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怪奇解決株式会社  作者: カエル
一章
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休憩2

「いいえ、違います」

 岡島さんはあっさりと教えてくれた。聞いておいてなんだが、そんなにあっさりと喋ってしまってもいいのだろうか?


「彼女は、元神様です」


 岡島さんはまたしても、さらっと答える。

「神様ですか?」

「はい、彼女が入社する時に社長が皆の前で言ったんです。『今度うちの会社で働くことになった野上だ。彼女は元神だが、みんな仲良くしてくれ』って、最初は信じられませんでしたがね。ですから彼女の正体は社員全員が知っています」

 あの気配は尋常じゃないと思っていたが、元神様だったとは、実際にこの目で見ていなければ僕も信じられなかっただろう。

「元ということは今は違うのですか?」

「はい、何者かに土地を奪われて逃げてきたと社長は言っていました。その戦いで今は力のほとんどを使い果たして神様の力を失ったらしいです。力を使い果たして消滅寸前のところを社長が拾って契約したようです」

「契約ですか」

 岡島さんは鯖定食を食べながら頷く。

「うちで働けと、働くなら定期的に力を与える。力が溜まれば、あの土地を取り戻すことができるかもしれないと、彼女は了承しました。そして、今は人間の姿で働いています」

 状況は違うが彼女もまた僕と同じように、社長の力が欲しくて働いているわけだ。

「それにしても土地神を追い出すなんて、どんな相手なんですか?」

「相手の正体は彼女も社長もよく知らないようです。相手の正体を知ることも彼女がうちで働く理由の一つでしょう」

 岡島さんは真剣な表情で僕を見る。

「彼女は元神様ですので、人間とは違う時の流れ、感覚で生きています。ですので少し言動がおかしいと感じることがあるかもしれませんが、どうか仲良くしてくださいね」

 岡島さんの真剣な言葉に、僕も力強く返事をする。

「はい」

 人間じゃないからと言って悪いとは限らないし、人間だからと言って悪くないとは限らない。人間じゃないからと言って悪くないとは限らないし、人間だからと言って悪いとは限らない。良いか悪いかは実際にそのものに関わって決めればいいことだ。

 僕の返事を聞いて、岡島さんは嬉しそうにニッコリほほ笑んだ。


「さて、他の社員のことや私自身のことも教えて差し上げたいのですが、もうそろそろ、昼休みも終わります。それはまた次の機会に」

「分かりました。いろいろ教えていただき、ありがとうございます」

 定食を食べ終えた僕と岡島さんは席を立つ、財布を取り出すと岡島さんが「今日は僕のおごりです」

 と言って僕の分も支払ってくれた。正直、金欠だったので助かる。いつか必ず恩を返そう。

 定食屋「逢魔」を出て、少し歩いたところで何気なく、本当になんとなく後ろを振り向くと、そこには「逢魔」はなく、空き地が広がっていた。驚いた僕を見て岡島さんは面白そうに笑っていた。


 「イカイ」に戻ると今度は三階建てになっていた。岡島さん曰く、このビルは気まぐれでよく階数が変わるが、三階以下になることはないらしい。岡島さんも他の社員も三階より上に上がったことはないらしい。

「まあ、行かないほうがいいでしょうね」

 岡島さんはそう付け加えた。

 三階に上がり、会社の扉を開くと野上さんが正面に立っていた。僕は思わずビクッとなる。野上さんは僕をじっと見つめている。彼女の意図が分からないので岡島さんの方を見る。岡島さんは何も言わずに僕たちを見ていた。先ほど岡島さんとの会話を思い出す。正直怖かったが、勇気を出して、僕から声をかけた。

「野上さん、なんでしょう?」

 彼女は僕のことをじっと見ている。不意に右手が上がり、応接間を指差し彼女は言った。


「おかくさん」

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