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怪奇解決株式会社  作者: カエル
一章
12/82

式神

「今日はご苦労だったな」

「いいえ、それほどでもないですよ」

 ナナシが帰宅した後、社長室には二つの影があった。一つは会社の主、もう一つはこの会社の社員だった。


「それにしても、『わざとスタンガンを受けろ』と言われたときは驚きましたよ」

「すまなかったな」

「いいえ、私よりも貴方に痛みがあるほうが心配です」

「お前が言ったんだぞ?式神の苦痛は未熟な腕だと術者に何倍にもなってはね返って来るってな。つまり、それは逆もあるということだ」

 式神が負った苦痛は必ず術者に返る。術者が未熟だと苦痛は何倍にもなる。つまり、術者の腕次第で、本人が受ける苦痛は何分の一にもできるということだ。

「私を誰だと思っている?」「これは失礼しました」

 川鳥鷺はニヤリと嫌な笑みを浮かべ、岡島はニコリと微笑んだ。


「それで、お前から見てあいつはどうだった?」

「まっすぐでいい青年だと思いますよ」

「力のほうはどう思う?」

「未知数といったところです」

「ふむ」

 川鳥鷺は腕を組んで考える。

「貴方も私と同じ意見なのではないのですか?だから、わざと彼を試した」

 川鳥鷺はまたニヤリと嫌な笑みを浮かべた。

「あいつの力はよく分からない部分がある。めったに姿を現さない黒影があいつを狙ったのも未知な力に惹かれたからかもしれない。そこで、何か自分の身に危険が及べば、その力の一部を見れると考えたが……」

「ご存知でしょうが、あの紙は野上さんが彼に与えたそうです」

「ああ、お前の目と耳を通じて知った。まさか野上があいつを助けるとはな」

 川鳥は首を振り、「やれやれ」といった顔をする。

「野上は元とはいえ神だ。未熟な者の式神を払う力を紙に宿すなど余裕だろうが、自分の土地を取り戻すためにできるだけ力は温存しておきたいだろうに、それを使ってまで助けるとは、計算外だったな」


「野上さんは何が起こるか分かっていたんでしょうか?」

「それも元神の力だろう。全盛期ほどの力はないだろうがある程度の未来予知はできるのではないかと私は思う」

 岡島は疑問を口にする。

「そこまでして、なぜ野上さんは彼を守ったのでしょう?」

 川鳥は首をすくめる。

「さあな、さっき奴と一緒に帰ったのもあいつを守るためだろう。奴の未知の力を気に入ったのか?それともただの気まぐれか?他の理由があるのか?いずれにしても元神の考えることは、よく分からん」

「ふー」と彼女は息を吐く。


「野上のことは後で考える。それよりも明日の仕事、頼むぞ」

「おまかせください」

 川鳥は右手を挙げる。

「最後に一ついいですか?」

「なんだ?」

「彼が黒い式神に襲われていた時、もし何も力を発揮できなかったらどうするつもりだったんです?」

「そんなの決まっているだろう?」

 川鳥は嫌な笑みを浮かべる。その笑みは今日一番の嫌なものだった。


「その時は、その時さ」


 川鳥がパチンと指を鳴らすと『岡島』という名の自我を持った彼女の式神は人型の紙に戻った。

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