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振るった暴力は返ってくるんです!

世界には『王』と呼ばれる君臨者達がいる。



民をまとめ政治を行い国を代表する『国王』とはまた意味合いが違う、『王』。



そんな者達が世界にはいる。



『雷王』は空と風、自由と平等を愛すると謡われている。


もともとは『雲海主(ウンカイノアルジ)』から産まれた一体の飛行竜が地上に降り、成した子供であった。


"異形"で産まれながら"異常"な力を有した子供は、姿で迫害され力で畏怖され、やがて孤高の座位に君臨した。


彼は『独り』だ。


彼には『自分』と『その他』しかない。


ある意味『王』の中で最も平等に全てを見ることが出来るのが『雷王』だと謂われる。






《……らしい》


(らしいって何ですか!赤様?!)





◇◇◇





「クヒヒヒ!」


犬歯をギラギラさせて笑うこの人。

目が冷めてます、なのに陽気って……怖いですこの人っ。


雷と共に着地したせいで地面が焦げて草が燃えています。雨が降ってるから燃え広がったりしないでしょうけど危ないですよね。

そんな危ない中を固そうな鱗の脚で踏み出してきました。


…あれっ?、人?……下半身ドラゴンみたいですけど、人でいいのかな?


《…チッ!…『雷王』かよっ…》

(……赤様、それで結局『雷王』って?海竜のお爺ちゃんは『海王』って人の部下だって言ってましたよね)

《あー……そうだ、そうだったな…。近くに『雷王』の島があるって言ってたわ…。あー面倒クセェ…》

(赤様?)

《手っ取り早く説明すると、『雷王』は『魔女』とガチで殺り合える化物だ。機嫌を損ねると何するか分からない自由人だから気をつけろよ》

(…………魔女さんと?……)


そうですか、だからですね。

この圧倒的な威圧。

海竜さんやギリルさんが小鳥に見えるレベルでビシビシきますから。


『魔法使い』はとうとう気絶しましたし、『勇者』さんは……。

あ、水から上げられた魚みたいにパクパクしてます。

震えてます、怯えてます。

生存の危機を呼ぶような威圧ですからね。寧ろ気絶しないだけ大したものです。

やはり『勇者』となると強いんですね。


しかし植物にも影響が出そうな威圧は止めて頂きたいです。

制御出来るでしょ?


「あのー……申し訳ないんですが、少し気配を弱めて頂けますか?皆怖がってます」

「クヒ?……ヒヒ、ああ、そりゃ悪い」


濃厚な『雷王』さんの気が一気に無くなりました。


外にあれだけ放出していた気配を一瞬で纏めて閉じ込めるなんて……凄いなー!


廃墟からの微かな明かりに金瞳を輝かせる『雷王』さんが小首を傾げて僕達を眺めます。


「クヒヒー?あれー?なんか変だな?普通、俺を見たら逃げるか腰を抜かすか気絶するかなんだけどー?」

「……それは大変ですね、自己紹介も出来ないじゃないですか。あ、僕はキノコと言います。初めまして」

「…?……クヒヒヒ!…初めまして!!」


一瞬不思議なものを見るようにしていましたが、直ぐに食えない笑顔で対応してくれました。

見た目ほどは怖い人じゃないのかな?

挨拶もしてくれますし、いきなり襲ってもこないし。


「んー?まともに話せそうなのが子供だけか。『キノコ』、だっけ?」

「はい、僕キノコです」

「クヒヒヒ。お前面白いなー。俺が恐くない?」

「…ちょっと恐いです。でも威圧を抑えてくれたし、お話が通じるなら大丈夫です」

「どうかな?交わしてる(・・・・・)だけで通じてない(・・・・・)かもよー?クヒヒヒ!」


おう?謎かけですか?


「クヒヒヒッ、それでキノコ?なにを揉めてた?俺も混ぜろよ」

「混ぜろといわれても……。というか『雷王』さんは何処からいらっしゃったんですか?用事は?」

「クヒ!そうだそうだっ!忘れちゃいけない!今ここで『魔法』使ったのは誰だ?」

「『魔法』ならそこの『魔法使い』さんが使いましたよ」

「はー?こんな三流が『樹之護法』を使えるはずないだろー?クヒヒヒ」


!!

な、なんで知ってるんですか?お母さんの魔法!

これって皆知ってるような魔法しゃないですよね?『資格保有者限定魔法』なんですから。


(赤様!なんで?お母さんの魔法って有名なんですか!?)

《有名に決まってんだろ。『聖樹』の魔法だぞ?。…ただし、使えるものが『聖樹』って時点で伝説みたいな魔法だし、感知しても普通なら何の魔法か分かるはずないんだが…。『王』には隠せなかったなっ、ぬかったぜっ!》

(うぇ?赤様でもドジするんですねー?)

《そんな事はどうでもいいんだよアホんだら!いいか?絶対にお前が魔法を所持してるとバレるなよ!?》

(…そ…そうしたいけど、僕、ウソが下手でっ……)

《死ぬ気でシラをきれ!『樹之護法』は『聖樹』の限定魔法だ。『王』に所在が知れると奪われかねないっ》


奪う?

お母さんの魔法が取られちゃう?


それは嫌です!ダメです、絶対!


「…んー?…そうか、一般人じゃ知らないか。あのな?ここいらで植物の異常発生みたいな事、起きたろ?それをやったヤツ、誰だ?」

「えっと……。あ、あの…その、魔法使った人を、どうにかするんですか?」

「クヒヒ?…あー、そうだな…どうしようか。ま、それはその時考えるかな。クヒ!」


うう……ばれたらどうなるんでしょう、僕。


逃げた方がいいかな?でも直ぐに捕まっちゃうかも……。

今のうちにステータス確認して見ておきましょう。


《っ!?まて!やめろヘタレ!》






名前:

種族: 違物(チガウモノ)

クラス: 雷王(ライオウ)

レベル: 測定無用

体力: 測定無用

心力: 測定無用

技力: 測定無用

能力: 神人之業  神竜之業  天地縮尺  天空支配

称号:  天地の合いの子  畏怖異形の生  欠けた心  自由人  開き直り  血の下克上  王成死成  雷王






…あれ?なんか変なステータス…。


おかしいな、と思った瞬間、僕の体が凍りつきました。


離れていた『雷王』さんが急に目の前に来たように感じたのです。


今まで抑えられていた『雷王』さんの威圧が更に増し、僕だけを狙って突き刺さってきたからだと気づきました。


「ッ…!?」


これまで味わった事が無いくらいの密度で押し潰してくる殺気に体がいうことをききません。

意識すら持って行かれそうになるのをなんとか踏ん張り堪えます。

な、なんでいきなり?!


「…クヒッ…。今、『探った』な?『雷王(オレ)』のステータスを見たのか?ん?」

「っ…」


《…っのアホ菌類!やめろって言ってんのに何やってんだ!》

(だ、だって、赤様!赤様が『見透かし』は何時でもやれって…)

《あーっ、融通きかねぇな!明らかにヤバイ相手にいつも通りの戦法が効くわけないだろ!?頭使えよヘタレキノコ!》

(う、うぇー…)


爛々と光る目が僕を捕らえています。


「んー?…『魔女』の魔力を感じたぞ?クヒヒヒ、そうか『見透かし』か、そうだろ?」


真っすぐ僕を見つめたまま、笑みを濃くしてこちらに一歩、進んできました。

ドラゴンの脚が地面を凹ませます。


更に一歩、近づいてくる『雷王』さんから逃げたいのに体が動きません!


(あ…赤様っ、な、なんでー!?)

《……勇者だって威圧で動けなくなったろ。お前だってなるさ、金縛りだな》

(だって、さっきは…)

《本気じゃなかっただけだろ?まぁ、今が本気とも限らないがな。なんせ『王』だ。世界の頂点にいる奴らなんだから、まだまだ本気じゃないんじゃないか?》


こ、これでもまだ全力じゃないんですか?


「んー、そっか?お前があれか、『魔女の養い子』!だから魔女の魔力も少し持ってるわけだ!」

「ッう…」

「…じゃあお前だろ?『樹之護法』使ったの。『見透かし』が出来るなら可能性はある…そこの魔法使いなんかよりよっぽどな。クヒヒヒ!……嘘ついたなー?……」


はい、すいません。僕が使いました。


僕の前に立った『雷王』さんは下半身がドラゴンのせいか見上げるほどに高いです。

ギリルさんも大きかったけどそれ以上。でも筋肉はギリルさんより少ない。ほどほどについてます。


しゃがむ、のではなく上半身を折り曲げて僕に顔を近づけてくると犬歯の間から長い舌を出して触れそうな距離でチロチロしてきました。


「…うぇっ…」

「…なぁキノコ?お前が『樹之護法』を持ってること『魔女』は知らないだろ?知ってたらこんなとこに一人で放すはずないもんなぁ。捨てられた後に手に入れたのか?」

「……」

「クヒヒッ。それとも罠かな?『聖樹の後継』を使って『王』をおびき出す…。んー、だがあのババアが『王』に何かしても得にはならないしなぁ…。あー…考えんの面倒……ヒヒ…」


腕組みしながら僕をじろじろ観察していた『雷王』さんの目が、イタズラを思い付いたように光ったと思ったら。


「うぇっ!?」


鱗と爪が光る腕が伸びてきて僕の頭を鷲掴みしました。


人間の上半身の手なんですが、それでもとても大きくて僕の目が塞がってしまいました。

頭がすっぽり包まれています。

突然の事に抗おうにも金縛りの体は動きません。

痛い痛い!


「クヒヒヒ!面倒だし面白くなりそうだし、ま、いいか!」


ギリギリと締め付けてくるんですけど!?

痛いですっ!


「お前から『樹之護法』引きずり出したら『魔女』はどう出るかな?クヒヒヒッ楽しみー!」


はいー?

な、なんでそんなことに!?

流石"自由人"、読めませんねっ。

あ、だから『交わしてるだけで通じてない』なのかな!?

あぁっ痛い痛い!

ミシミシメキメキいってますけど、これ、頭大丈夫ですか?潰れてないですか?


(赤様!魔法の、お母さんがっ、あ、頭がぐちゃぐちゃにっ)

《うーん…まぁ、グチャグチャくらいじゃ死なないが…。『王』だからなぁ、魂消滅なんてされたらどうなるか…。といっても逃げられそうにもないし…》

(あーっ?!へ、凹んできてません?なんか出てませんか?頭からっ!)

《なぁヘタレ。素直に『樹之護法』を渡すってのはどうだ?》

(だっ、ダメ!絶対ダメ!!)


お母さんの残した魔法ですよ!?

なんでこの人にあげなきゃいけないんですか?僕のです!


『雷王』さんの手に何かが(・・・)吸い上げられるような感覚が生まれましたが、必死に抵抗します。

握り潰してくる握力で眼球が圧迫されてるんでしょう。視界が紅くなっていきます。

それでも渡しませんよ!


「クヒヒ!抵抗するか、そうだよなー。…そういえばそこの魔法使い、かなりズタボロにされてるけど、やったのお前だろ?」

「っ…うっ…」

「手足が腐ってるし、切り傷だらけにされてさー。非道いんじゃないの、やり過ぎじゃないの?抵抗しても関係無しにボコボコにしたんだなー容赦無いなーキノコ」


穏やかに話していますが握力は更に強まってます。じわじわときてます。

僕、じゃなく赤様の頭がどうなっているのか…。


「人に暴力振るったら、同じ目にあわされても文句は言えないんだぞー?知ってたかー?クヒヒヒッ!」


ズブリッ。


頭に直接響くような音。というか衝撃。


辛うじて見えていた左目が真っ暗になっています。

『雷王』さんが握った親指で刺したのでしょう。

こめかみから刺して眼窩に抜けた指が動く感触がします。


痛い、熱い、熱い!痛くて熱い!


「ッ!あ、いっ…!」

「クヒヒヒ!さ、諦めて『樹之護法』を寄越しなー?」


嫌ですっ!ダメです!

痛い痛い、痛いけどダメなんですっ!


《…あー…。ヘタレ、死んじまったら結局は奪われる。今は素直に渡して…》


赤様の進言も無視して抵抗していたら体を持ち上げられたように感じました。


頭だけで吊り上げられて足が地面から遠くなり、プラプラ揺れています。


「まーだ渡さないかー。頑固だな、クヒヒヒッ。じゃ、もう少し痛い事しようか?」


更に高く持ち上げられる僕。

く、首がもげそうですッ…!


ーと、思ったら地面めがけて『雷王』さんが僕を叩きつけてしまいました。


飛び散る水飛沫。

はねる土砂。

頭から泥に減り込む僕。


潰された目に染みてくる雨水。無事な右目に映るのは草に埋もれる『魔法使い』。


暴力を振るったら暴力が返ってくる。

因果応報。なるほどです。

僕にも返ってきたんですね、これ。


グチャリ、ボキリ。


嫌な音もします。

何処か潰れて…折れた?首かな?


「クヒヒヒ!」


ズシンと響くドラゴンの脚。




……え?絶体絶命?


どうしましょう?





















『雷王』は島を持っていますが『国』ではありません。

彼に統治は無理です。

クヒヒヒ言って遊ぶだけですから。

『海王』は海洋種族をまとめているので『国王』にもなります。


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