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魔女屋敷 ~キノコ攻防戦闘・1~


オッ○イから離れられない……。

どっちかというとお尻派なんですけどね……。



キノコが倒れた。


原因はステータス上昇に伴う成長痛。


ようは痛くて立てない、痛くて歩けない。寝てても痛い。息をするだけで痛い。

痛さを我慢するために力を使うから怠い。

怠くて動きたくない。怠いから寝ていたい。


勤勉で活発なキノコが初めてもらす怠惰な弱音に、魔女屋敷のカエンはステータスが落ち着くまでは屋敷に逗留するべきだと進言し、皆もそれに合意した。




「……すいません……ご迷惑を……」


怠さのせいで夢現(ゆめうつつ)なキノコは、ベッドに横たわりそれだけ言うのが精一杯という状態だ。


カエンは穏やかに微笑み、


「とんでもございません。坊っちゃまの御世話が私供の幸せです。さ、何も気にせずゆっくりお休みください」


そういって寝室を後にする。


そうして音もなく扉を閉め、薄暗い廊下に視線を投げるカエンの表情は既に凍てつくように冷えていた。


眼光鋭くカエンは言う。


「坊ちゃまはお休みになられた…。わかっているな、お前達」


「もちろんでございます」

「キノコ様には安眠を」

「邪魔する者には永眠を」



歌うように囁いて来る廊下の闇の向こうに、カエンは一つ頷いた。










◇◇◇





「…………ふぅ……」


心地良さからタンポポは息をつく。


時刻は日付を少し過ぎた頃。

場所は屋敷の大浴場。


やけに大きい浴場にタンポポは一人で入っていた。


池と言うほど広い浴槽にはなみなみとお湯が溢れ、身を浸すタンポポは大鍋に茹でられる小さな野菜クズの気分を味わっていた。

祖国であるザリオンは雪国で水は豊富だが、"温める"為の材料や手間がかかるので湯に入る習慣はなかった。

なのでこんなにたくさんのお湯に浸かるというのは、タンポポからしたらとても贅沢で無駄な事だ。


魔女の魔法は理解不能だとタンポポは思う。


カーテンのような布の向こうにこんな屋敷が広がり、さらに水も火も使い放題。

どこから持ってきてどのようなカラクリで動かしているのか皆目見当もつかない。


タンポポの知る"魔法"は、火を起こしたり風を吹かせたりするもの。

こんな"魔法"は聞いた事もなかった。


カエンに聞けば、タンポポの知る"魔法"を極めて多数組み合わせれば可能らしいが、やはり理解できなかった。


その理解不能の湯船で一日の疲れを流していると、突然浴室の扉が開かれる。


「っ!?」

「……」


シャピが仁王立ちしてタンポポを睨んできていた。


この浴場は誰でも使えるとカエンから言われていたが、やはり部屋で大人しくしているべきだっただろうかとタンポポは後悔する。

お情けで同行を許してもらっているのに、風呂など以っての外だ。

贅沢をしている卑しい女だと呆れて睨んできたのだろうと、タンポポは怯えて震えた。


けれどシャピは何も言わず、ずんずんと浴場を横切る。


堂々として裸体を隠しもしないシャピ。

タンポポは初めて見るシャピのそれから目が放せなかった。

無礼だとは思っても釘付けになる、『胸』。


(……な、っなんて大きさっ…!…)


何か詰め物でもしているのでは?と疑う程にシャピのは大きい。大きすぎる。


大きいのに垂れていなく上を向くような形、たわわに実る果実の如くプルプルとしていて。

それに相反して細い腰、そこから繋がる尻はまたもやムッチリと肉感的で。

真珠のように艶めく白い肌の手足にチラチラと絡み付く漆黒の髪が、淫靡さに拍車をかける。


少女というには些か過剰な色気と発育加減にタンポポはまばたきを忘れていた。


不躾なタンポポの直視を感じないかのようシャピは進み、シャワーの場所まで行くと頭から冷水を浴びて身体を洗い出す。


(…こ、腰、細っ…。足長っ!おおぅっ、お、オッパイがっ、オッパイが揺れてる!揺れてますよシャピ様ッ!そんなに大きいと重くないですか!?)


思わず自分の胸を確認したタンポポだが、そこには期待した程の膨らみは無い。


幼少期の栄養事情や『毒姫』としての生活のせいでタンポポの発育は悪く、同年代よりも小柄なのだ。

胸という脂肪が育つわけがない。


(……はぁ…)


わかっているがこの敗北感はなんだろう。


"女"として生きてきたことなど無いのに、何を比べて何を落ち込んでいるのだろうと自問自答していると、波が上がる。


「ッ?…シャピ様っ!?」


なんと湯舟に入ってきたシャピがタンポポのすぐ側にいる。


長い髪を湯に入れないように上げているシャピは、壮絶に色っぽい。


うなじにほつれ毛。水に濡れた肌、ほんのり色づく頬。

湯舟に"浮かぶ"オッパイ。 

完璧である。最強である。


勝ち負けどころか土俵すら違うと嫉妬等起こらない。

なのでタンポポは違う事で眉をしかめた。


"シャピがタンポポの近くに来る"。


ほぼ有り得ない状況に、これは何かの異常事態ではなかろうか、と。


「…あ、あの、シャピ様?」

「………奴隷…」

「は、はい。何でしょう?」

「………あんた………生娘?」


…ピチョン…。



「………はい?…すいません、もう一度」


タンポポは聞き間違いかと思い再度尋ねた。


「…だから、あんた処女?…それともどこかで経験済み?」


シャピはいつもの無表情で淡々と告げる。

どうやら聞き間違いではないようだし、冗談でもないようだとタンポポは真面目に答えようと背筋を伸ばした。


「……しょっ………………処女、です」

「…じゃ、性知識は?…暗殺者だったんだから、房中術とか豊富?…やったことある?」

「い、いえ…。『毒姫』だったので…接触すると殺してしまうので…」


ふぅん、とシャピは息をついた。


湯舟に天井から雫がピチョンと落ちる。


知らず下がっていた目線でその波紋を捉えながらタンポポは恥ずかしくて混乱していた。


シャピはタンポポに興味が無いはずだ。


キノコが連れていくと決めてくれたので従っているが、本当は嫌っているのだとタンポポは理解している。

嫌って無視すると連携が取れず、キノコの足手まといになってしまうと考えたのか近頃は態度を軟化してくれたが、本心は抹殺してもいいくらいだと思っているはずだ。


そんな人間の娘の下半身事情を、何故『鬼姫』様が気にするのだろう。


理解不能で冷や汗が出てくる。


(もし、もし私が経験済みだったら…汚いって事でキノコさんに近寄るなって言うつもりだったとか…?)


それはそれでありそうだが、何故今聞くのか。

風呂で裸で、隣で。


のぼせではない目眩がタンポポを襲う。


「………私………初めてはキノコにしてもらうの…」

「…は…い?…」


ぽつりと呟いたシャピの"初めて"発言にタンポポは少なからず動揺した。


昼間、倒れたキノコに欲情していたシャピは、そういう経験があるように淫らに見えた。

女のタンポポが見てられないほどだった。

見事な肢体も、経験豊富なら納得する。

だが、シャピはまだ(・・)らしい。


とすると、処女なのにこの色気で、処女なのにこの体(・・・)と言うわけだ。


(……これが種族の差?………いやいや、シャピ様が特別っ!)


「…でも、考えたの…。キノコ、私みたいな体、嫌かもしれない…」

「は、はぁ?……」

「私の胸……握ったのも…気に入ったからじゃなくて、気に入らないから。だから怒ったのかなって…」

「……」


そこはタンポポもはっきり明言出来ない。


性的嗜好は様々だ。

巨乳が大好きな男もいれば尻が一番なやつもいる。はたまた足、唇、指、匂いという者だっている。

果ては幼女、熟女、未亡人、加虐被虐、身分差……。

豊満な胸より薄い胸を好む男もいるだろう。


しかしそもそも、キノコにそういった嗜好はあるのだろうか?

キノコは余りにも"健全"な気がするのだが…。


しばし思考を巡らせたタンポポ。

その無防備な『胸』をシャピはいきなり掴んだ。


フニッ…。


「っ!?ひあっ!シャピ様っ何をっ!?」

「………小さい…」

「す、すいませんっ!」

「…揉めない…摘むくらいしかない……貧乳…」

「す、すいませんーっ!」

「……でも、ひょっとしたら、キノコはこっちがいいかも…。キノコの手、小さいし、小さい胸の方が収まりがいいのかも…ッチ!…」


ムニムニナデナデとタンポポのささやかな胸を揉みしだくシャピ。

時に優しく、時に荒々しく、小さい胸をじっくりと柔らかくしていく。


湯舟の熱さではない、体の奥からの熱にタンポポは顔を真っ赤にした。


「っ…あ、いやっ…シャピ様っ!や、やめて……」

「…感度は良さそう……気持ちいい?奴隷……。こんな事…キノコにされたら嬉しいでしょう?……」


紅い唇を僅かに吊り上げてシャピはタンポポに問い掛ける。


言われたタンポポは背筋を駆け上がるようなこの快感を与えるのがキノコだったらと想像し、あまりの破壊力に。


噴いた。

鼻血を。
















「…汚い女……」

「…ず、ずみまぜん……」


脱衣所で仰向けになり鼻を抑えながらタンポポは情けなく謝罪した。


タンポポは自分でも何に謝って何を恥じているのかわからなくなって来ている。クラクラするので備付けの魔法の氷室から氷を取りだし頭を冷やす。


ああ気持ちいいとタンポポが和んでいると、シャピは風呂上がりの身体に花香油を馴染ませ始めた。


花香油も氷室の中にある氷や飲み物も好きに使っていいとのことなので、氷室にあった果実水を飲んで水分補給をしていると、身支度を整えたシャピがタンポポを呼んだ。


振り向いてシャピを見たタンポポは、またもや噴くところだった。


「しゃっ、シャピ、シャピ様っ!?」

「…あんたも早く支度して……時間がないんだから…」

「は?時間って…、いえ、あの、その格好で廊下に出るおつもりですか!?」


シャピは不思議そうに首を傾げるが、傾げたいのはタンポポだ。

どうもシャピは自身の中でいろいろと物事が完結するらしく、経過を伝えず結果だけを述べてくる事がある。


花香油でツヤツヤになったシャピは所謂寝間着に着替えていた。


寝間着は就寝時の寒暖調整の衣服であり、部屋着をより質素にしたものというのが一般的だ。

男女ともに足首までのワンピースというのが普通だろうか。

着ない人も文化もあるし、外出着のまま寝る人もいるが、とりあえずただの(・・・)服でいいのだ。


なのにシャピは。


シャピの寝間着は透けていた。


絶妙な透け具合で透けていた。

  

透けているうえに、丈が股までしかない。


下着は穿いているようだがそれじゃ隠していないし、第一下着(パンツ)が細すぎる。守る気はあるのだろうか。


透ける短いワンピースを巨乳が押し上げて、チラチラと下着(パンツ)を晒している様は。

言っては悪いが娼婦だ。


事実、そのような透けるドレスや官能的な下着は商売女の装備品として一般には知られている。

少し抑えた物なら富裕層でも人気だが、いや、シャピの着ている物も実はその抑えた物なのだが、本人の色気のせいで過剰演出となっているのだ。


「…勝負に行くんだから…このくらいしないとダメ…」

「勝負って…いえ、あの、なんの話ですか?もう夜中ですよ?外に行かれるおつもりですか?」

「…外じゃない…………キノコのとこ……」


キノコの部屋に、この淫猥なる色気を持って乗り込もうという『鬼姫』に。


タンポポは昼間の事件はまだ続いているのだと顔色を青くした。


「……ほら、行くよ…。あんたの貧乳にも出番があるかもしれないから……」

「で、出番って!?シャピ様、やめてください!キノコさんは倒れたんですよっ?」

「…あんた知らないの?…殺しとか破壊をするとね…興奮が止まらないの…。戦争とか、決闘とかあると、男は昂るの……慰めるのは女の役目……。キノコが我慢してるなら、私が吐き出させてあげなきゃ……フフ……」

「シャピ様、違いますっ。キノコさんは我慢して倒れたんじゃなくてっ…」

「……吐いて…出して……出して……ウフフ…」


話を聞かない態度のシャピにどうやら興奮しているらしいと漸くタンポポは気付いた。


そういえばシャピもグラネカラと一戦交えた。

決着がついたとはいえない魔法戦だったので、シャピは不完全燃焼をこじらせ性欲のスイッチが入ったのだろう。


「…グズグズしないで……それともあんた…キノコにしてもらいたく無いの?」

「っ!?え、ええっ、いえ、あの、だってキノコさんまだ小さい、し…」

「小さくてもやれることはある……まぁ、来たくないなら、いい……じゃあね……」


胸を弾ませてシャピは脱衣所を出て行った。


残されたタンポポは、どうするべきかグルグル悩む。


(だってだって、キノコさんは子供だものっ!私より小さいもの、出来ないでしょっ?!いや、出来ないこともないけど、やり方はあるけど、むしろ育てればいいだけだけどっ?それになんでシャピ様、私を誘ったの?貧乳だからって……あれ?もしかして性奴隷としてとか?戦闘も家事も私、必要無いし…。それくらいしかもう役立てる事がないから?あれって役目を与えてくれたってこと?優しさ?そうなの?……じゃ、行かなきゃダメじゃないっ!そうだよね、性欲処理に使ってもらうくらいしか私には残されてないよねっ!……それでいろいろとされて、壊されて捨てられる性奴隷の私……っ!やだ、興奮するっ!!!)


赤面と青ざめを繰り返し、すっかり血の巡りがおかしくなったタンポポは、急いで着替えて果実水を一気飲みすると、足音高くシャピを追いかけた。








◇◇◇






極々普通の寝間着を着てきたタンポポがシャピに追いついたのは、キノコの寝室がある廊下の曲がり角だった。


ここを曲がり、奥に行けば重厚な両開きの扉があり、そこが寝室だ。


その曲がり角の入り口でシャピは廊下の奥を睨んでいた。


不思議に思いタンポポも壁に縋るように廊下を覗き混むと、一段と暗い廊下に白く浮かび上がるメイドが三体。


広い廊下を通せん坊するように並んだシメジ・ナメコ・エノキの三人が姿勢正しく立っている。


「……あ、あの…」

「……やっぱり邪魔するの……メイド……」


無表情ながら苦味を感じさせる口調でシャピが侍女達に話を振ると、三人は揃って頭を下げ、再び上げた時には瞳を冷たく光らせていた。


「もちろんでございます」

「キノコ様には安眠を」

「邪魔する者には永眠を」


「……あんた達が敵うと思う?」


「無理でございましょう」

「『鬼姫』様は、お強い」

「私共では無理でございます」


「なら…」


「なれど、ここはお屋敷(・・・)です」

「私共の職場です」

「私共の棲み家でございます」


メイド達の冷たい瞳に火が灯る。


「強さはレベルでは計り知れない事もございます」

「レベルだけでは覆せない状況もございます」

「地の利、領域という強さを御覧にいれましょう」


綺麗に組んでいた手をメイド達は下ろした。

その手に闇が集まっていく。


闇が形造ったのは、銀のお盆と掃除具であるモップ、それとなぜか白いテーブルクロスだった。


シャピが怒気もあらわに目を細めるのを見て、タンポポは一歩下がる。

これから始まる事に、どう足掻いてもタンポポは参加出来ない。無理だ。


曲がり角の廊下に、シャピは一歩足を踏み入れる。

それはメイド達の領域に足を踏み入れるのと同義。

グツグツと昂ぶる血潮を感じて、シャピは小さく笑う。


興奮は、戦闘でも晴らせられるんだなそういえばとタンポポは思った。


「…あんた達を始末したら、キノコに会えるのね?」


「そうですね」

「そういうことになるでしょう」

「そうなるのでしょうね」


「…じゃ、やる…」


「かしこまりました」

「お相手いたします」

「お覚悟ください」



メイド達が各々道具を構えるのとシャピが走り出すのは一緒だった。





「…シャピ様っ?そのスケスケで戦うっ?……え、丸見えじゃ……」



タンポポの呟きは誰にも届かなかった…。
















 












《シャピ様装備品》

スケスケミニネグリジェ。飾り紐パンツ。


《タンポポ装備品》

普通のパジャマ。パンツ。スリッパ。


《シメジ装備品》

銀のお盆。


《ナメコ装備品》

特注モップ。


《エノキ装備品》

刺繍入りテーブルクロス。



シャピ様はノーブラです。揺れてます。

タンポポはあんまり必要がないサイズです。

メイド達はそれなりにあります。

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