第12話 指揮官の心理戦
指揮官「おっと、まだスカウトが残っていたか、すまないな。」
そういって承認リストに目を落とす、しかしリストにスカウトの個人参加は記載されていない。
しかも全員の承認がやはり完了していた。
秋水は指揮官へ歩み寄った。
秋水「すまんね、聞くつもりなかったんだけど仕事探しに入ったらさっきの話、聞いちゃったんだ、俺も参加させてもらえない?」
指揮官は呆れた。
もっとスカウトが役に立つ任務ならまだしも、今回は街の防備である。
しかし、いくら諜報を任務とする口の固いスカウトと言えど、先ほどの作戦はあまりに高度な機密情報であった。
指揮官はどうするか、と悩んだ結果、もし目の前のこの年若きスカウトが自分の放つ一撃を止めることが出来たら雇ってやろうと。
もちろん止められるなど思っていない、気絶させてスキルで一部の記憶を改変するつもりだった。
スカウト1人相手にスキルを行使するまでもない、指揮官は即座に拳に気を込め、秋水のみぞおち目掛けて神速の拳を放った。
しかし、手応えはない。
秋水「え? なになに、いきなり殴りかかって来るなんて物騒だな、まあ大事なこと聞いちゃったのは悪いと思ってるけどさぁ…。」
自身の拳を見ると、目の前のスカウトのみぞおち辺りをすり抜けるようにして自由に動き、衣服や身体の感覚が伝わってこない。
指揮官はこのようなスキルを1つだけしっていた、『風』の最上位スキルの『偏在』である。
このレベルのスキルを操れるスキルマスターは、今回集まった精鋭の中に指揮官が知る限り、いない。
指揮官はぎゅるぎゅると思考を回転させた。
これほどの使い手がスカウトなわけがない、きっと腕利きのスキルマスターがお忍びで自分を試しているのだと。
大手の任務ではその見届け人として、そしてどうしようもなくなった際の掃除人として、王都総支部から極秘の任を帯びた一騎当千のスキルマスターがやってくる。との噂を聞いたことがある。
まぁ確かにそれは事実であったが、今回の場合は、かの『大拳聖』がそれにあたる。
指揮官はそんなことを知る由もない。
しかし、目の前の極秘スキルマスターは当然なにも知らないスカウトと言う設定で、この任務を見届ける予定なのだろう。
相手の正体を悟ったと思われては今後の自身の出世にも、ましてや知ってて上官を試した、というような認識になると非常に立場も危うくなる。
ということで、スカウトとして、指揮官の私の一撃すら防げぬ者はこの任の参加は認められないレベルであると、そーゆー設定で試したと、することにした。
秋水のみぞおちに拳を吸い込まれて、ほんの3秒の間に指揮官はそこまで思考を巡らせた。
指揮官はゆっくりと拳を引き、荘厳な態度で口を開いた。
指揮官「ふむ、合格だ。」
秋水はなんのこっちゃ分からんかったが、どうやら合格だそうだ。
秋水「本当か?助かる!」
指揮官「当然だ、君も聞いただろうが今回の作戦は一体なにが起きるか予測不可能なのだ。」
指揮官「私の一撃すら防げぬ者は今回の作戦では足手まといになってしまう、君を試したことは謝ろう、いや、大した腕前だ。」
秋水はどうやら認められたらしい、かなりラッキーな展開である。
秋水「で? 作戦には参加出来るのか? 働けるのか!?」
指揮官は思った、正直このレベルのスキルマスターには最重要拠点とされる北に配置したい。
いくら王都から来たという、あの若きスキルマスター達の腕が立つと言っても限界というものがある。
しかし、ここで彼を北に投入すれば彼の正体や実力を見抜いていると思われてしまうかもしれない。
ここは当たり障りもなく、かつ彼を一応腕が立つスカウトと思っているであろう指揮官のフリをすることにした。
まったく、なんで頭がキレる優秀な指揮官なのだ、この作戦に参加できる精鋭達は幸運だな。
と、指揮官の頭の中はかなりハッピー野郎であった。
指揮官「あぁ、当然だ、君には街で二番目の重要拠点となる南に行ってもらう。」
指揮官「君ほどのスカウトともなれば重要な情報や、怪しい動きをいち早く察知出来ると信じている、御協力感謝するよ。」
と、言うことで秋水の作戦参加はあっさりと決まるのであった。
更新!
いやほんと、これ、スラスラ書けるよ!?
今までほったらかしにしてすいませんでした、最初からスマホで書けばよかた…。
しかしやはりスマホで書くので、構成や書き方にパソコンで書いてた頃との相違点や、スペースの幅の違いが生まれてしまいます。
時間を見つけて修正かけていきます!