レベル200を越えたなら
「…………あか……さま?……」
シャボン玉が割れるように、唐突に僕は目が覚めました。
何時ものように白い世界。
椅子に座る僕と瓜二つな『赤様』。
約束した事を忘れないように咲いている三本花。
僕の内の世界。
《………ああ、起きたか》
「赤様……」
寝転がる僕の視界の端に、こちらを除き込む赤様が見えます。
「……赤様?……ねえ、赤様?」
《……ん?》
「赤様は……いなくならないですよね?……」
眉間にシワを寄せた赤様が何か言うより早く、僕は続けます。
「『樹之護法』も『聖邪逆転』も……、お母さん達がいなくなった」
寝転がる床には、もう何もありません。
柔らかい芝生。暖かい、いい匂いの芝生。それがありません。
僕も感じていました。『樹之護法』が自ら眠りについていくのを。
僕が逃げなければ、『毒』をちゃんと使用してればお母さん達を封印なんてしなくてよかったかもしれない。
僕がちゃんとしていないせいで、周りが迷惑する。
わかってたのに、僕は……。
「…赤様…。ねえ?赤様…。いなくならないでください…。いなくなるなら、僕を…」
《……》
-僕を消していって。
お母さん。
お母さんに"足"をもらいました。逃がしてもらいました。
僕を助けるため。でも僕は、お母さんと一緒にいたかった。
たとえ燃やされたんだとしてもそれが良かった。。
スライムさん。
スライムさんに助けてもらって旅をしました。
でも僕は、あなたにおいて行かれた。
たとえばそれが僕の為だとしても、僕は一緒にいたかった。離れたくなかった。
お母さんといたかった。
スライムさんと行きたかった。
一緒に死にたかった。一緒に生きたかった。一緒に歩いて、一緒に朽ちれば嬉しかった。
ボロボロになるまで足が擦り切れて、無くなって、酷い有様になって干からびたキノコになっても、幸せだった。
すぐに終わる生でもいい、幸せに死んでいけたのに。
…僕を終わらせて…。
いなくなるくらいなら、僕を殺していって。
「…今回の事は、僕が逃げたり『毒』をちゃんと使用しなかったからだっていうのは、わかってます。理解してます」
《……》
「でも、でもね赤様。だからこそ、同じような事があったら。次もあったら。赤様は消えないで…。僕を殺して…赤様が僕になって…」
次があったら。
僕はもう耐えられない。
強くなるって決めたけど、これからも頑張るけど。
でも、耐えられないと思う。
《…確かに、『聖邪逆転』がなきゃ死んでたからな…。二度目は無いか…》
「だからね、赤様。また…僕がダメになったら…僕を食べていいですから…」
そうして、生きていって。
赤様になら、家族になら、僕は、全部あげる。
《………ふーん?それで?後の面倒事は全部俺に処理しろってか?都合がいいなぁ?ヘタレ…?》
「……うぇっ?」
………あれ?
いえ、そんな都合のよい事を言ってるわけではないんですけど。
あれ?…おかしいな、ちょっとしんみりした話をしてたのに、なんで赤様から威圧がバシバシくるんでしょう?
《そんな都合のいい死に方する菌類なんか誰が喰うかっ!こっちが滅入るわ!》
怖いっー?!赤様、おっかないですよっ!?
《そりゃおっかないだろうなぁ?『聖邪逆転』も『樹之護法』もヘタレ菌類の為に捨て身で特攻してさ、封印されて。なのに守られて命拾いした当のヘタレ菌類は『死にたい』発言して母親の努力無駄にして。こんな馬鹿な死にたがりの為に、まさか俺まで死ぬ覚悟したなんて。恥だよ、恥。怒るさ、怒髪天だよ、おっかないだろうなぁ?!》
うぇっーっ!?
《約束はどうしたんだろうな?ヘタレ菌類?『命を大事に』って誓ったのに、面倒な事があったら『殺して』だなんて…。ずいぶんと都合のいい誓いじゃないか》
「あ、あの…いえ。頑張りますよ?頑張りますけど…」
《そこはさぁ?『次はこうならないようにします』って、理想論吐く無鉄砲な青二才みたいに宣言するとこじゃないのか?ヘタレらしく》
…い、いつもはそんな宣言したら赤様『甘ちゃん』っていって詰るじゃないですか?
そんな気力もなかったから、本当に嫌になったから言ったまでなんですが……。
え?なんですか?
ひょっとして慰めてくれようとしたんですか?
《ああ、ああ、そうだな。『死ぬ』なんて馬鹿な事言うなって、『聖樹』に授かった命だろうって、負けないで強くなれって励まそうかと思ってたさ。だけどな、起きるなり憂鬱な発言かます奴には優しさなんて必要ないだろ?》
「…そ、そんな事…」
《あるねっ!そんな事あるね!優しく諭してやっても菌類らしく、ウジウジグダグダと『僕が悪い』『死にたい』『もうやだ』なんて言ってるに決まってる!》
「だ、だって、僕が…」
《はい言ったー!!》
ドゲンッ!
「あぶっ?!」
頭っ、頭を蹴られたーっ!
《やめだやめっ!腐れ菌類に慰めは必要無しっ!優しさはお前には過剰な養分っ!腐らせるだけだっ!》
「痛いっ!痛いー!赤様ヒドイっ!」
《ああ、ああ、そうだよ。俺はヒドイ事してこそ俺なんだよなっ。悪かったなヘタレ。俺の本分は"攻め"だよな、そうだよな。労りなんてしなくていいんだよっ!》
ガクガクする首を抑えながら涙目になる僕に、赤様は鬼の形相で言い放ちます。
「あ、赤様っ?労ってくれたんですか?いつ?僕、起きる前に頭をガンガン蹴られてませんでした?!」
《ああ、労ってたよ。蹴るぐらいで済ませてたんだからなっ。指を一本一本、へし折って拷問してやればよかったよ、次はする》
「なんで労りの反対が拷問になるんですかー!?」
《うるせぇ!だいたい『親殺し』してきて更に『堕悪』に呑まれたお前をなんとかしようと奮闘した俺にっ、『母親達』にっ、まずはっ、言うことあるんじゃないのかっ!?それこそ労うとこだろっ!?ちょっとそこに座れ!説教だっ!》
条件反射のように正座した僕に赤様のカミナリが落ちます。
貰った命を粗末にするな。
助けてもらった命を捨てるな。
助けた者の好意を無駄にするな。
自分だけが辛いと思うな。
それが申し訳ないと思うなら、恩返しするためにも生き抜け。
すごく当たり前な事を僕に言い聞かせる赤様。
怒りながら諭してくる赤様。
弱音ばかり吐く僕を引っ張ってくれる赤様。
……ねえ?ねえ、赤様?
ひょっとして、ひょっとしてですけど。
慰めてくれていませんか?
死ぬな、頑張れって……怒りながら言ってくれていませんか?
労らない、優しくしないって言ったのに。どうして?
僕、『命を大事に』って約束を反故にしようとしましたよ?それは赤様を大事にしないって事にもなりますよ。
そんなキノコなのに、支えてくれるんですか?
見限ったりしないんですか?
おいていかない?いなくなったりしない?
不思議そうに見上げる僕に、嫌そうな顔をしながら赤様は黙り込みました。
「……赤様。いなく…ならないですか?」
《……はぁっー…。俺はいなくなれないんだよ。この世界にしか俺は在れないんだから…》
……ああ、そうです。
赤様は僕の世界にしかいられない、僕が認めなければ在れない。下位存在だって言ってました。
僕が望んだだけ、居てくれる。
僕が望めば、消えてしまう。僕の精神に左右されてしまう。儚く脆い精神の形。
「……じゃあ…じゃあ、赤様…。ずっと、いてくれるんだ…」
酷い言い方だけど、赤様は僕を見捨てられない。
見捨てたら自分を消してしまうから。
《…不本意ながら、自殺しようとしない限り、俺はここにいるしかないんだよっ》
情けない顔で、泣き笑いしてしまう僕は、なんて非道いキノコでしょう。
赤様を縛りつける、悪いキノコ。
でも、でもね赤様。
「……良かったぁ…。良かったよぉっ。赤様、赤様はいるんですね?僕がいる限り、そこで椅子に座って威張っていてくれるんですね?意地悪言ってくれるんですね!?」
《………》
ピキリと青筋を浮かべた赤様。
怖くないですよ、いてくれるから嬉しいですよ。怖くないですよ?
……ちょっと痛いですね。
すいません、頭を踏みつけるのはやめ……痛いっ!
痛い痛いっ!踵、踵がぐりぐりっと入って、入ってますよー!?
◇◇◇
調子に乗ったわけではないのですが、『堕悪』と戦って頑張ってきた赤様や、『樹之護法』達の犠牲を無駄にする発言をした事は反省しました。
ごめんなさい。
《……本当にわかってんのかねぇ?》
「わかってます、わかりました。だから手を踏むの止めてくださいっ」
土下座してお母さん達に謝れと言われて従ったら、床に付いた手を赤様に踏まれて身体を起こせなくなってるんです。
三本花さんにも謝ります。
誓いを蔑ろにしてすいません。ごめんなさい。
僕が弱音吐きすぎたのは悪かったと思ってます。
赤様には『外』でも『中』でも迷惑かけました、すみません!
だから手を離してー!!
しぶしぶといった風に足を退けてくれた赤様に文句は言えません。
《謝罪して済むだけ有り難いと思えよ?お前の行為は自分の存在価値を失わせるだけじゃなく、俺や『聖樹』達も巻き添えにするんだからなっ!?》
「はい……すいません……。弱音は吐いても、死にたいなんてもう言いません……」
《はっ!当てにできないな、ヘタレ菌類だしっ。どうせ直ぐ『うぇぇー!』って泣くんだよな!?》
「……あうぅ……」
ひ、否定出来ない……。
《……はっー……。こうしてヘタレをいじっていても無駄だな。ほら、ヘタレ。さっさと戻れよ》
「あ、はいっ。……えっと、グラネカラさんを倒したんですよね?……………?…。……………………赤様…なんでグラネカラさんに腕を突っ込んだままなんですか?…」
《…殺したのは俺だけど、お前でもあるんだという事を分からせるために、肉の感触がしっかり分かるように?後学のために?》
いらないですよ、そんな上司が部下を育てるみたいな気配り!
今戻ったら……お肉がっ!お肉がーっ!
《うるせーなっ。肉の感触に涙目になってりゃ、したくない殺しをしたんだなって周囲の同情をかえるだろ?はい、良かった良かった!》
「それ詐欺って言いません?!」
《実際に殺りたくなかったんだから詐欺じゃないっ!過剰演出だっ。ほら戻れっ!》
(っ!…………うぇぇー……)
戻った、戻りましたよ。
フサフサの毛皮に僕自身が埋まっているような格好のままだったので、顔に毛皮がワサワサして気持ちいいんですけど。
グラネカラさんの硬くなる肉が、冷えていく熱が、埋まっている腕に感じられて、こっちは気持ち悪いです……。
《死後硬直するから早く腕は抜けよ?》
(抜いてから代わって下さいよっ!)
《ダメダメっ。ちゃんと殺した実感を持ってもらわないと…。ああ…、ちょうど『魂』が消えるみたいだな》
涙目で腕を抜こうとしていると、グラネカラさんの死体から『魂』が浮かび上がってきました。
綺麗な青銀色の『魂』です。
良かったです、『堕悪』の影響は無くなってキレイになってます。
このまま『世界』に溶けて消えるのかな?と思ったら、何処からか違う『魂』がやって来ました。
この灰銀色の『魂』は、違うグラネカラさんの物でしょうか?
灰銀と青銀の『魂』は語り合うように点滅を繰り返していましたが、やがて灰銀の『魂』から"何か"が青銀の『魂』に移り始めました。
そうしてカラッポになった灰銀の『魂』は消えてしまい、残った青銀の『魂』はフヨフヨと洞窟の天井まで登っていき、岩壁を越えて空に向かっていったようです。
(……なんでしょう、今の)
《さて、な?……ま、『魂』が出ていったんだから、『殺生』は為った。目的は完遂されたわけだ》
(あ、そうですね。これで鱗が……。あ、あと僕らはレベルアップしたんですよね?)
赤様が倒したんだとしても、経験値は入ってるはずですよね?
かなりのレベル差がありましたし、どのくらい増えたかな?
名前: キノコ
種族: ロムスーキノコ 造られた入れ物
職業: 無し
レベル: 203
体力: 7420000
心力: 6300000
技力: 8900000
能力: 自給自足 毒性無効 状態異常無効 身体制御 魔力制御 疾風走行 万能結界 自覚無毒 万能毒成 這寄毒成 毒性支配 剛力健脚 臭気追跡 剛力腕白 妖気切断 瘴気切断 武器之体 狂気抵抗 空中移動 水中移動 悪意耐性 堕落耐性
称号: 聖樹の落とし子 魔女の養い子 人造人間 妖精の友 幽霊の友 荊騎士の弟子 全てを毒す 一撃必殺 矛盾の暴力 開き直り 十人力 幽霊狩り 絶ち切る 死霊狩り 一気呵成 鎮魂歌 水渡り 空中遊戯 無慈悲 狼竜の恩人 青狼竜の救い 血肉喰い 慈悲殺生 家族愛
《……》
(あっ!スゴい!赤様、当初の目的レベルの200を越えましたよっ!?流石赤様っ!)
《……》
(赤様?どしたんですか?疲れましたか?)
なんで頭を抱えてるんですか?
《……はっ、800万、越え……800万越えって……》
(ああ、技力ですか?スゴいですねー?体力も心力も桁が増えましたねー!)
《…ヘタレ…『身体制御』と『魔力制御』、ちゃんと発動してるな?》
はい?
してますよ、ちゃんと。
"循環法"を頑張って会得して、身につけたんですから。
《…足りない…どうする?『神体制御』は直ぐに身に付かないし、『魂力制御』をとっても『三身制御』にしか……》
(……赤様?)
ブツブツ言ってますけどなんなんでしょう?
《ヘタレ……予想以上に能力値がヤバイ》
(……?はい?)
《つまり、ちょっとした刺激でも自滅する……わかるか?》
はい?
どういうこと?
《レベルが上がれば体力値等も上がる。上がるってのは体が変わるってことだ。だから一段ずつ進まないと身体が悲鳴を上げる。あたりまえだな。さて今回、一気に200まで上がった、体力値は百倍まで上がった。身体はどうなる?》
(ど、どうなるって…)
《『身体制御』や『魔力制御』はこの急激な成長にも対応してくれる。だから俺も安心していたんだが…。中位能力では800万成長には耐えられない…。お前、今まさにパンパンに膨らんで破裂を待つばかりの風船になりつつあるぞ…》
パンパンに膨らんだ風船は、ちょっとの刺激でパァーンと割れる。
つまり、中身と魔力が急激に増えたので、身体が中から破られる、と。
(…ー!?あ、赤様っ!!?)
《レベル200でも、いっても300万だと思ってたんだよ。そうなるまでに制御系能力も揃うだろうって。揃わなくても300万台ならなんとか抑えられるだろうって。ところが、なってみれば800万越え。更に一回でレベルアップしたから、制御が間に合わない……。身体の制御も魔力の制御も、技巧の制御も足りない。お前、今、身体に異常は感じないか?》
(うぇっ?……そういえば、節々がパキパキ鳴ってるような?)
痛いような痒いような?くすぐったいような?
そんな感じが…。
《筋肉ムキムキな人間がいるだろ?今の細っこい身体からいきなり筋肉ムキムキに変貌するようなものだから、筋とか骨とか負荷がかかって鳴ってるんだ、それ》
(筋肉?筋肉は嬉しいですけど、つまり?つまり、身体が危険な状態になるって事ですか?でも、身体は赤様の『お肉』で出来てるしっ…)
《……まぁな、弾け飛んで四方八方に飛び散っても、まぁ死にはしないだろうけど…。外的要因じゃなく内的要因だから下手すりゃ精神も飛び散って…。そこが問題だ…》
うえっ!!?
なんて事でしょうっ!
せっかく持ち直したのに、また僕と赤様ボロボロになるんですか?!
パキパキいう身体は思ったよりいうことを聞かず、グラネカラさんの遺体からなんとか離れて膝をつきました。
お、重たい?
体が重い。なんでっ?
《筋肉・脂肪が加速的に増えてる…からだな。ああ、こりゃ一般人には"死"に等しいレベルアップだな。蓄積エネルギーがごっそり持っていかれてる…。人造人間じゃなきゃマジで死んでたな…》
(エネルギー?ご飯、ですか?)
《飢餓事に使う蓄積脂肪とかのエネルギーが、レベルアップ時に多少使用されるんだ。……一気に200レベル800万台だと、一般人はエネルギー吸われすぎて壊死するな、これ》
どんな恐ろしい事になってるんでしょう、今。
あ、でも、この痛みをこらえれば身体が強くなって、中身の膨張に耐えられるんじゃ?
《いやいや、同時進行だから。しかも中身の方が容量多い。漏れる。あー…やっぱり制御系が上手く機能してないな…。ヘタレ、まだ大丈夫か?》
(な、なんとか…。この身体になった、初めの頃みたいですけど…)
《…俺の能力を出しても、この成長には耐えられない。ヘタレ、最悪粉々になる覚悟をしとけ》
くらくらする頭に響く赤様の声に、なんとか頷きます。
粉々になるくらい、キノコ時代の魔女さん実験で慣れてますから大丈夫です。
赤様もいるし、耐えますよっ!
《…うーん、ほんと根こそぎ持っていかれるなぁ。制御に力を回せなくなるぞ、これ。そしたらレベル200の『全てを毒す』の被害が…》
………ぇぇえー!?
待って、ちょっと待って赤様っ?
『毒』はダメですよ、ダメでしょうっ!?
ノロル山が滅びますっ!
《分かっちゃいるんだが解決方法が……。…ん?ヘタレ。ステータスの最後になんかあるな?》
はい?なんか?なんですか?
ピロリローン♪
『レベル神より言祝ぎがあります』
《………?》
(…?……)
『"職業:無し"でレベル100を超えた事を記念して『虚脱の生』の職業選択権を授けます』
『"職業:無し"でレベル200を超えた事を記念して『解脱の生』の職業選択権を授けます』
『おめでとうございます。無職でレベル200を超えたのはあなたが史上初となります。これを記念して新職業『唯之生』の職業選択権を授けます』
『おめでとうございます。一度に150以上のレベル上昇が認められました。レベル神ボーナスとして能力『不可死戯』を授けます』
『職業選択権の発動により新しい能力を獲得しました。新能力は『虚無指数』『唯寝唯生』『極切消費』『水飲霞喰』『万界素浪』です』
『新職業選択権の発動により新しい称号を獲得しました。新称号は『無職の極み』『最強無職』『無職矛盾』『虚脱解脱の生』『仙人候補』『生の意味』『レベル神の寵児』です』
………無職無職と失礼ですねっ……。
あれですよ、働いてましたよ、僕だって!ギルドで働いてましたよっ?
なのに職業選択しなかったからって無職無職って!
定職に就かなきゃダメなんですかっ!?
いろんな仕事しちゃダメなんですかっ?働いてるじゃないですかっ!
いいですけどね、どうせ僕キノコだし、無職でっ!
(でもどうせなら職業:菌類って授けてほしかったなぁ……。赤様?どうしました?)
《……っおお…おおおっ?……ぉお…》
(お?)
《…っレベル神様ー!!!》
(っ??!?)
いきなり赤様が叫んだのでビックリした僕は尻餅をついてしまいました。
身体がいうことをきかないからバランスをとれませんでした。
《なんてタイミングの良さっ!作為的と疑うがこの際それはどうでもいいっ!ヘタレっ、『不可死戯』と『万界素浪』発動!!》
(は、はい?)
《不可死戯》
隠蔽・擬態・制御の最高能力。あらゆるモノを欺き、騙し、操る。
基本は自身のステータス・外見・生体を操る事しかできないが、他能力との組み合わせで外部にも影響を及ぼせる。
"死"ですら悪戯に騙せる、危険な能力なので多発要注意。
(急激なレベルアップにより世間体が危うい君に、レベル神からのボーナスです。これからもレベルアップに励んでください)
《万界素浪》
全ての世界、あらゆる意識、絶え間無い変化を"素"のままで受け流す事が出来る。
制御系最高能力にして"裏"能力。
外部変化に影響を受けず、いつまでも"自身"を保っていられる。
地形・空間・時間・肉体・精神・魂・レベル・ステータスに影響を及ぼされても無効化可能。
他能力との併用可能。
……はい?
《だからっ!レベルアップによるステータス上昇は内部変化だから、『不可死戯』で《万界素浪》を騙して身体影響を受け流すんだよっ》
…はい?
…え?はい、えっと…だから…?。
《いいから発動しろっ!肉が裂け始めてるだろうがっ!》
っええっ!?
あらやだホントだっ!
お肉がムキムキになってきて、皮膚が裂けたんですね。怖いっ!
でも血は出ないんですよね、不思議ー?
《いいから早くしろー!身体がバラバラになったら復活に手間取るだろうがっ!『毒』が撒き散らされるだろうがっ!ノロルが滅ぶぞっ!》
(そうでしたー!!!)
なんとか間に合ってはみたものの、ステータス上昇を緩やかにする事しか出来ず、僕はしばらく寝込む事になりました……。
赤様曰く
《とんでもない筋肉痛みたいなものだ。いや、成長痛?》
とのことです。
ゲームでもレベルアップすると筋力とか上がりますよね。
1、2くらいの上昇ならまだしも、いきなり10も20も上がったら外見変わると思うんですよ。もうそれ、変身ですよ。
ほんとなら一段ずつ上がって身体を慣らさなきゃ危ないっ!
キノコは桁違いに成長したので、巨大化する感じで変わるとこでした。
普通の人だと耐えられずに死にます。大量ドーピングですから。
レベル神様はレベルアップに頑張る子に"寵児"をよく授けます。
効果はレベルアップしやすくなります。
どのように、しやすくなるかは秘密です。




