第13話 クルスの伝承
クルスには伝説と呼ばれるに至った、とある伝承がある。
ある時、クルスの北部に位置する巨大な洞窟から一匹の巨大な蛇が現れるところから伝説は始まる。
街の北から南へと流れる、清流の流れ着く先には巨大な湖がある。
巨大な蛇が洞窟に現れた頃、この湖にも異変が起き始めていた。
街に住む者からは巨大な化物の目撃証言や、噂話が多く当時のスキルマスターの詰所に届いた。
報告の内容は非常に様々で、巨大な蛇であるとか、羽が生えているだとか、水の中から襲ってくるだとか、エラがあるだとか、本当はどんな姿なのか一切検討がつかないほど、報告の内容は多岐に渡った。
そしてある時、当時のスキルマスターによって化物の討伐隊が結成された。
最後の目撃証言を元に、討伐隊は街の南部にある湖へ向かったのだが、彼等は二度と街に戻ることはなかった。
それからというもの、街の至る所で住民の失踪が相次ぎ、結果街は得体の知れない者に対する恐怖が渦巻くようになる。
しかしあるとき、ふらりと街を訪れた見慣れない風貌の男が大きな水竜を引きずって街にやって来た。
彼は道中の湖のほとりでこの水竜に襲われた、と話し、街の住民はこの水竜がきっと謎の失踪の原因であると、そしてそれを見事倒した男を英雄だと讃えた。
英雄と讃えられた男はしばらく旅の疲れを癒すと、この街に滞在することになる。
しかし、水竜の討伐確認後も謎の失踪は止まることがなかった。
当然街の住民はかの英雄に、化物のもう1つの目撃場所である北の洞窟へ向かって欲しいと頼み込んだ。
しかし男は水竜との戦いで体力、精神力共に使い果たしてしまったと、住民の願いには取り合わなかった。
その間も謎の失踪は続き、恐怖に耐え兼ねた住民がどんどん街を離れて行く始末。
最終的には全体の8割を超える住民が、街を離れて行ったという。
水竜の討伐から数年、事態を重く見た当時の王が幾度となく討伐隊を編成するも、1人として生還することはなかった。
ある日の早朝、かの英雄は化物を倒す力が完全に戻ったので化物を討伐すると言った。
当時残っていた街の住民は100人に満たない程度であったが、男はその全員に避難を要求した。
場所の開けた湖のほとりならまだしも、漆黒の洞窟の中では戦いようがない。
街までおびき出して明るいうちに決着をつけると。
すると住民は男に街の中で囮となり、協力すると言った。
街の住民は街の一角にある、しっかりとした石造りの穀物ようの倉庫へ集まり、女子供を広い倉庫のど真ん中へまとめ、男性陣はその周りを槍や剣を持って陣を組んだ。
英雄と呼ばれた男は穀物庫の防備を確認すると、街の中心部にある広場へと足を進めた。
男はその広場で敵の襲撃を待った。
なぜか男は洞窟の化物がやってくるのを確信していた。
暫くすると、まるで闘技場に入るかのように、男が来た道の向かいから黒い、巨大な大蛇がやってきた。
男は、腰に差したこの世界では見慣れない形の『剣』に、手を掛けた。
ちょっといつもと雰囲気の違う回です!
クルスの伝承と、今回の事件がどのようにして絡みつくのか…!
ということで、お仕事お仕事…。