訪問
珈琲とオムライスの代金を支払い、喫茶店を後にした僕は家に帰ると「怪奇解決株式会社」について検索してみた。変な名前の会社なのでヒットするかと思ったが結果はゼロだった。
次に近所にあるハローワークに行ってみる。あの【川鳥】という女性は社員を募集しているといっていた。ならば、ハローワークで求人しているのではないかと思ったのだ。
ハローワークのパソコンで検索してみる。なんと一件ヒットした。正直ダメ元だったが、なんでもやってみるものだ。さっそく求人票を見てみる。
職種……怪奇現象解決業務
仕事の内容……怪奇現象にお困りの方をお助けする仕事です。
雇用形態……正社員以外
雇用期間……なし
学歴……不問
必要な経験等……不問、経験者優遇
必要な免許・資格……不問
年齢……不問
賃金……400,000円~450,000円
通勤手当……なし
昇給……なし
加入保険……雇用、健康、厚生、退職金制度なし
就業時間……9:00~18:00 状況により残業の可能性あり
休日……週休二日制 シフトによる
従業員数……企業全体6人、就業場所5人、うち女性2人、不明1人
事業内容……怪奇現象の解決
会社の特徴……アットホームな職場です
定年制……なし
育児休業、介護休業、看護休業、取得実績……なし
年間休日数……記載なし
就業規則……あり
採用人数……1人
選考方法……面接
応募書類……必要なし
選考結果……面接終了後通知
備考……事前連絡をしてください、面接の日時をお知らせします
ものすごく怪しい。仕事の内容は具体的ではないし、明らかに危険を伴う可能性が高そうなのに労災もない。賃金は一見高そうに見えるが、彼女が力と呼んでいるものを受け取るのに一回三十万円かかる。
もし、その分給料から引かれるとすれば、手元に残るのは十~十五万円ほどだ。従業員の中に不明が一人いるのも気になる。応募書類が必要ないなら何を見て判断するのだろうか?他にもいろいろ気になるところはある。
しかし、僕には他に自分の命を延ばす方法が思いつかない。思いついたとしても時間は足りないだろう。ともかく、一度この会社を訪ねなければいけない。僕は名刺に書いてある番号に電話をかけえた。電話に出たのはあの【川鳥】という女性だった。
彼女はさっそく明日、面接にきてほしいと言ってきた。驚いたが、ちょうど明日は用事が何もない。僕は了承し、電話を切った。
「怪奇解決株式会社」は「イカイ」という五階建てのビルの中にあった。
古いビルで、壁は汚れておりヒビも入っている。会社は三階にオフィスを構えていた。他の階には「異空文禄株式会社」や「蓬莱牡牛株式会社」など何をしているのかさっぱりわからない会社が入っていた。
僕はエレベーターに乗ると三階のボタンを押した。五階建てのビルなのになぜか七階までボタンがあったが、今は無視する。エレベーターが三階で止ったので降りると、目の前に扉があった。表札には「怪奇解決株式会社」と書いてある。僕は扉の前に立つと二回ノックした。
「どうぞ~」
「失礼します」
扉を開け、僕は中に入る。これから何度もこの扉をくぐることになる。これがその記念すべき一回目だった。