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魔女の掌 ~悪魔と鬼~

…………第二の、ヒロイン!




ポトリ、ポトリと滴る水滴。


鍾乳石から落ちる水に夢うつつだった彼は意識を戻した。


(……はて?何をしていたんでしたっけ?)


近頃物忘れが激しくなった気がする。

年齢の影響、といえば否定は出来ない年齢ではあるが、彼の場合は記憶量のせいである。


千年単位で生きている彼は記憶の消去が許されない魂を持っている。

あらゆる事象、あらゆる歴史、あらゆる言葉、あらゆる人生。

彼が見たこと聞いたことに限るが、忘れる事が出来ずに整理するしかない記憶の本棚は広大で緻密である。


なので最近は無駄に記憶をしないように引きこもり生活をしていたのだが、ついこの間、ある事件が起きた。


それにより新たな記憶という本を棚に入れなければならず、なら棚を拡張するかビッチリ収まっている本をずらすか、ねじ込むか。

そんな事をしているうちに、くだらない雑事は蔑ろにしてしまうのだ。


(そうそう。くだらない雑事だから、忘れただけですね。年は関係ない。ないない)


そう自分で結論を出し、優雅な所作で立ち上がる。

忘れていたのは餌をやる事だ。

決して男の趣味ではないモノで、死んでも構わないから"くだらない"用事なのだが……。


(くだらなくとも、あの方の意向ですからね。不真面目には出来ません)


そうして音もなく移動する。


音などするはずもない。

彼は地面を滑るように浮遊し、歩いているのだから。

まるでダンスのステップのような軽やかさで空中歩行する彼の背には、羽毛が少し生えたコウモリのような羽がついていた。

けれどそれを使って浮いているわけではないようで、現に羽は畳まれたままだ。


飾り物にしては生々しい羽に貴族のように豪奢な仕立服。

ピッチリと後ろに流した金髪とモミアゲに繋がるアゴ髭。

長い手足を優雅な所作で操り、魔力を呼吸のように使い空を闊歩する姿は気品に溢れて美しい。

美しさは彼にとって矜持ともいえる。

なので自分自身を見栄え良くするのは当たり前で手は抜けない。


だが、今から行うのは些事とはいえ手を抜きたい。

趣味ではないし、楽しくもないし美しくもない。

男の足どりは重い。



「…おやおや?」


横穴縦穴がある迷路のような道を進んで、彼は意表をつかれたかのような声を出した。

ただその声は多分に喜色が入っていた。

『面白いモノを見た』と語っている。


「珍しいですね?私に会いに来てくださったんですか?姫様」


美しい鍾乳石に囲まれた洞窟の先には、小柄な人影がポツンと立っていた。


抜けるような白い柔肌を上質な一枚布の羽織りで隠し。青みがかった黒髪を膝まで伸ばしたやたら綺麗な少女がこちらを見ていた。ピクリとも動かない白い顔で鈍く光る黒目が印象的だが、一番に目をひくのは頭部。

二本の角が王冠のようにグルリとそこを囲っている。


「…悪魔に会いたかったわけじゃない…」


ぷっくりと艶を放つ唇からはそう返答がきた。

こちらは嫌悪を隠そうともしない声色だ。

けれど悪魔と言われた男は気にしない。美しいモノを愛する彼は美少女の暴言すら美しく感じるのだろうか。


普段なら会話どころか姿さえ出さない少女に、男は心が浮足立ちそうになる。


「ふむふむ。では何故私の領域に入ったのでしょうか?お分かりでしょうがこの鍾乳洞は私の場所ですよ?」

「…約束…」

「約束?はてさて、してましたか?」

「…あんたじゃない。…キノコ…」

「ああ……なるほど」


無表情な顔を幾許かかげらせた少女の言葉に男は合点がいった。

そうして少しだけ憐れむように『鬼』の少女を見下ろす。


『悪魔』の彼もキノコには暫く会っていないので同じ心境だからだ。 




◇◇◇




"事件゛は悪魔の知らぬ間に起きていた。


あの野蛮人がいきなり訪問してきて、事件を初めて知った。


『なんですか?薄汚い人間が何の用です?』

『……魔女様が、コイツらを生かしておけ(・・・・・・)って言ってよ……』

『おやおや、これまた貧弱な人間が二体?どうしたんですか、これ?』

『……オレは、オレだと殺しちまうっ……お前なら…生かさず殺さず、出来るだろ…』

『……この人間達を?……何かあったんですか?』

『コイツらっ!…キノコを、あいつを……っ!』

『っ?!……』


憤怒の表情で感情をなんとか抑えようとしている野蛮人を悪魔は初めて見た。喜怒哀楽がはっきりしていて、特に怒りを発散させないようにする芸当を持っているようには思えない人間だったのだ。

ようは我慢等しない人間が、我慢をしているのが珍しかった。


だが、あの怒りは悪魔にも解る。

よく犯人を殺さずに悪魔の元に届けたものだと、感心したものだ。


そうして受けとった二体を、しっかりと保管(・・)した。


魔女の意向というのも重大だが、悪魔とて『キノコ』には多少愛着があった。

その『キノコ』を害したのが低級な人間だと知った時、少なからず動揺するくらいには親しかったのだ。

加害者であるあれら(・・・)はその分だけでも苦しんでもらわなければならない。


そして今、寂しげに細い体で立っている鬼の少女は『キノコ』に執着を見せていた。

悪魔はそれを思いだし、彼女に語りかける。


「…キノコさんの事は、聞きましたか?」

「……聞いた。…私に会いに来るって約束…今日なのに……キノコ、来ない」

「それは勘弁してあげて欲しいですね。キノコさんは…」

「だから……私が、キノコの(かたき)をとるっ!……」


黒い瞳をギラリと光らせた決意の顔で少女は言いきった。


(いやいや、それはいけません。魔女に逆らうのはお勧めできません)


(かたき)は今現在、悪魔の管轄にある。奴らに会うには悪魔を介するしかない。 

だから少女はわざわざ悪魔の領域まで足を運んできたのだろう。

毛嫌いしているナルシストの悪魔に頼もうと。

それだけで彼女の"本気"が分かる。


普段は自分の領域に篭って、あの野蛮人すらまだ面通しをしていない『鬼』の家族の中でも、この少女は特に人ギライが激しい。

それがここまで行動に移すほどに『キノコ』に傾向しているとは。

だからこその怒りだろうが、生憎と悪魔は魔女に逆らってまで通したい"怒り"ではない。


面白い出来事だと、心の本に書き綴りながらも冷静に少女を諭す。


「魔女は殺すなと言ったのです。やめておきなさい」

「二人、いるなら……一人残せば良いはず…」

「そういう事じゃないんです。わかってるんでしょう?姫様」

「………だって……キノコは…こんな目にあっても、絶対に仕返ししない……」

「…そうですね。キノコさんはしないでしょうね」

「でも……報いは受けさせなきゃ……キノコがしないなら、私が殺してやるっ……」


ほとんど変わらない表情ながら、悪魔には彼女の葛藤が手にとるようにわかった。


彼女は悔しいのだ。


大事な人を傷つけられて。

何も出来ない自分が情けなくて。

どうしたら良いのかも解らなくて。


ただ悔しいのだ。

悔しいのが焦りになり、先走ってしまっている。

考えるよりとりあえず動こうとするのは、『鬼』の習性かもしれない。


見た目は清楚なのに、随分と短絡的に動こうとするのがなんとも『鬼』らしいではないか。


(いじらしいですね、"恋する少女"は。言ってる事は物騒ですが。何にせよ、了承は出来ませんがね)


少し嗜虐心をそそられた悪魔は聞いてみる事にした。


「私は魔女に逆らいません。そんな私を懐柔する"手"はあるんですか?」

「……」


どうやら無いようだ。

無表情ながら困惑している少女もまた美しい。


というかなんの策略もなく来たのが本当なら、猪突猛進過ぎるのではないだろうか?


「……宝石……」

「ふむふむ。そうですね、美しい石は大好きですが、魔女との天秤には役不足ですね」

「…………魔力鉱石……」

「おやおや?姫様ずいぶんと奮発しますね?しかし足りませんね。私、見た目通りに物品には困ってませんから」

「ッ……」

「…もう無いなら諦めてお帰りなさい。くれぐれも魔女に反意をみせてはいけません」


軽く苛めてから優しく諭す。

反骨精神が高いと逆効果に成りかねないが、少女は十分に覚い。

キノコの事で多少乱れたようだが、普段は冷静だ。話せばしっかり解ってくれるはずだと悪魔は考えていた。

ーが。


悪魔は見落としていた。


少女の本質は激情家で猪突猛進の『鬼』であり。

更に今は『恋する乙女』の無謀さと視野狭窄と思い込みがプラスされているのだ。


そんな少女がこの程度でへこたれるはずがない。


少女は自分の王冠のような"角"に手をかけた。

悪魔は、それを見て息を呑む。


「……これ……」

「…姫様、いけませんよ?それ(・・)はやめなさい……」


悪魔は狼狽えた。

まさかそうくるとは。それは卑怯だ。それは、ダメなのだ。


「……"処女鬼の角"……これ、差し出す…………」


ミシ……。


「っ!わ、わかりましたっ!止めてください!!」


悪魔は鬼に負けた。



◇◇◇



少し痛む。

だいぶ痛む。

凄く痛い……。本当は泣きたい位痛い。


でもこのくらいで済んだのだから上手くいった。

本当ならへし折って、寸断された神経に叫び出していただろうから。


ズキズキと響く角の痛みを堪えて、前方を進む悪魔についていく。

交渉に負けた悪魔は『痛めつけるだけなら許す』と言って、人間を捕らえている場所まで案内してくれることになった。

どことなく疲れたような背中にはコウモリみたいな羽がついている。この生け好かない悪魔のなかで、唯一認めてもいいキレイなところだ。


「はぁ……いいですか姫様?殺しちゃダメですよ?半殺し……ああ、まぁとりあえず殺さないように注意して下さいね?」

「……」

「じゃなければ連れてはいけませんっ!はい、約束して下さい!」

「……チッ………………わかった……」

「舌打ちしないっ!美貌が台無しですよっ!」


うるさい悪魔だ。

やたらに外面を気にしてるだけあって美しい悪魔ではあるが少女はその気障なところが大嫌いだ。

本性を隠して装ってるのが丸わかりなのだ。


だが、一時とはいえこの悪魔を下したのは事実だ。

いつも格下相手をするような遜った態度でいた悪魔が慌てる様は、少し楽しかった。

本当なら今頃はキノコと話していたと思うとグツグツと怒りがたぎるが、それを見たらほんの少しだけ溜飲が下がった。


(……キノコ……(かたき)、とってあげる……)


拳に知らず知らず力を込めて、憎悪を気迫にかえて歩く少女に悪魔は注意する。


「…姫様。そんなに怒気を撒き散らさないで下さい。ヤツラはただの人間です。発狂してしまいます」

「……注文、多い……」

「そんな怖い顔ではキノコさんに嫌われますよ?」

「っ!……………ち、違う……キノコ、は……き、嫌っ……」


そんなことはないっ!


キノコはこのぐらいの気迫で倒れる軟弱ではないっ。

だから、嫌いになったりなんて……っ。


「き、キノコ…は……わ…私……」

「……ああ、いやいや、すみません。キノコさんは姫様を嫌ったりしませんよ。でも、彼の性格からして怒っているより笑っている姫様の方が好きでしょうね」

「!!!」


好き?!

キノコが私をっ!?


じゃあ、相思相愛だ!

結婚だ!初夜だ!蜜月だ!そして…っ。


「……小作りっ!…」

「…は?いやいや、何故いきなりそんな言葉を?」

「……大丈夫。私、体は小さいけど……胸も尻も、大きいっ!揉みごたえ有る……」

「………」

「…大丈夫、キノコは寝てれば良い…全部…全部、私が……乗るっ!」

「……ないないっ!やめてください姫様っ!可憐な姿で肉食獣みたいに涎を垂らさないでっ!!」


何やら悪魔が蒼白で騒いでいるけど聞く必要はない。 


こうみえても寝所の技は心得ているのだ。

流石に実戦はしていないが、それはキノコが相手をすれば良い。二人でレベルアップすれば良いだけだ。


(キノコ…キノコ……私のキノコ…)


柔らかい笑顔と太陽の匂いがした可愛い子。

私の強さを超える力を持ちながら謙虚で優しい子。

雌の本能が求める"強い子種"のあの子となら、立派な『鬼』が産まれるだろう。


(キノコ……旦那様……待ってて。人間なんて粉々にしてやるから……)


ハッと我にかえって思い出した。

そうだ、キノコの敵をとらなければ。


ウンウンと頭を抱えている悪魔を追い立てる。


「……何してる……さっさと、案内……」

「っ!姫様っ?……もう大丈夫ですか?」

「……何が?」

「…いえいえ。大丈夫ならよいのです。……私の認めた美少女があんな下品だったとはショックですが、よいのです……」


またもやぶつぶつ言いながらも先導し始めた悪魔に首を捻る。

下品?

何がだろう。


ああでも、ワクワクしてきた。

これ(・・)が終わったら色々準備しなければ。


「…悪魔…」

「なんでしょう?」

「……キノコは……結婚式、したいと思う?…」

「……………は……」

「…私は、式なんてしないで……すぐに"小作り"したいから、やっぱり、家と………丈夫で大きい布団が……」


未来への展望を話していると更に胸が高鳴る。

どうした事か、全身が熱くてフワフワする。でも決して不快じゃなくて……。


(……ああ、キノコ……貴方に会ってから……スゴイ事ばかり……私……どうにかなっちゃいそう)


「…姫様…無表情で赤くなったり惚けたり……というか、人間はもういいんですか?」

「…いいわけないっ」

「ああ、聞いてはいるんですね。聞いては」

「案内しながらでいい、答えて……悪魔…確かあんた、"淫魔"だった…?」

「おやおや?はい、確かに」

「じゃ……房中術は、得意……」

「申し訳ありませんが、姫様には伝授できません……あと、姫様からそんな話を聞きたくなかった…」

「……なら、キノコに、教えて……」

「キノコさんですか?」


ビックリした様子の悪魔に再度頼み込む。


「…キノコが教わって……私で実践すれば、私が"床上手"……キノコは私に夢中っ!……」

「…床っ……び、美少女が…っ!なんて発言を……っ」

「…うなだれてないで……ちゃんと伝授してあげて……」


嫌そうにこちらを向く悪魔に苛立つが我慢だ。

大事な事なのだ、しっかりと頼み込まなければならない。


ふと、悪魔は何事か気づいた様子で思案顔になった。

自慢の金髪が乱れている。面白い。


「…実はキノコさんには"淫魔"の能力を使いこなす才能があるとは感じていました。あの容姿だけでも大体のモノは堕とせるでしょうし、"タラシ"の才能もある。我々悪魔からしたら優良物件なのですよ、彼」

「……キノコ、可愛い…」

「ええ、可愛いですね。もう少し成長したら恐ろしい美貌でしょうし。なので少しちょっかい、というか、助言等は教えた事がありまして」

「……女タラシに、なるように?…」

「いえいえ、彼はどういうわけか"邪"に傾かない…。なれたとしても無自覚なタラシですね。それはそれで楽しいですが……まあ、魔女に気付かれたら厄介ですから、たいしたことはできてなかったわけですが……」

「……でも、私が、キノコと……」

「そうそう、そうなのです。姫様という恋人の為なら私のちょっかいも許される。大義名分が出来る。そうして"無自覚タラシ"となれば、彼の周りでは色恋の修羅場が続発。正に悪魔!そんなキノコさんなら直ぐに私の跡目も継げますよ!」


確かにキノコの可愛いさなら簡単だろう。

だが、悪魔とは言い過ぎだし、そんなことでなれるのか?


『堕落自体は簡単ですよ?跡目は能力次第ですが彼なら十二分です』

との事なのでキノコならやっぱり簡単みたいだ。

流石は私の旦那様だ。 


あ、今はまだ"恋人"か。


恋人。……うん、良い。

愛人でもいい。なんでもいいがキノコといたい。ああキノコキノコキノコ……。


「……といっても、当のキノコさんは……どうなっているやら……」

「……」


そうだ。


あの"事件"のせいで、キノコは。


伝え聞いたところだと『魔女』に保護されているらしいが、『魔女』の家は秘匿されているから本当か確かめようがない。


『魔女』に限って万が一、にはならないと思うが……。


(あの年増……キノコを早く治せっ……)


ああ、イライラする。

早くキノコに会いたい。キノコキノコ……。


「焦ってもどうにもなりません。今は出来る事をしましょう」


再び歩き出した悪魔に続きながら、今言われた事を考える。


(出来る事。……(かたき)をとって、結婚して。それから、それから……)


「キノコ……外の世界に行く……」

「そうそう。そう言ってましたね。無事回復したら旅に出るのでしょうかね?」

「……私も……」


私も一緒に行く。


最後まで言わないうちに凄い勢いで悪魔が振り返った。


「……いやいや、まさか姫様?キノコさんに追従するおつもりで?」

「…キノコは恋人……ずっと一緒」

「ダメダメ、いけませんよ?姫様は外界では狙われる立場。危険です」

「……悪魔に心配されるほど……弱くない……」

「弱いとか強いとかではなくて、『鬼』は希少種族で……何より姫様がいなくなると『魔女の掌』の"美レベル"が大幅ダウンです!嘆かわしいっ!」

「……」


だからなんだ?


「魔女の美貌は疑いませんし審美眼も確かなのは知っています。キノコさんは本当に素晴らしい。なのに残る"住人"が野蛮人と疫病っ!醜いっ!姫様もキノコさんもいなくなったら私の心の安寧は無くなりますっ!由々しき事態ですっ」

「……………」

「どうしたら………キノコさんが旅に出なければ…?いやいや、それは可哀相………そもそも姫様が出るなら『鬼』が…………むむ…」


唸るのはいいが、さっさと案内してほしい。

もう今日は帰って自分磨きに精を出そうかな?

髪を洗って身体を磨いて……母様に夜伽の作法を習って……。一応父様にも男について聞いておこうか…。父様とキノコじゃ正反対な感じだけど。


「そうそうっ!そうですっ!」

「……?」

「姫様っ?流石に『鬼』の姿で旅をするのは無理があるのはわかりますよね?キノコさんにも負担となります」

「…負担っ……」

「そこで私の秘蔵アイテム、『変身』の指輪をお譲りしましょう。これがあれば様々な種族に変身出来ます!本来の力はそのままでっ!効果は任意、隠蔽ではないので見破る事も難しいっ」


それは、凄いアイテムじゃないのか?

もちろん欲しい。

ああ、この悪魔が無償で譲るわけが無い。えげつない対価を要求してくるのだろう。


「……望みは?…」

「いやはや話が速い。お二人の旅に同行…は流石に気が引けますので、たまに私がそちらを訪問する許可を頂きたい。なに、そのための労力は全て私が払います。お二人のお姿を堪能したら直ぐに帰りますし、邪魔は決して致しません。誓いましょう!」


悪魔の宣誓は信じるに値する。

抜け道は有るのだろうが、悪い話ではないと思う。思ったほど理不尽な要求でもないし。

ただ…。


「…キノコと相談……」

「そうですね。相談して決めて下さい。まあ、ダメならダメで違う手段を講じますがね」

「……悪魔…」

「ええ、悪魔ですからね私。ウンウン、楽しみが出来ました。良い気分です」

「…じゃ、殺していい?……」

「それとこれとは関係ありませんね。殺しちゃダメです。嫌なら帰ります」

「……チッ…」

「舌打ちしないっ!」


本当にうるさい悪魔だ。

趣味に関する事だと余計うるさい。


だが楽しみというのは同感出来る。


キノコと外へ。


二人きりの旅。邪魔する奴はいない。いたら殺す。

どんなに逃げても叫んでも助けは来ない。キノコは逃げられない。いつでも何処でもキノコを思う存分に……。


「……フフッ………」

「姫様、涎」

「………」


諦めたような悪魔を促して先を進む。


待っててキノコ。

人間なんてすり潰してあげるから。





暗い鍾乳洞を悪魔と鬼が行く。


明るい未来へ、殺意と欲望と希望を込めて。



  








キノコは姫様を一度撃退しています。負けた姫様は強いキノコに惚れました。ちなみに姫様の見た目は13歳くらい、キノコは10歳くらいです。

美少女・巨乳・金持ち・血筋良しの姫様と結婚すると逆玉の輿で尽くしてくれますが、自由がなくなります。縛られます。エロさで骨抜きにしてきます。監禁されます。

"角"の希少度については本文中で語ります。

果たして想像通り……かな?


悪魔さんは見た目三十代後半のダンディーです。独身です。

淫魔のトップレベル悪魔ですが、そっち関係の能力はしばらく使っていません。

実はキノコを自分好みに育てようと画策してます。

ロリコンでもショタコンでもありません。"美"が大好きなだけです。

野蛮人のギリルさんは嫌われています。


この二人はある意味キノコの天敵です。包囲網から逃げるには圧倒的に経験値が足りません。

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