉愛が言う。

 「げっ。その単語を聴くだけで吐き気がするぜ...。」

 


そう、もう少しで期末試験だ。

中間テストでなんとなくどの程度頑張ればいいのか把握することが出来たので今回は無駄に勉強する手間が省けるだろう。テスト当日の一週間前からテスト対策を始めれば十分だ。それまでは思う存分好きなことをしてやろう。

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